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イラン制裁-最近の状況について

2014/01/20 第13-022号
  • 外航
本回報は、特にイランからの石油、石油製品、石油化学製品の輸送並びにそれに対する保険提供に関するEU及び米国制裁措置に対して見込まれる変更についてご案内するものです。見込まれる措置は、国際原子力機関(IAEA)が本回報Annex Iの共同行動計画(Joint Plan of Action)に規定する核に関する措置をイランが実施したことを確認した後、1月20日より発効する予定です。

2013年11月24日に、中国、フランス、ドイツ、ロシア、英国並びに米国は、イランの核計画についてイランと合意しました。共同行動計画は6か月間において双方が取るべき措置の実施に依拠しており、イランが核施設及び濃縮施設へのIAEAのアクセスを認める代わりにEUと米国が一部の制裁措置を緩和することが含まれています。

制裁緩和措置は現行の制裁措置の一時停止の形をとり、範囲と期間が制限され、EU加盟各国と米国の法改正実施が必要となります。また、共同計画に規定した約束が守られない場合には、制裁措置は再度復活することになります。見込まれる措置の影響について以下の通りご案内致します。なお、以下の内容は、共同計画に規定される情報及び国際P&Iグループ(IG)が直近のEU並びに米国当局との協議により入手した情報に基づくものです。

1EUによる措置

1.1実施時期
欧州委員会によると、共同行動計画を実施するEU理事会決議並びに規則は1月20日に同時に発行されるとのことです。EU理事会規則は欧州委員会の提案(本回報のAnnex II)をそのまま採用するものとなる模様です。IGが入手した情報では、外交上及び政治上の承認を条件に1月20日よりEUと米国双方で各々の制裁緩和措置が実施されるよう歩調を合わせた対応が取られるようです。

1.2注意事項
以下にてご案内する予定されている制裁停止措置を検討する上で、2つの重要な点に注意する必要があります。

(i)現行制裁措置の一時停止期間
予定されている制裁措置の一時停止は、2014年1月20日から6か月間の期間限定であることに注意する必要があります。一時停止の継続、あるいは更なる一時停止措置はその間の進展次第です。一時停止措置を利用して2014年1月20日からの制裁緩和措置に伴い可能になる輸送契約を締結しようと考えている場合、当該契約は遅くとも2014年7月20日までに完全に実行するようにしなければなりません。制裁措置の一時停止が6か月後以降延長されない場合に、EU理事会規則(267/2012 EC)に規定されるのと同様の猶予期間が与えられるかどうかについてEU当局は確約していません。

(ii)制裁対象団体との取引
予定されている制裁措置の一時停止措置には、現行の制裁対象団体との取引禁止に関する緩和は含まれていません。従いまして、例えばEU理事会規則267/2012のArticle 37 bに規定される禁止措置が一時停止になったとしても、NITC (National Iranian Tanker Co)やその他のイランの制裁対象団体に船舶を用船することは許されません。欧州員会は、IG加盟クラブが制裁対象団体(港湾エージェントや管理者)と取引せざるを得ない場合には実行前に関係当局に相談すべきとしています。船主及びクラブが直面するかもしれない実行上及び法的困難については欧州委員会も認識しており、制裁対象団体が所有する凍結口座への支払いを許可する可能性があるとのことです。但し、必要な送金を銀行が行うかどうかの問題があります。

1.3共同行動計画のEUの実施は船主及びクラブにとってどのような影響があるか?
(a) 石油及び石油製品
(i) 輸入及び購入
予定されている一時停止措置には、石油及び石油製品について現行のEU法人による購入及びEUへの輸入に対する禁止措置の一時停止は含まれていません。但し、現在米国の国防授権法(NDAA)の下で免除を受けているEUではない国々(中国、インド、日本、韓国、台湾、トルコ)は、免除条件に従って現在容認されている購入及び輸入レベルを超えない条件で石油及び石油製品の購入を継続することができます。

(ii) 輸送
2014年1月20日よりEU理事会規則267/2012のArticle 11.1 (c)の禁止規定が一時停止となることから、EU法人所有もしくはEU籍の船舶は、イラン産もしくはイランからの石油及び石油製品の輸送が許可されます。非EU法人所有もしくは非EU籍の船舶については、現状通り当該貨物の輸送を継続できます。

