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【改訂版2】EUの対ロシア制裁-石炭・肥料を含む特定のロシア貨物の輸送について

2022/11/01 第22-012-2号

2022111日追記

 

2022919日、EUFAQを改訂し、石炭や一部の種類の肥料を含むロシアからの特定の貨物の輸送が、非EU諸国向けである場合には、その輸送(および関連する保険の提供)は、(理事会規則(EU833/2014において)禁止されないことを明らかにしました。

 

2022107日、EUは以下のようにFAQを更新しました。

 

  1. EU企業による理事会規則833/2014の附属書XVIIXXI及びXXIIに掲げられた物品の移送は、当該物品が第三国向けであり、EU領域を通過しない場合は許可されるか?

 

最終更新日:2022107

いいえ。理事会規則833/2014の第3g条、第3i条、第3j条は、附属書XVIIXXIXXIIに掲げる物品がロシアを原産地とする場合、またはロシアから輸出される場合に、当該物品の直接的または間接的な購入、輸入、移送を禁止するものである。移送の禁止は物品の最終目的地に関係なく適用されるが、輸入の禁止は性質上、「EU内に」移動する物品に適用される。移送が理事会規則833/2014の第13条の範囲に含まれる限り、物品がEU向けであるかどうかは関係ない。これは、ロシアの経済基盤を大幅に弱め、その製品の重要な市場を奪い、戦争を行う能力を大幅に抑制するという制裁の目的を支援するものである。それ以外の解釈は、禁止の目的を大きく逸脱し、重大な抜け穴を作ることになる。

 

しかし、EUは、その制裁が世界中の第三国、特に発展途上国の食糧およびエネルギーの安全保障に影響を与えるのを回避することを約束する。理事会規則2022/1269の詳説11および12に明記されているこの方針に照らして、附属書XXIおよびXXIIに掲げる特定の物品の第三国への移送は、「世界の食糧・エネルギー不安を除去するため」および第三国における「そのために起こりうるマイナスの影響を避けるため」に、許可されるべきものである。

 

エネルギーの安全保障を確保するため、EUの事業者が行う特定のエネルギー関連物品の、第三国への移送およびその移送に関連する融資や金融支援は、認められるべきである。貨物特有のサプライチェーンと利用可能な輸送手段を考慮すると、そのような移送は、EU領域を経由しない地点から地点(例えば、ロシアから第三国)へのもののみ許可されるべきである。関連する物品は以下のとおりである。

  • 附属書XXIに掲げる、CNコード4401(燃料用木材)および4402(木炭)に該当するエネルギー物品
  • 附属書XXIIに掲げるすべての品目(石炭および関連製品)

 

さらに、理事会規則2022/1269の詳説12は、EU制裁が「第三国とロシアの間の、小麦や肥料を含む農産物や食品の貿易をいかなる形でも対象としない」ことを明確にしている。したがって、以下の物品に関し、EUの事業者が行う、またはEU領域を経由(通過を含む)する第三国への移送およびその移送に関連する融資や金融支援は、いかなる形でも妨げられるべきではない。

  • 附属書XXIに掲げる、CNコード310420310520310560ex31059020およびex31059080に該当する肥料
  • 附属書XXIに掲げる、CNコード2303に該当する動物用飼料

 

上記は、カリーニングラードへの/からの貨物の通過に関するガイダンス、および加盟国が自国の国家安全保障上の利益を保護するために必要な措置を講じる資格に影響を与えるものではない。

 

  1. 理事会規則833/2014の第3g条、第3i条および第3j条における、附属書XVIIXXIまたはXXIIに掲げる物品・製品の第三国への輸送または移送に関連するサービス(例えば、仲介または保険を含む金融支援)の禁止範囲はどのようなものか。

 

最終更新日:2022107

附属書XVIIXXIXXIIに掲げる物品または製品の第三国への輸送または移送に対し、EU事業者が保険、仲介サービス、その他の融資または金融支援を提供することは禁止されている。これらの物品または製品の移送がEU事業者によって行われるか、非EU事業者によって行われるかにかかわらず、当該輸送に対する支援の提供者がEU事業者である場合、提供者は引き続きこの禁止措置に拘束される。

