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イラン制裁-欧州連合規則(EC)2271/96(ブロッキング規則)

2018/08/13 第18-006

背景

 

2018年5月28日付特別回報第18-002号で、中国、フランス、ドイツ、ロシア、英国、米国ならびに欧州連合(EU)とイランとの間で締結されていた包括的共同行動計画(JCPOA)から米国政府が離脱する決定をしたことにより、組合員および保険者が受ける可能性のある影響について説明しました。

以前にも述べたように、米国のJCPOA離脱と、JCPOA実施のためいったん棚上げされていた同国の核関連法の再発動決定は、イランとの海上貿易とその保険提供に甚大な影響を及ぼすでしょう。

 

EUJCPOA維持のために実施した措置

JCPOAの枠組みの下で確立された原則の維持、欧州企業とイランとの貿易活動継続の円滑化、そして米国第二次制裁の域外適用無効化を目的として、EUは今般、欧州理事会規則(EC)2271/96(いわゆる「ブロッキング規則」)の付属書の差し替えを行いました。2018年6月6日欧州委員会委任規則(EU)2018/1100に基づき、新付属書の効力が2018年8月7日より発生しました。同付属書には、2016年1月16日以降JCPOAにより免除されていた、「1996年イラン制裁法」以降制定されたイランとの貿易に関する米国の法律や規則、規制等が列記されています。しかし、これらの適用免除措置は、2018年8月6日以降、11月4日の最終日までに段階的に無効となります。石油輸送を含む一部の貿易活動に関しては11月4日を最終日としており、同日までに契約を履行する、または履行を終了させなければなりません。

 

欧州委員会委任規則(EU)2018/1100とその付属書、付随する欧州委員会発行のガイダンスノートを添付します。

 

国際P&Iグループ(IG) は、米国第二次制裁復活が組合員および保険者に与える実務上の影響、さらにEUの自然人または法人が、復活した米国制裁を遵守した結果、ブロッキング規則に基づき行われる可能性のある民事訴訟のリスクにさらされるといった、潜在的に複雑な法的シナリオを説明するため、米国(財務省)外国資産管理局(OFAC)、欧州対外行動庁、欧州委員会、英国財務省、外務省およびEU加盟国と広範に交渉しています。

ブロッキング規則では、あるEU法人が米国の制裁措置を遵守した結果、EU加盟国の国民またはEU域内で設立された別法人が損害を被った場合、同法人(米国制裁を遵守したEU法人)に対し、損害賠償請求を認めています。またEU加盟国もEUの政策を遵守しなければなりません。しかし、ガイダンスノートの第1.5項の説明にあるとおり、ブロッキング規則の条項に基づき、EU内の事業者は自らの経済状況を評価し、その上でイランでの事業活動を、開始、継続または中止するかどうかの判断を下す権利が保証されていることに留意すべきです。

 

状況は複雑であり、ブロッキング規則の施行方法は加盟国によって異なります。

 

ブロッキング規則(適用免除措置)申請手続

ブロッキング規則が適用となる(EU内の)自然人または法人(同規則11条で規定)は、同規則第5条で、同規則を遵守すること、すなわち復活した米国制裁を遵守しないことで、彼らの利益が著しく損なわれることを証明できる場合、規則の適用免除が認容されると規定しています。ガイダンスノート第3条の16項から20項では、米国制裁を遵守しないと甚大な損害を被る状況において、新付属書に記載されている(復活した米国制裁)域外適用を(EU内の自然人または法人が)遵守するための申請手続が示されています。申請にあたっては、EU事業者が個々に申請する方法、または事業者間の利害関係が十分な同質性を有する場合、複数の事業者が共同で申請する方法が認められています。

 

同ガイダンスの発行後、IGは、ブロッキング規則の適用免除承認申請の必要性、およびグループクラブを代表しIGとして共同での申請の可能性について、欧州委員会および欧州対外行動庁(EEAS)に確認を行っています。

EU加盟国の組合員は、EUの別法人から、米国制裁対象活動に関連する契約で不履行があったとして損害賠償請求を受ける可能性があると考えられる場合、 OFACによる米国制裁違反に対する法的措置の発動リスクから自らの事業の利益を守るべく、ブロッキング規則適用免除措置の申請につき検討することになるかもしれません。

 

IGは引き続き状況の監視、評価を行っていきます。

 

国際P&Iグループのすべてのクラブが同様の内容の回報を発行しています。