ブラジル-麻薬の密輸対策ガイダンス
ブラジルのコレスポンデンツRepresentaçoes Proinde Ltdaから船舶による麻薬の密輸に関するガイダンスを入手しましたのでご案内します。
ブラジルの港はすべて、程度の差はあれ麻薬密輸の脅威に対して脆弱です。組合員の皆さまには、ガイダンスを参考に防止策を強化することをお勧めいたします。
ガイダンスの要旨は以下のとおりです。詳細は添付をご覧ください。
- 麻薬問題
- ブラジルは米国に次ぐ第2位の麻薬消費市場であり、国際的な麻薬の密輸を支える戦略的拠点となっている。
- 法制度
- 麻薬の密輸に対する刑罰は5年から15年の懲役に加えて罰金が科される。州または国境を越えた密輸の刑罰は3分の1から3分の2の割合で過重される。
- 港湾の警備体制
- Navy Commander(海軍司令官)が海事当局の役割を行っている。
- Federal Police(連邦警察)は違法麻薬取締を任務としている。
- 船舶による麻薬の密輸
- あらゆる規模や種類の商船が国際麻薬取引の主要な輸送手段となっている。
- ブラジルの港から運ばれる最も一般的な麻薬はコカインである。
- 麻薬密輸の手口
- COVID—19のパンデミックによってコカインの海上密輸パターンが変化した。
- ブラジルからの大量のコカイン輸送には依然としてコンテナが多く使われている。
- 船内、貨物区画、甲板スペースの内部、または喫水線下の船体や構造物に付着させた薬物の発見量が増えている。
- コカインは、バルク貨物中に紛れ込ませたり、甲板上のどこかに隠されたりしていることがある。RORO船では車両内やデッキ上に隠されていることがある。
- 麻薬は船体、水中区画内、特に潜水具を使用して船外からしかアクセスできないシーチェストに隠されていることがある。
- 運送人によって梱包または封印されたのではないコンテナから違法薬物が発見された場合、船主、船長、乗組員が法的責任を問われることはめったにない。
- しかし、違法麻薬が運送人によって梱包されLCLコンテナまたはマニフェストに「空」と記載されたコンテナ内で発見された場合、船長と乗組員は麻薬の密輸関与の罪で告発され、起訴される可能性がある。
- 本船に直接隠された薬物は、たとえ船内から物理的にアクセスできない喫水線下の場所から発見された場合であっても、船長と乗組員は当局から嫌疑を受けるリスクがある。
- ブラジルにおける麻薬押収
- 2023年に記録された押収件数は180,881件。毎日約496件、1時間ごとに約20件の麻薬所持が摘発されている計算になる。
- 麻薬所持の半数は南東部地域(Espirito Santo, Minas Gerais, Rio de Janeiro, Sao Paulo)で、19%は南部地域(Parana, Rio Grande do Sul, Santa Catarina)で報告された。
- 2023 年には143トンのコカインが押収された。
- 2020年1月から2023年12月までに、貨物船70隻のシーチェストから計12トンのコカインが押収された。
- 予防と対応
入港前
- セキュリティ上の懸念事項については、現地代理店、港湾当局、港湾施設保安責任者、およびP&Iコレスポンデンツに問い合わせる。
- 船内および本船周辺のハイリスクエリアを監視するため、侵入警報や監視ビデオ(CCTV)などのセキュリティ機器やシステムの設置を検討する。
- シーチェストやその他の船外からアクセス可能な水中区画に不正開封防止セキュリティシールを使用する。
錨地
- 舷窓、居住区、機関室、ブリッジへのアクセス部分をしっかりと施錠する。
- VHFチャンネル16を常時監視する。
- 本船の甲板、アクセスポイント、外側を明るく照らした状態に保ち、Gangway ladderを上げ所定の位置に留められていることを確認する。
- 甲板の定期巡回、アンカーチェーンおよび不審なボート接近や水中の活動の監視を行い、周囲の他船の動きに注意する。
- 本船周辺の水面から泡が出ていないか注意する。泡は水中での活動の可能性がある。
- 接近する不審船や本船周辺の水中活動を投光照明で照らす。
着岸時
- 舷窓、居住区、機関室、ブリッジへのアクセス部分をしっかりと施錠する。
- 陸側のアクセスラダーは常に警備し、海側のラダーは収納し留めておく。
- 「麻薬厳重取締中」といった警告通知を、できればポルトガル語で甲板およびGangway ladderの下に掲示することを検討する。
- 陸からのアクセスを制御し、安全規則と実務を徹底するために、Gangwayを警備する乗組員を配置する。
荷役作業中
- 乗組員以外は居住区、非作業船倉、甲板スペースなどに近づけない。
- ブレイクバルクの貨物数量、RORO貨物の内部および密封されていない空コンテナ、貨物が入ったコンテナの密封状態、リーファーユニットの構造物、アクセス可能な機関部スペースをくまなく検査する。
出航前
- 積載後、船倉を閉める前に、積荷の上部の写真を撮る。
- 積載後に信頼できる現地サーベイヤーにより船倉と関連マンホールの封印が認証されるよう手配し、荷揚げ港でも信頼できる現地サーベイヤーによりこれらの区画の封印が解除されるよう手配する。
薬物発見時の基本的な対応策
- 証人として不審物の発見場所を見てもらうために近くの乗組員を呼び、直ちに船舶保安管理者 (Ship Security Officer)または船長に通報する。
- 写真やビデオを撮る。
- 現地当局、会社の安全責任者、港湾施設保安責任、旗国およびP&Iコレスポンデンツに通知する。
- 不審物は、警察が本船に到着するまで、少なくとも乗組員2名の監視下で発見された場所にそのままの状態で保管する。
- ほかの不審物がどこかに隠されていないかを確認するために船内をくまなく捜索し、それを記録する。
- 結論
- ブラジルはコカインの主要な積み替え拠点である。
- 近年、船舶による麻薬密輸は激化していて、輸送用コンテナからの押収に加え、船内や船体から押収されるコカイン量が増加している。
- 近年、新しい密輸手口が生み出されている。
- 密輸は無実の船員が犯罪に巻き込まれて刑事責任に問われ、最悪の場合は死刑のリスクにさらされる可能性もある。
- 船内またはその水中区画内で麻薬が発見された場合、一部の国の法執行機関は乗組員が何らかの形で共謀したと考える傾向にある。
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