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イラン及びシリアに対する国際制裁について

2012/11/27 第12-019号
  • 外航

題記の件に関し、国際制裁に関係するこれまでの特別回報(注1)をご参照下さい。


2012年10月16日に、EUはイランとの取引に関し更なる制裁措置を規定したEU理事会決議2012/635を採択しました。同決議は個人及び法人を拘束するものではありませんが、個人/法人を拘束する規則が今後発効する見込みです。そこでこの機会を持ちまして、組合員各位に、今後見込まれる制裁措置並びに既存のEU及び米国制裁の概要をご案内するとともに、制裁措置に対する当組合の対応措置について再度ご認識頂くようお願い申し上げます。


これまでの特別回報にてご案内しました通り、当組合はEUの管轄権には服さないため今般のEU理事会決議や既存のEU理事会規則の直接の対象となることはありません。しかしながら、当組合は国際P&Iグループの再保険プログラムに参加しており、同再保険プログラムはEU規則の対象となることから、制裁対象貨物や制裁対象団体に関係するクレーム、またはEU理事会規則により科されるその他の制限に関係するクレームの場合、組合によるてん補が制限される可能性があります。また、EU制裁に加え、非米国法人に適用される米国制裁にも注意する必要があります。


本特別回報はイランとシリアに焦点を当てていますが、その他にも国際制裁が科せられている国々がありますのでご注意下さい。本特別回報は国際制裁により科される最も重大な制裁措置の概要をご案内するものですが、組合員各位におかれましては本特別回報に関わらず具体的な活動に対してどのような制裁措置が科されるかについて調査を行ったり助言を求めたりして下さい。


なお、制裁対象航海特別条項に従い、組合員各位には、制裁、禁止、制限等の措置により組合の保険てん補に影響が生じるおそれがある航海については事前に申告して頂くことになります。また、2012年4月10日付特別回報第12-001号に添付の所定フォームにて、制裁、禁止、制限等の措置が科される恐れがあり、同措置によりてん補の制限を受ける可能性があることを認識していることを確認する確約書を提出して頂くことになります。


EUによるイラン制裁


今後見込まれる制限

 

今後EU理事会規則が発効した場合、とりわけ以下の制限が見込まれます。


  • イラン産天然ガスの輸入、購入、輸送並びに当該活動への(再)保険の提供
  • Iranian Revolutionary Guard Corpsが直接的もしくは間接的に支配する産業に関係する金属(黒鉛及びアルミニウムや鋼鉄のような半製品金属を含む)のイランへの販売供給もしくは輸送
  • 造船、メンテナンス、修繕のための主要な軍事機器や技術をイランもしくは同分野に従事するイラン(人)所有の企業へ販売、提供、輸送すること
  • イランへの石油及び石油化学製品の輸送並びに貯蔵、もしくはイラン産石油及び石油化学製品の輸送や貯蔵のために船舶を提供すること

既存の制限

限定的な例外を除き、既存の制裁措置ではとりわけ以下のイランとの取引を禁止しています。


  • EUの制裁対象者に指定されている個人/団体に対して、直接もしくは間接的に、資産/経済資源を利用させること。制裁対象者リストは定期的に更新されていますので、取引前に確認して下さい。
  • イラン産原油、石油製品、石油化学製品の輸入、購入、輸送並びに当該活動への(再)保険の提供
  • EU理事会規則267/2012のAnnexにリストされた物品、機材、技術を、直接的または間接的にイランへ販売、提供、輸送、輸出すること

米国によるイラン制裁

米国はイランに対する経済制裁を強化し続けています。基本的に米国企業は、人道物資のような少数の例外を除き、直接的にせよ間接的にせよイランとの一切の取引への関与が禁止されています。2012年10月9日以降、米国企業所有/傘下の非米国法人も親会社と同様の規制の対象となります。さらに、米国の親会社は非米国子会社や非米国関連会社による制裁規則違反にも責任を問われます。また、米国証券取引所に上場している企業(多くの非米国企業が含まれます)はイラン関係の活動について公的機関への報告が要求されます。


