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EUの対ロシア制裁-第8次制裁パッケージ

2022/10/12 No.1192

EU2022106日、ロシアのウクライナに対する継続的な軍事侵攻への対応として、第8次制裁パッケージを採択しました。

 

多くの規則と決定が発表されました(詳細はこちらからご覧いただけます)が、クラブと組合員の皆さまにとって特に重要なのは、理事会規則(EU2014/833を再改訂した理事会規則(EU)2022/1904(「同規則」)です。

 

同規則は、多くの新たな個人・団体の資産凍結と、海運に特に関連する以下の規定を含んでいます。

 

ロシア船級協会

ロシア船級協会は、同規則の附属書XIXに記載されているロシア国有企業のリストに追加され、第5aa条に基づく制限の対象となりました。その結果、EUの事業者は、ロシア船級協会との直接または間接的な取引が禁止されますが、2022107日以前に締結された契約やその契約の履行に必要な付随的な契約の履行を可能にするため、202318日までの事業縮小期間が設けられています。

 

さらに、ロシア船級協会の認証を受けている船舶は、第3ea条により、202348日以降EUの港に寄港することができなくなります。

 

鉄鋼製品

附属書XVIIに掲げられている鉄鋼製品は、第3g条により非EU諸国を含むいかなる国への輸送も禁止されていますが、この鉄鋼製品のリストが大幅に拡大されました。

 

また、第三国で加工されたものであってもロシア原産の鉄鋼を含む附属書XVIIに掲げられた鉄鋼製品について、その輸入または購入を20239月以降禁止する新たな制限も追加されました。

 

これらの規定はすべて、EU事業者による保険および再保険サービスの提供の禁止を含みます。したがって、組合員自身が同規則の直接的な影響を受けない(例えば、EU域外に拠点を置いている)としても、クラブや再保険者はこれらの活動に従事するための保険カバーを提供できない可能性があることに留意してください。

 

なお、特定の鉄鋼製品に関しては、追加の除外規定・例外規定があります。

 

製品リスト

附属書XXIに掲げられているロシアに大きな利益をもたらす禁止品目(第3i条)および附属書XXIIIに掲げられているロシアの産業力の強化に影響しうる禁止品目(第3j条)のリストが、いずれも大幅に拡大されました。ただし、両附属書の一部の物品については、2022年10月7日以前に締結された契約またはその契約の履行に必要な付随的契約の履行を可能とするため、2023年1月8日までの事業縮小期間が設けられています。

 

原油および石油製品

同規則では、ロシアの原油および石油製品(以下、「ロシア油」)の輸送に関していくつか重要な説明がなされたほか、EU制裁がG7において計画されている価格上限設定にどのように関係してくるかについても発表されました。

 

以前ご案内したとおり、ロシアの原油(CNコード2709 00)および石油製品(CNコード2710)のEU域内への輸送、およびこれらの貨物の輸送に関連する(再)保険の提供は、第3m条によって禁止されていますが、特定の状況下においては、原油は2022年12月5日まで、石油製品は2023年2月5日まで適用除外が認められることになっています。

 

これらの貨物のEU域外への輸送に対する保険・再保険の提供も同様に禁止されていますが、第3n条により、いずれの貨物についても、保険契約が2022年6月4日以前に締結されている場合は12月5日まで免除が認められるとされていました。すなわち、石油製品の輸送は許可されている一方で、石油製品への保険・再保険の提供は2022年12月5日より禁止されることになっていました(詳細はEUの第6次制裁パッケージに関する2022年7月28日付特別回報第22-007-1号をご参照ください)。この問題は同規則によって解決され、CN2710に該当するロシア製品の輸送に関連する保険・再保険の事業縮小期間は、2023年2月5日まで延長されることになりました。

 

また、第3n条(3)は、保険契約が2022年6月4日以前に締結され、保険カバーが該当する事業縮小期間の終わりまでに終了している限りにおいて、2022年12月5日以前のロシア原油の輸送や2023年2月5日以前の石油製品の輸送に関連する保険金の支払いが認められることを明確にしています。

 

G7による価格上限設定

簡単に申し上げると、G7は油価格の上昇を抑えるために、ロシア油の世界市場への輸出を維持しつつ、販売価格に上限(価格は未定)を設定し、販売によりロシアが得る収入を制限する仕組みを導入しようとしています。保険会社・再保険会社は、上限価格以下で販売される貨物の輸送に保険を提供することが認められますが、逆に上限価格より高値で販売される貨物の輸送に対する保険提供は禁止されます。

 

この価格上限設定がどのように機能するかについて詳細はまだ明らかになっておりません。この点については改めて最新情報をお知らせします。しかし、同規則は、この価格上限設定がEUの制裁措置とどのように相互に作用するかを規定しています。

 

現状では、ロシアの原油と石油製品のEU域内への輸送はそれぞれ2022年12月5日と2023年2月5日から禁止されますが、当該貨物のロシアから第三国への輸送は許可されます(ただし、EUの保険会社および再保険会社は、輸送のための保険カバーを提供することができません)。

 

欧州理事会が価格上限について合意し、修正理事会決定の形で公表した場合、このような輸送は上述の日付から原則禁止となりますが、EUの船舶が非EUの仕向地へロシア油を輸送することは認められ、またEUの保険会社・再保険会社は、1バレルあたりの購入価格が公表された価格上限を超えない限りにおいて、EU船舶および非EU船舶による輸送に対して保険カバーを提供することができるようになります。

 

上限価格が後日変更された場合は、価格上限変更日以前に締結された契約については(その契約が変更前の価格上限を満たしている場合には)90日間の事業縮小期間が認められます。

 

最後に、第3n条の禁止事項は、海上安全のために必要な水先案内人サービスの提供および附属書XXIXに掲げられているサハリン2プロジェクトにおける日本への特定貨物の輸送には適用されないことが明確にされています。

 

EU制裁は、以下の状況において適用されます:領空を含むEU領域内、EU加盟国の管轄下にある航空機または船舶上、所在地を問わずEU加盟国の国民であるあらゆる個人、所在地を問わずEU加盟国の法律に基づいて設立された法人・事業体または団体、EU域内で全部または一部の事業を営む法人・事業体または団体。