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事故対応計画(VRP)− 国際P&Iグループガイドライン/その後の動き

2009/06/22 第09-002号
  • 外航
首題に関し、特別回報第95-012号「米国連邦事故対応計画要求について−QI/OSROとの契約について−」(1996年1月23日発行)及び同第97-012号「米国連邦油濁事故対応計画 − QI/OSROとの契約について」(1997年12月22日発行)をご参照下さい。

上記特別回報では、事故対応計画(VRP)に関し、米国連邦規則の下で要求されるQualifiedIndividual(QI)や油処理清掃業者(OSRO)等(以下、業者という)との契約において、組合員とP&Iクラブにとって重要な4つの事項 - ①補償の範囲、②業者に対する指揮権の確保、③業者への資金面での保証の提供、④業者からの業務遂行に関する担保の確保 - を中心に、国際P&Iグループ(IG)が制定したガイドラインについて、同IGガイドラインに適合した契約を提供する業者に関する情報と併せ、組合員各位にご案内致しました。

その後、船主に対しVRPの保持を求める国も増加し、IGガイドラインに適合した業者のリストも更新されておりますので、改めてIGガイドラインの重要性とVRP要求に関する最近の動きについて、以下にご説明申し上げます。IGガイドラインの詳細は添付別紙をご参照願います。法制度の違いを考慮し、IGガイドラインは「米国用」と「米国以外用」に区分されていますのでご留意下さい。

1.補償条項

「契約書に含まれる補償条項の文言がIGガイドラインに沿っている」との組合による確認は、当該条項により生じる船主の業者に対する賠償責任が、他の保険契約規定や加入条件に違反していない限り、保険契約規定第27条(第三者との契約に関する責任)によりてん補対象となることを意味します。

逆に、補償条項がIGガイドラインに合致していない場合は、組合が当該条項から生じうる責任の全てをてん補できるわけではありません。よって、斯かる責任に対して別途保険を手配することが求められますが、万一組合員が保険を手配することなく補償条項上の責任を負った場合には、てん補の可否は組合理事会の裁量に委ねられることになります。

過去に組合からIGガイドラインに沿っているとの確認を得た契約書の改定版にて契約を求められたときは、その改定によって当初の確認が無効とならないか、組合に確認されることをお勧めします。

2.作業に対する指揮権

業者が自らの判断だけで作業を進め、船主にその費用が請求されることのないように、船主が作業の指揮権を確保することは、契約上重要なポイントです。IGガイドラインに適合した契約では、指揮権が船主に与えられるよう適切に規定されています。しかしながら、業者によっては複数の形態のサービスを提供している場合がありますのでご留意願います。その場合、VRPに記載される各種サービスに従事する部門が互いに独立していること、例えばQIやSpill ManagerがOSROから完全に独立していることをご確認下さい。

実際に業者をどの程度指揮・監督できるかは事故の状況によります。たとえ組合員が業者を適切に指揮・監督できなかったとしても、契約上組合員にはその費用につき支払い義務があり、かつ適切な指揮・監督が行われていれば生じなかった費用については、組合から全てを回収できないリスクを伴うことになります。

3.作業に対する資金面での保証

業者によっては、契約締結時あるいは作業開始前に、支払実行を保証する書類の提出を求められます。組合は通常の保険契約承諾証以外に、支払実行や保険てん補を約す証明書を提供する立場にはありません。IGガイドラインへの適合が確認されている契約書の中にも、作業継続の条件として業者が代金支払いの保証として預託金や組合の保証状を要求することができる条項を含むものがあります。ただし、組合によるIGガイドライン適合の確認は、組合員に代わって保証状を発行するという組合の約束を意味するものではありません。

いかなる場合においても組合は保証状を差し入れる際の条件につき裁量権を有しており、保証状発行の諾否やその条件は、事件の全ての事情を踏まえたうえで、組合が決定することになります。その場合、保証状発行を合意するにあたっての通常の条件に加え、組合へのてん補請求額が妥当なものとなるよう、組合員が業者の作業に対する指揮権を十分に確保していることが必要になります。

4.業者の担保責任

一般的に、組合がIGガイドラインに適合していると認めた契約書には、業者が契約上業務を遂行するうえで必要な法的資格及び専門的能力を有していることを担保する条項が含まれています。

ただし、組合が業者に法的あるいは専門的資格/能力が備わっているか実際に検証することはできないため、組合によるIGガイドライン適合の確認が、特定の業者や契約の利用を推奨することを意味することにはなりません。従って、仮に業者が契約した作業を履行できなくとも、組合はその不履行の結果についてまでカバーすることを約束するものではありません。

また、多くの契約書には業者が提供するサービスに対する料金表が含まれていますが、いかなる場合も、組合によるIGガイドライン適合の確認が、契約書に記載された全ての料金が妥当なものであることの承認を意味することにはなりません。適宜ITOPFが業者から請求された料金の妥当性につき査定を行っています。

5.VRP要求に関する最近の動き

VRPは米国連邦法上、タンカー船主に対してのみ要求されていますが、タンカー以外の船舶(non-tank船)の船主も同様に提出するよう強く勧告されています。The Coast Guard and MarineTransport Act of 2004は米国コーストガード(USCG)に対し、2005年8月8日までにnon-tank船の船主/ 運航者に対するVRP提出義務を定める規則を公布するよう求めています。しかし、USCGは未だ最終規則を公布することなく、Navigation and Vessel Inspection Circular (NVIC) 01−05でVRPの内容に関するガイダンスを公表しました。USCGは最近、米国海域を航行するnon-tank船のVRPに対する検査実施を表明していますのでご留意願います。港長はVRP要求が満されていることを確認できるまで入港を拒否する権限を有しており、少なくとも入港30日前までに承認のためVRPを提出するよう注意が必要です。なお、米国州法では、タンカー・non-tank船の両者に対してVRPを義務付けているのが一般的です(2005年3月18日発行Japan P&I NewsNo.520「米国non-tank vesselの油濁事故対応計画について」及び2008年7月8日発行同No.554「米国non-tank vesselの油濁事故対応計画(続報)」をご参照)。

また、USCGは最近、油タンカーに対して「海難救助及び海上消火活動に関する要求(Salvage andMarine Firefighting Requirement)」をVRPに追加すべく改定した最終規則を公布しました。2009年1月30日に発効する最終規則には、VRPで契約されるべき海難救助及び海上消火活動の内容、各々に求められる対応時間、サービス提供業者に関する審査基準が規定され、最悪の事態にも対処可能な機材や要員を確保することを企図しています。VRP保持義務のある船主/運航者は、2010年6月1日までに上記の海難救助及び海上消火活動要求に対応した改定VRPの準備・提出が必要となります。この新規則はタンカーに対してのみ適用されます。船舶保険のカバーへの影響については、船舶保険者にお問い合わせ下さい。

本規則改定の詳細については、以下のウェブサイトをご参照ください。
http://edocket.access.gpo.gov/2008/pdf/E8-30604.pdf

なお、国際P&Iグループの各クラブから同じ趣旨の回報が発行されています。