ニュース

EUの対ロシア制裁-石炭・肥料を含む特定のロシア貨物の輸送について(補足)

2022/10/19 No.1194

このニュースは、2022921日に発行した当組合特別回報第22-012-1号に対して、保険カバーに関して当組合が受領したいくつかのご照会に回答するために発行するものです。

 

EU発表のFAQについて

同特別回報では、20228月にEU当局が発表したFAQ2022919日付で改訂され、ロシアからの石炭および理事会規則833/2014の附属書XXIに掲げる特定の物品(ここでは「対象物品」と総称します。)が第三国向けである場合、当該輸送(および関連する保険の提供)は禁止されていない、とお知らせしました。しかしながら、当組合としては、EU以外の第三国向けの対象物品の輸送の場合であれば、保険カバーに全く支障が無い、とまでは断言できない状態にあると考えております。

 

当組合の提供する外航船保険とEUの対ロシア制裁について

当組合が提供する外航船保険とその再保険スキームの詳細については、添付をご参照ください(こちらからもご覧いただけます)。

 

保有部分について

国際P&Iグループ(IG)の各クラブ保有(自己負担)としている1,000万米ドルまでの損害につき、20221018日時点では、ロシアから第三国への「対象物品」の輸送に関し、原則として当組合での保険カバーは可能であろうと考えております。同時に、国際情勢の変化を踏まえ、EUや米国などの各国の制裁措置の目的を尊重することが当組合として重要であると考えております。前述の保険カバーに対する見解は、ロシアから第三国への「対象物品」の輸送を、当組合として推奨することを意味するものではありません。

 

再保険について

当組合加入船において1,000万米ドル超1億米ドルの範囲の損害を発生させた場合、当該損害の一部は、IGの他の12クラブにより分担(再保険)されます。さらに、IG1億米ドルを超える損害に対して商業マーケットでの再保険を手配しています。各クラブおよび再保険者は、各国の規制や当局のガイドラインを含むさまざまな法的な状況の下で事業を行っているため、ロシアから第三国への「対象物品」の輸送に関する損害に対して、他のクラブまたは再保険者が当組合へ再保険金を支払うことができるかどうかについては、依然として不確実な状態にあるといえます。また、当組合は1,000万米ドル以下の損害に対する当組合独自の再保険を手配しておりますが、こちらも同様に再保険金の負担が可能であるかどうかは不確実です。

 

当組合加入船が、ロシアから第三国への「対象物品」の輸送に関連して損害を発生させ、制裁を理由に他クラブや再保険者から当組合が保険金を回収できない場合、当組合の保険契約規程第36条(9)により、再保険の回収不能分について保険てん補はありません。つまり、当組合の再保険からの回収不能分については、組合員ご自身でご負担いただくことになります。

 

制裁について

ご承知のとおり、ロシア・ウクライナ情勢は極めて不安定です。また、EUなどによる対ロシア制裁の内容は、時間の経過や国際情勢の変化により、頻繁に変化しています。さらに、実際の制裁に加え、各国の規制や関係当局のガイドライン、各クラブ・再保険者の方針は変更可能なものであり、保険カバーの可否も変更される可能性があります。このような状況のもとにおいては、ロシアから第三国への「対象物品」の運送に関し損害が発生した場合に、すべてのクラブ・再保険者より保険カバーが提供されるとまでは断言できない状況です。

 

さらに、クラブや再保険者が保険カバーを提供することができると考えた場合においても、リスクに対し異なる方針を有する銀行が実際の送金を拒否する可能性も十分考えられます。

 

したがいまして、組合員の皆様におかれましては、制裁によって保険カバーを含むさまざまな面に不確実性がある点にご注意ください。