米国制裁の多くは、米国企業のみならず、たとえ米国とのつながりがなくても非米国企業にも適用されます。以下の場合には、米国とのつながりがない非米国企業にも制裁が科される可能性があります。

 

  • 米国大統領から制裁適用免除を受けていない国々へイランから原油、石油製品、石油化学製品を輸送すること
  • 石油精製品、石油化学製品をイランへ輸送すること、及びイランの石油資源の開発やイランの石油精製、石油化学製品の製造支援に使用される可能性のある機器、資材、もしくはその他の物資をイランへ輸送すること
  • Specially Designated Nationals (SDN)として指定された、もしくはその所有/傘下にある個人及び団体、またはその他特定の制裁のために指定された個人及び団体に対して、物資やサービスの提供を行うこと、あるいはそれら個人/団体との取引を行うこと
  • 第三国を経由したイランへの輸出のため米国からの物資を積み替えること
  • 米国産物資をイランへ再輸出すること
  • 大量破壊兵器の開発、またはイランの民衆監視/弾圧に用いられる物資をイランへ輸送すること
  • 米国制裁を逃れようとするイラン法人を支援すること


ほぼ全ての米ドル取引は米国銀行を通過します。限られた例外を除き、米国銀行はイランもしくはSDNsを含む取引を阻止し、その事実を米国当局に通報する義務を負っています。非米国銀行及びその他の金融機関は、イラン銀行との取引に著しく寄与したり、石油や石油化学製品の輸出に関する取引や資産凍結団体が関係する取引を助長した場合、制裁の対象となります。


なお、米国制裁は人道物資に関する広範な除外規定を設けており、食糧(ばら積み農産物を含む)、医薬品、医療品等については、SDNにリストされた団体との取引でなければ、当該物資を輸送しても制裁対象とはなりません。

 

EUによるシリア制裁


限定的な例外を除き、既存の制裁は以下のシリアとの以下の取引を禁止しています。


  • EUの制裁対象者に指定されている個人/団体に対して、直接もしくは間接的に、資産/経済資源を利用させること。制裁対象者リストは定期的に更新されていますので、取引前に確認して下さい。
  • シリア産原油及び石油製品の輸入、購入、輸送並びに当該活動への(再)保険の提供
  • EU理事会規則36/2012のAnnexにリストされた物品、機材、技術を、直接的または間接的にシリアへ販売、提供、輸送、輸出すること

 

米国によるシリア制裁


シリアに対する米国の経済制裁は、シリア産石油または石油製品の輸入を禁止するほか、総じて米国企業がシリアに関係する取引を行うこと、シリア企業に対してサービスを提供することを禁止しています。これらの制裁措置は域外適用されませんが、いくつかの米国の制裁措置は非米国民にも適用される可能性があります。以下の米国制裁については、米国とのつながりを持たない非米国企業にも適用される可能性があります。


  • 国際テロリズムの支援団体として指定されたシリアSDNsへの物資やサービスの提供
  • シリアの民衆監視/弾圧に用いられる物資の輸送
  • 米国制裁を逃れようとするシリア政府やシリアの団体への支援


米国の銀行は基本的にシリア関係の送金を扱うことができず、そのような送金は停止されます。いくつかの例外を除き、米国のブローカー、保険者、その他サービス提供者は、シリアへの、またはシリアからの物資の輸送に関与することができません。また、人道物資を除き、米国産物資のシリアへの船積みもできない可能性があります。

 

まとめ


EU及び米国による規制について、イラン及びシリアに関係する航海/取引を行う場合、規則に違反していないかどうか慎重に確認作業を行って下さい。制裁規則に違反した場合、保険てん補に支障が生じる場合があります。


イランもしくはシリアに対する国際制裁に関してご質問がありましたら、当組合までお問い合わせ下さい。


1
2010年3月1日付第09-019号、
2010年6月25日付第10-006号、
2010年7月5日付第10-007号、
2011年2月25日付第10-031号、
2012年2月9日付第11-022号、
2012年2月27日付第11-025号、
2012年3月29日付第11-030号、
2012年4月10日付第12-001号、
2012年6月28日付第12-008号、
2012年8月17日付第12-012号