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中国 ー 国際裁判管轄についてのハーグ条約に署名

2017/10/13 No.925
  • 外航

題記の件に関し、敬海法律事務所より以下の情報を入手しましたのでご参考に供します。

 

本年912日、中国政府は「国際裁判管轄の合意に関するハーグ条約(ハーグ条約)」(2015101日発効済)に署名しました。同条約は、これまでEU(デンマークを除く)、メキシコ、シンガポール、米国、ウクライナが締結しており、中国は最新の締結国となります。同条約は中国立法機関の正式承認後に同国において効力を発します。これは中国の国際私法政策にとって国際化への大きな飛躍となり、国際社会によるハーグ条約の受け入れの点でも重要な進展となります。

 

ハーグ条約とは?

 

ハーグ条約の目的は、専属的裁判管轄合意により、国際民事及び商事事件において選択された裁判所での判決を条約締結国で承認し執行することにあります。同条約を締結することで、締結国の選択された裁判所は原則として裁判を引き受けなくてはなりません。選ばれなかった裁判所は原則として裁判を辞退しなくてはならず、選ばれた裁判所での判決は一部の例外を除いて別の締結国でも承認され執行されなくてはなりません。

 

ハーグ条約は、同条約第2条に規定されている例外を除き、国際商事事案の大部分に適用されます。とりわけ海運関連において、旅客と貨物の輸送(海上、航空、陸上かを問わない)、海洋汚染、海事債権の責任制限、共同海損、緊急を要する曳航や海難救助に関しては同条約が適用されません。

しかし、保険全般(海上保険を含む)、非緊急の曳航や海難救助、船舶建造と修繕、船舶抵当権や先取特権などの海事関連事案には幅広く適用されます。

 

中国関連訴訟手続への影響

 

中国では通常、外国での判決は、その国との二国間司法共助協定がない限り、又は(相互主義に基づき)過去にその国の裁判所が中国での判決を承認又は執行していることを申請者が証明できない限り、承認・執行されません。

 

今後は外国判決であってもハーグ条約の締結国で出されたもので、次の条件を満たせば、外国判決は中国の裁判所により承認・執行されることになります。


  1. 判決が同条約締結国の裁判所により下され、かつ、締結国で執行可能な場合
  2. 関係者の書面での専属的裁判管轄合意に従い、裁判所がその管轄権を行使した場合
  3. 係争中の事案がハーグ条約の範囲内である場合

締約国以外の国の判決の承認・執行に関しては従来のどおりの立場がとられます。

 

中国の関係者や所有物に対して強制執行が必要となりうる契約を中国企業と結ぶ会社にとって、中国のハーグ条約締結は、従来の仲裁合意という紛争解決手段の他に、専属的裁判管轄合意という選択肢が増えることになります。しかしハーグ条約が適用される対象事案の範囲と中国における(外国判決の)承認・執行に伴う実際問題について注意することが必要です。