(iii) 保険
2014年1月20日よりEU理事会規則267/2012のArticle 11.1 (d)の禁止規定が一時停止となることから、上記石油及び石油製品の輸送を行う船舶に対してクラブはカバーを提供することが可能になります。

但し、Article 11.1 (c)及び(d)に規定される禁止規定の一時停止は、NDAA免除国向けではない石油及び石油製品の輸送及び保険提供を可能にするものではありません。イランから非NDAA免除国へ石油や石油製品の輸送を行う船主とそれに対して保険を提供する保険者は、EU及び米国双方の制裁措置違反となります。

(b) 石油化学製品
EU理事会規則267/2012のArticle 13の禁止規定は全て一時停止となり、現在の石油化学製品の輸入、購入、輸送及び保険提供の禁止が緩和されることになります。石油化学製品とはEU理事会決議267/2012のAnnex Vにリストされているものを指します。

従いまして、EU及び非EU船舶はイランからの石油化学製品をEU内外を問わず輸送でき、クラブは当該輸送に対してカバー提供が可能になります。但し、EU及び米国以外の制裁で禁止されている場合は別です。

EU理事会決議267/2012のArticle 13に規定される禁止措置の一時停止は、イラン産もしくはイランから輸出された天然ガスの購入、輸入、輸送並びにそれらに対する保険提供に対する現行の禁止規定には適用されません。同様に黒鉛及び未加工/半製品金属等の製品に対する禁止措置は継続されます。

(c) 金融取引
EU理事会規則267/2012のArticle 30 (3)(a)(b)及び(c)に規定される現行の上限額が10倍に引き上げられ、関連当局の事前許可を要せずにEUR400,000までイランに送金できるようになります。但し、EUによる制裁対象団体との金融取引は引き続き制裁対象となります。
(d) 石油及び石油化学製品の貯蔵や輸送用の船舶
EU理事会規則267/2012及び改定規則1263/2012のArticle 37 bに規定される石油及び石油化学製品の輸送や貯蔵のために船舶を提供することについての禁止は一時停止されます。但し、NITCやIRGCがコントロールする団体等の制裁対象団体への用船は引き続き禁止されます。

2米国制裁の一時停止

IGではより複雑な米国制裁について米国当局と協議し、米国当局としては共同行動計画に沿ってEU加盟各国が採用する制裁措置の一時停止と同様の措置をとる意向であることを確認しています。米国財務省外国資産管理局(OFAC)は、共同行動計画を実行するために改定することになる可能性が高い関連の大統領令、Iran Freedom and Counter-Proliferation Act of 2012 (IFCA)の該当箇所、the Iran Threat Reduction and Syrian Human Rights Act及びIran Sanctions Actを特定しています。

国務省、財務省、外国資産管理局等の関連政府部署は、法律で権限が付与されていない限り議会制定法を変更したり廃止したりすることはできませんが、大統領は自身の大統領令を変更することができます。従いまして、法律で規定されている米国制裁については、大統領は法律で権限が付与されている範囲に限り修正や廃止ができます。米国による措置の詳細については2014年1月20日まで判然としないと思われますが、欧州委員会の提案措置と一致したものになると予想されます。

すなわち、以下の措置が取られることが米国で予定されています。
・イランによる石油化学製品の輸出、イランによる自動車製造分野に関する物資やサービスの輸入に対する制裁措置の一時停止
・イランの民間航空の安全飛行ための調査サービスを含むサービスやスペアパーツの提供のための迅速なライセンス交付の開始
・イランから原油を購入している6か国に対して更なるイラン原油の輸入量削減を求める措置の停止
・イランへの人道物資の提供、国連債務の支払い、留学中のイラン人学生の授業料支払のための金融チャンネルの設立促進
・容認される金融取引の許可のための上限額の修正

現行規則がどのように変更されるかについての詳細は2014年1月20日まで判明しないと思われます。IGでは米国による措置の詳細が判明次第、別途ご案内する予定です。

IG加盟全クラブが同様の回報を発行しています。