ニュース

イランに対するEUの新制裁措置-当組合の対応について-EU理事会決議2012/35(2012/1/23)及びEU理事会規則267/2012(2012/3/23)-

2012/04/10 第12-001号
  • 外航

題記の件に関し、2012年2月27日付特別回報 第11-025号 「イランに対するEUの新制裁措置-2012年1月23日付EU理事会決議2012/35-当組合が置かれる状況について」及び本年3月29日付特別回報 第11-030号 「イランに対するEUの新制裁措置-2012年3月23日付EU理事会規則267/2012-よくあるご質問(FAQs)-2012年3月27日発行」をご参照下さい。

本年3月23日に開催されたEU外相理事会にて、EU理事会規則267/2012が採択されました。翌3月24日の同規則の公布を受け、今般以下3の対応措置を取らせて頂くことと致しましたのでご案内申し上げます。


1. 背景
イラン産原油、石油製品、石油化学製品の輸入、購入、輸送並びに当該活動への保険及び再保険の提供禁止等を骨子とするEUによるイランへの更なる制裁措置が2012年1月23日付EU理事会決議2012/35にて決定され、それに基づき実施規則を定めたEU理事会規則267/2012が本年3月24日に公布されました。

今般のEU理事会規則は本年1月23日付EU理事会決議をほぼそのまま摂取したものとなっており、原油、石油製品、石油化学製品の輸入、購入、輸送並びに当該活動への保険/再保険の提供が禁止されています。規則は、Third Party Liability Insurance及びEnvironmental Liability Insuranceに関し、石油化学製品については本年5月1日まで、原油及び石油製品については本年7月1日まで規制の適用対象外としています。P&I保険はThird PartyLiability InsuranceもしくはEnvironmental Liability Insuranceに該当し適用対象外になると考えられ、EU管轄権下のクラブを含めクラブは本年5月1日もしくは本年7月1日までは保険を提供することが可能です。但し、5月1日もしくは7月1日以降はP&I保険も規制の対象となります。その場合の当組合保険カバーへの影響は、以下2の通りです。

2. 当組合保険カバーへの影響及び問題点
当組合はEUの管轄権には服しませんので、EU理事会決議2012/35並びにEU理事会規則267/2012に規定される制裁措置の直接の対象者とはなりません。従いまして、関係船舶がEU籍船ではなく、航海がEU管轄権外で行われ、EU国民が当該航海の決定/実施過程に関与していない限り、本年5月1日もしくは7月1日以降も当組合はイラン産原油並びにその他の製品を輸送する非EU組合員に対して保険提供を継続することが可能です。

しかしながら、当組合は、国際P&Iグループ(以下、IG)の再保険プログラムに参加しており、当該プログラムにてIG加盟全クラブが各クラブの保有部分(8百万ドル)を超えるクレームを互いに負担したり、共同で再保険を手配しています。今般の制裁措置により、EU規則の対象となる再保険者(IG加盟の他クラブを含む)は、制裁対象貨物(※註)に関るクレームについて再保険金(IG加盟の他クラブによる分担を含む)を支払うことができなくなります。そのため、当組合は再保険者(IG加盟の他クラブを含む)から回収できない部分について保険金をてん補することができず、組合員は当組合からその部分についててん補を受けられません。従いまして、事故が発生した場合に組合員が受けられるてん補の金額が著しく低くなる可能性があります。

一方、ご既承のとおり、当組合は原油を運ぶタンカーに対してはCLC条約上のCLCブルーカードを、その他の船舶に対してはBunker条約上のBunkerブルーカードを発行しております。CLC条約及びBunker条約は被害者による保険者への直接請求を認めており、当組合はCLC条約及びBunker条約に基づき被害者から直接請求を受ける可能性があります。被害者から直接請求を受け当組合が支払った場合、保険契約規定に基づき当組合がてん補できない部分(当組合保有8百万ドルを越える部分)については組合員にご負担頂くことになります。

※註:制裁対象貨物に関しては2012年3月23日付CouncilRegulation (EU) No.267/2012のAnnex Ⅳ並びにAnnex Ⅴをご参照下さい。制裁対象貨物に該当するかどうか疑義がある場合は、EU加盟各国の当局にお問い合わせ下さい。当該規則は以下のウェブサイトでご覧頂けます。

URL:
http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2012:088:0001:0112:EN:PDF

3. 対応措置
上記状況を鑑み、今後以下3の措置を取らせて頂くことと致します。

1) 事前申告
制裁措置等により保険てん補に影響が生じるおそれのある航海を行う場合には、予め申告して頂きます。当該航海を行うことが決まり次第、添付1の申告書に必要事項を記載の上、当組合へご申告下さい。

2) 確約書の提出
添付2の確約書にご署名の上、当組合へご提出願います。確約書は、以下の①−④の事項をご確認・お約束頂くものです。

制裁等の措置が課されるおそれがあることを認識し、制裁等の措置によりてん補の制限を受ける可能性があることを了解する。
保険契約規定に基づき、保険契約の解約/解除、もしくはてん補の制限を受ける可能性があることを十分に理解した上で当該航海を実施する。
保険契約規定に従い当組合のてん補対象とならない部分金額については組合員が責任を持って支払うこと、またこれらの金額については組合による保証の提供がなされないことを十分に理解する。
ブルーカードや保証状に基づき当組合が支払った金額のうち、保険契約規定に従いてん補対象とならない部分については当組合へ弁済する。

また、確約書には確約者(組合員)と連帯して上記①−④の責任を負う連帯確約者のご署名もお取り付け頂きます。なお、連帯確約者の是認は当組合の裁量によるものとし、予め当組合の承認を得て頂く必要がありますのでご注意下さい。

3) 特別条項の新設
上記1)2)の措置を実効的に実施するため、添付3の特別条項を定め、本日2012年4月10日付で全ての外航船舶の保険契約に適用することと致しました。

添付1.申告書
添付2.確約書
添付3.特別条項