アルゼンチン-Parana Riverでの座礁事故増加
題記の件に関し、2017年5月1日付Japan P&I News No.890をご参照ください。現地コレスポンデンツPandi Liquidadores S.R.L.から、Parana River内での座礁事故の報告を受領しましたのでご参考に供します。
Parana Riverでは座礁が頻繁に発生しており、通常、年間平均15件程度です。しかし、2024年の座礁件数は増加しています。各船舶の座礁原因はケースバイケースで異なりますが、そのほとんどはパイロットもしくは船長の航行上のエラーによるものです。現地コレスポンデンツは船長に対し、パイロットと船舶の航行計画を協議・確認し、河川のすべての区間と航路について両者間で合意を徹底することを提案しています。これまでに、航行水路に変更があったにもかかわらず、それが船舶の電子海図には反映されておらず、パイロットの電子海図にのみ反映されていた事例がありました。これによって航路に関し混乱が生じ、その後に座礁に至った複数のケースがありました。
現地コレスポンデンツからの情報によると、2021年にRiver Plate basin(Parana Riverを含む)の水路管理体制が変更されました。Jan De Nulと現地企業Empeaの合弁会社であるHidrovia SAとの25年間の契約が終了し、暫定的に国営のAdministración General de Puertos SAU(AGP)に委託されました。政府は新たな契約のための公開入札を実施する意向ですが、これまでのところ実現していません。
現地コレスポンデンツの統計によると、Parana Riverでの座礁の50%は自力で離礁、47%はタグボートの支援による離礁、3%はサルベージや他船への積荷移動作業が必要でした。
2024年は21件の座礁を記録しました。過去の傾向と同様に、自力で離礁したケースもあれば、タグボートの支援が必要だったケースもあります。タグボートの費用はケースバイケースで異なり、対応が可能かどうか、および座礁の状況に基づいて交渉するべきです。通例、タグボートは1時間あたりの料金に加え、最低使用料、またタグボート1隻あたりの離礁成功時のボーナスを請求されます。修正されたBIMCO Towhire契約書は通常許容されるため「no claim for salvage」条項を摂取する必要があります。
River Plate basin(Parana Riverを含む)のほとんどが軟泥であるため、船舶への損害は報告されないことが多いです。しかし、2025年には2件の座礁で重大な損害が発生しています。1件はParana Riverの318km地点で操舵不能となり、もう1件は河床が岩盤になっているMartin Garcia Channel(River Plate)の64.8km地点で発生しました。Parana Riverの約390km地点付近の「Fighiera」という新しい区間で多数の座礁が発生しています。この区間の河床は粘土と凝灰岩で構成されているようで、Parana Riverのほとんどの場所で見られる通常の砂と泥の軟泥と比較して比較的硬いため、離礁は通常よりも困難でしたが、船舶への損害はありませんでした。
また現地コレスポンデンツによると、沿岸警備隊は船長および調査対象者が規制に違反した場合、あるいは過失または「職業上の」責任があると判断された場合、船舶(船長、船主、および関与した可能性のある船員)に対して行政調査(Administrative Enquiry)を開始する可能性が非常に高く、最大約5万米ドル相当(Units of Fine 200,000)の罰金が科せられる可能性があるとのことです。
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