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条約案内

各条約の締約国については海事条約締約国一覧表をご参照ください。

バンカー条約

締約国を旗国とするか締約国領域内の港湾施設を使用する1,000国際総トン超の船舶は、本条約に基づき生じる責任をカバーする保険の付保またはその他の金銭上の保証(以下「保証」という)を保持することが必要です。

また、日本の内航船は、本条約を摂取し国内法化した2019年の改正油賠法によって、保証を保持することが義務付けられます。

保証の要求を含むバンカー条約の概要は以下のとおりです。

  1. 船主責任
    • 海洋汚染を防止するため、船舶所有者(所有者、裸用船者、管理人、運航者)は、船舶から流出した燃料油による汚染損害について責任を負います。
    • 船舶所有者に厳格責任(無過失であっても責任を負う)を課していて、免責されるのは他の類似の海事条約(CLC条約、難破物除去ナイロビ条約など)と同じく、以下の3つの場合に限られます。
      1. 戦争、敵対行為、内乱、暴動または例外的、不可避的かつ不可抗力的な性質を有する自然現象によって生じた場合
      2. もっぱら損害をもたらすことを意図した第三者の作為または不作為によって生じた場合
      3. もっぱら灯台その他の航行援助施設の維持について責任を有する政府その他の当局のその維持についての過失その他不法行為によって生じた場合
    • 船舶所有者は、各国内法で適用される船主責任制限法または1976年海事債権責任制限条約(1996LLMCを含む)に基づき、その責任を制限することができます。(本条約は、船舶所有者が各国内法、または1976年海事債権責任制限条約(1996LLMCを含む)のような国際条約に基づいて責任を制限する権利に影響を及ぼしません。)
  2. 適用範囲
    • 本条約は、締約国の排他的経済水域および領海に適用されます。
  3. 強制保険
    • 締約国を旗国とする船舶、締約国の領域内の港に入港もしくはそこから出港する船舶、または締約国の領海内の沖合の施設に到着しもしくはそこから出発する船舶の所有者は、適用可能な国際的なまたは国内の責任制限制度に基づく責任の限度額に等しい額(ただし、1976年海事債権責任制限条約(96LLMCを含む)に従って計算される額を超えない額)の保証を維持し、締約国が発行する証明書(条約証書)を本船に備え置く必要があります。
    • 条約証書は、条約の要求を満たす保証が保持されていることが確認されれば、旗国または締約国が発行します。旗国または締約国から条約証書の発行を受ける際に、保険者等が発行する保障契約(ブルーカード)が必要になります。当組合を含む国際P&Iグループではブルーカードを発行します。
    • 汚染損害の被害者は、船舶所有者が加入している保険者等に対して直接、損害賠償請求することができます。

2007年の難破物の除去に関するナイロビ国際条約(難破物除去ナイロビ条約)

締約国を旗国とするか締約国領域内の港湾施設を使用する300国際総トン以上の船舶は、本条約に基づき生じる責任をカバーする保険の付保またはその他の金銭上の保証(以下「保証」という)を保持することが必要です。

また、日本の内航船は、本条約を摂取し国内法化した2019年の改正油賠法によって、保証を保持することが義務付けられます。

保証の要求を含む本条約の概要は以下のとおりです。

  1. 船主責任
    • 船舶所有者は、航行上の危険となる、または海洋環境に対する重大な損害や沿岸域もしくは関係する利益に損害を与えることが合理的に予見される障害となる海難残骸物の位置特定、マーキングや除去の費用について責任を負います。
    • 難破物が条約に規定する危険となるかどうかの決定は、条約に規定される15の基準によって判定されます。条約は難破物が除去を要する危険となるかどうかの決定に関して検討すべき基準を設けていて、締約国が取る措置は危険に比例したものでなければならないとされています。
    • 船舶所有者に厳格責任(無過失であっても責任を負う)を課していて、免責されるのは他の類似の海事条約(CLC条約、バンカー条約など)と同じく、以下の3つの場合に限られます。
      1. 戦争、敵対行為、内乱、暴動または例外的、不可避的かつ不可抗力的な性質を有する自然現象によって生じた場合
      2. もっぱら損害をもたらすことを意図した第三者の作為または不作為によって生じた場合
      3. もっぱら灯台その他の航行援助施設の維持について責任を有する政府その他の当局のその維持についての過失その他不法行為によって生じた場合
    • 船舶所有者は、各国内法で適用される船主責任制限法または1976年海事債権責任制限条約(1996LLMCを含む)に基づき、その責任を制限することができます。(本条約は、船舶所有者が各国内法、または1976年海事債権責任制限条約(1996LLMCを含む)のような国際条約に基づいて責任を制限する権利に影響を及ぼしません。)
  2. 適用範囲
    • 本条約は締約国の排他的経済水域にのみ適用されます。ただし、締約国は自国の領域(領海を含む)にも適用することができます。
  3. 強制保険
    • 締約国を旗国とする船舶、締約国の領域内の港に入港もしくはそこから出港する船舶、または締約国の領海内の沖合の施設に到着しもしくはそこから出発する船舶の所有者は、適用可能な国際的なまたは国内の責任制限制度に基づく責任の限度額に等しい額(ただし、1976年海事債権責任制限条約(1996LLMCを含む)に従って計算される額を超えない額)の保証を維持し、締約国が発行する証明書(条約証書)を本船に備え置く必要があります。
    • 条約証書は、条約の要求を満たす保証が保持されていることが確認されれば、旗国または締約国が発行します。旗国または締約国から条約証書の発行を受ける際に、保険者等が発行する保障契約(ブルーカード)が必要です。当組合を含む国際P&Iグループでは、他の海事条約と同じくブルーカードを発行します。
    • 損害の被害者は、船舶所有者が加入している保険者等に対して直接、損害賠償請求することができます。

