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5者共同コンプライアンス・ノート: Know Your Cargo-安全で適法な貨物輸送のためのベストプラクティス

2024/01/22 第23-021号

2023年12月11日に5つの米国政府機関(司法省、商務省 産業・安全保障局、国土安全保障省 国土安全保障調査局、国務省 国防貿易管理課および財務省 外国資産管理局)は、輸送分野において悪質な行為者が一般的に取る手口、海運やその他の輸送業界におけるベストプラクティスや取り締まり事例に焦点を当てた共同コンプライアンス・ノート「Know Your Cargo」(以下「コンプライアンス・ノート」)を発表しました。

 

コンプライアンス・ノートは、船主、用船者、輸出業者、管理会社、ブローカー、船会社、フォワーダー、商品取引業者、(再)保険者を含む金融機関など、海運分野のすべての企業に指針を提供しています。

 

ベストプラクティス
コンプライアンス・ノートは、Sanctions Advisory for the Maritime Industry(2020年5月14日刊行)およびAdvisory for the Maritime Oil Industry(2023年10月12日刊行)を含む、海事産業における制裁逃れに関するOFACの過去のガイダンスを更に発展させたものです。

 

ここでは、改めて以下のようなベストプラクティスが案内されています。

 

  • リスクベースの業務コンプライアンス方針、手順、行動基準および対策を文書化し、作成、実施、遵守する。
  • 船舶・車両の位置履歴に関し、リスクベースのデューディリジェンスを実施し、位置・識別情報の追跡データが過去に操作されたり無効化されたりしていないかを確認する。
  • 顧客の本人確認(Know Your Customer)に関し、デューディリジェンスを徹底する。
  • サプライチェーンについても、リスクベースのデューディリジェンスを実施し、「輸送に関わる貨物の実物の性質、原産地および仕向地」を確認する。
  • 必要に応じて、業界やサプライチェーン全体で情報を共有する。

 

制裁や輸出規制回避を示す警告信号(レッドフラッグ)
コンプライアンス・ノートは、制裁や輸出規制を回避しようとする動きを示すレッドフラッグをいくつか挙げています。

 

  • 位置や船舶識別データの操作
  • 貨物や船舶に関する書類の改ざん
  • 夜間または高リスク地域における船舶間での積み替え(STS)
  • 不規則な航海や、正当な理由なく行われたように見える通常と異なる航路の利用
  • 船籍登録の頻繁な更新(フラッグホッピング)
  • 不明瞭な所有形態や頻繁な所有者の変更

 

また、米国政府が制裁措置や輸出管理の回避行動に対する監視や取り締りを強化した事例も示されています。

 

コンプライアンス・ノートは、すべての当事者への次のような助言で締めくくられています。
「海運やその他の輸送業を営む企業は、コンプライアンスへの取り組みを怠らず、輸送される貨物の性質、原産地および仕向地を偽装しようとする動きに警戒する必要があります。制裁リスクや輸出リスクを評価し、それらのリスクに対処するために厳格なコンプライアンス管理を実施し、最終的には、輸送に関与する貨物の実物の性質、原産地および目的地を確認することを強くお勧めします。」

 

グローバルな輸送産業に携わる事業体や個人は、米国系であれ非米国系であれ、米国の制裁にさらされることを慎重に考慮すべきです。最近の執行措置は、非米国人であっても、その取引に米国との関連性がある場合、米国人による制裁違反を「引き起こした」という理論に基づき、民事または刑事責任を問われる可能性があることを示しています。さらに、米国との関連性が全くない取引であっても、制裁対象者と直接または間接的に取引を行っている非米国企業は、制裁対象者への重要な支援の提供に制裁を科すことを認める大統領令に基づき、制裁対象者に指定されるリスクがあります。

 

コンプライアンス・ノートは、海事産業はロシア産石油のプライスキャップを遵守する責任だけでなく、イラン・北朝鮮・その他の制裁プログラムに関連する海事の偽装行為を発見・防止する責任も負っていることを再認識させるものです。

 

組合員は、適用される制裁措置に違反するいかなる貿易についても保険カバーはないことを再認識し、制裁リスクの高い地域での貿易に従事する前に、関係者・貨物・船舶・貿易について徹底的なデューディリジェンスを実施するようご留意ください。

 

以前発行したIG共通回章のうち、ロシアプライスキャップに関する続報(2023年5月11日付特別回報22-003-1)、米国Global Maritime Advisory(2020年5月22日付20-005)および船舶動静モニタリングとP&I保険(2020年5月18日付20-004)も併せてご参照ください。

 

国際P&Iグループのすべてのクラブが同様の内容の回章を発行しています。