1974年の船客とその手荷物の海上運送に関するアテネ条約の2002年議定書(アテネ条約/EU Passenger Liability Regulation (PLR)

アテネ条約は以下の国際運送に適用されます。

  • 船舶の旗国が締約国の場合
  • 運送契約締結地が締約国の場合
  • 運送契約上の発着地が締約国内の場合

アテネ条約は、2002年議定書により、乗客の死傷や手荷物等に対する運送人の責任の限度額が大幅に引き上げられました。上述の国際運送を行う客船は条約の要求を満たす保険を付保し、当該保険が有効であることを証する締約国の証書を保持する必要があります。
当組合を含む国際P&Iグループ(IG)では、船主がPLRの証書発行をEU各国へ申請するのに必要なブルーカードを発行しています。ただし、クラブにより発行されるブルーカードは戦争およびテロリスクを除いたもの(非戦争危険ブルーカード)です。したがって、船主は戦争およびテロリスクから生じる乗客の死傷に対する船主責任を有効に保証する保険者またはその他の金銭的保証提供者から戦争リスクをカバーするブルーカードを取得する必要があります。戦争リスクをカバーするブルーカードの取得については当組合にご相談ください。

EU Passenger Liability Regulation(PLR)について

EUは「EU旅客輸送賠償に関する規則第329号/2009年」(PLR)を制定しており、以下の船舶に適用されます。

  • 船舶の旗国がEU加盟国の場合
  • 運送契約締結地がEU加盟国の場合
  • 運送契約上の発着地がEU加盟国内の場合

PLRは、乗客の死亡と負傷ならびに手荷物と乗物の損失に対する責任、補償、強制保険システムを規定しており、PLRの対象となる船舶は、PLRの要求を満たす保険を付保し、EU各国より発行される当該保険が有効であることを証する証書を保持する必要があります。

当組合を含むIGでは、船主がPLRの証書発行をEU各国へ申請するのに必要なブルーカードを発行しています。ただし、クラブにより発行されるブルーカードは戦争およびテロリスクを除いたもの(非戦争危険ブルーカード)です。したがって、船主は戦争およびテロリスクから生じる乗客の死傷に対する船主責任を有効に保証する保険者またはその他の金銭的保証提供者から戦争リスクをカバーするブルーカードを取得する必要があります。戦争リスクをカバーするブルーカードの取得については当組合にご相談ください。

2006年の海上の労働に関する条約(MLC)

MLCの下、締約国は自国籍船の船員に対して、とりわけ以下の権利を確保することが求められます。

  1. 船主の破産(事実上の遺棄)の場合を含む送還
  2. 船舶の滅失または沈没により生じる失業に対し、失業中の間の日数に応じ2か月分を上限とした船員への補償
  3. 国内法、船員の雇用契約、団体交渉協約に規定する職業上の負傷、疾病、障害による死亡または後遺障害の補償

締約国を船籍とし500国際総トン以上の国際航海に従事する全ての商船は、以下に関する責任について保険者等が発行した保険等の金銭上の保証が手配されていることを示す証書の本船内保持が要求されます。

  • MLC第2.5規則A2.5 基準並びにB2.5 指針の規定に基づく船員の未払い賃金及び付帯費用を含む船員の送還費用
  • MLC第4.2規則A4.2.1 基準並びにB4.2 指針の規定に基づく船員の死亡又は長期後遺障害補償

当組合を含む国際P&Iグループでは、上述に関する証書を発行しています。

MLCの金銭上の保証要求に関する詳細については、以下のFAQsをご参照ください。

  • MLCの金銭上の保証要求に関するFAQs

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1976年の海事債権についての責任の制限に関する条約を改定する1996年の議定書(96LLMC)

本条約は、海難事故から生じる船舶所有者等の責任を船舶のトン数に応じた一定限度に制限することを認めています。

責任限度額は以下のとおりです。

  1. 人の死亡・傷害に関する責任
    1. 2,000トン以下の船舶:3.02百万SDR
    2. 2,000トン超の船舶
      2,000トンを越える部分について次の方法で計算して得た額を3.02百万SDRに加算した額
      • 2,001~30,000トン部分:1トン当り1,208 SDR
      • 30,001トン~70,000トン:1トン当り906 SDR
      • 70,000トンを超える部分:1トン当り604 SDR
  2. 人の死亡・傷害以外に関する責任
    1. 2,000トン以下の船舶 1.51百万SDR
    2. 2,000トン超の船舶
      2,000トンを越える部分について次の方法で計算して得た額を1.51百万SDRに加算した額
      • 2,001~30,000トン部分:1トン当り604 SDR
      • 30,001トン~70,000トン:1トン当り453 SDR
      • 70,000トンを超える部分:1トン当り302 SDR

SDR(特別引出権)のレートはIMFのサイトで確認できます。
https://www.imf.org/external/np/fin/data/rms_sdrv.aspx