 

しかし、EUは、その制裁が世界中の第三国、特に発展途上国の食糧およびエネルギーの安全保障に影響を与えるのを回避することを約束する。理事会規則2022/1269の詳説11および12に明記されているこの方針に照らして、附属書XXIおよびXXIIに掲げる特定の物品の第三国への移送は、「世界の食糧・エネルギー不安を除去するため」および第三国における「そのために起こりうるマイナスの影響を避けるため」に、許可されるべきものである。

 

エネルギーの安全保障を確保するため、EUの事業者が行う特定のエネルギー関連物品の、第三国への移送およびその移送に関連する融資や金融支援は、認められるべきである。貨物特有のサプライチェーンと利用可能な輸送手段を考慮すると、そのような移送は、EU領域を経由しない地点から地点(例えば、ロシアから第三国)へのもののみ許可されるべきである。関連する物品は以下のとおりである。

  • 附属書XXIに掲げる、CNコード4401(燃料用木材)および4402(木炭)に該当するエネルギー物品
  • 附属書XXIIに掲げるすべての品目(石炭および関連製品)

 

さらに、理事会規則2022/1269の詳説12は、EU制裁が「第三国とロシアの間、の小麦や肥料を含む農産物や食品の貿易をいかなる形でも対象としない」ことを明確にしている。したがって、以下の物品に関し、EUの事業者が行う、またはEU領域を経由(通過を含む)する第三国への移送およびその移送に関連する融資や金融支援は、いかなる形でも妨げられるべきではない。

  • 附属書XXIに掲げる、CNコード310420310520310560ex31059020およびex31059080に該当する肥料
  • 附属書XXIに掲げる、CNコード2303に該当する動物用飼料

 

上記は、カリーニングラードへの/からの貨物の通過に関するガイダンス、および加盟国が自国の国家安全保障上の利益を保護するために必要な措置を講じる資格に影響を与えるものではない。

 

 

組合員の皆さまにおかれましては、以下の点にご留意ください。

 

  • 107日に更新されたFAQでは、ロシア原産の木材・木炭および石炭製品の非EU諸国への輸送(および輸送に関連する保険)は、EU域内を通過しない場合にのみ許可されるのに対し、肥料および動物用飼料の非EU諸国への輸送(および輸送に関連する保険)は、EU域内の通過を伴う場合であっても許可されると述べています。

 

  • 許可される木材製品の範囲は、CNコード44の全製品から、CNコード4401(燃料用木材)と4402(木炭)のみに絞られました。

 

  • CNコードex2901および2902に該当する炭化水素、CNコード2523および6810に該当するセメント製品は、許可製品のリストから削除されました。

 

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2022921日追記

 

2022919日、EUはさらにFAQを改訂し、ロシアからの石炭やその他の固形化石燃料、一部の種類の肥料を含む特定の貨物の輸送に関する規定の適用について明確にしました。

 

8月にEUが示した見解に反して、FAQは現在、石炭および理事会規則833/2014の附属書XXIに掲げる特定の物品が第三国向けである場合、その輸送(および関連する保険の提供)は実際には禁止されていないことを明確にしています。改訂FAQの該当箇所は以下のとおりです。

 

  1. EU企業による理事会規則833/2014の附属書XVIIXXI及びXXIIに掲げられた物品の移送は、当該物品が第三国向けであり、EU領域を通過しない場合は許可されるか?

 

最終更新日:2022919

いいえ。理事会規則833/2014の第3g条、第3i条、第3j条は、附属書XVIIXXIXXIIに掲げる物品がロシアを原産地とする場合、またはロシアから輸出される場合に、当該物品の直接的または間接的な購入、輸入、移送を禁止するものである。移送の禁止は物品の最終目的地に関係なく適用されるが、輸入の禁止は性質上、「EU内に」移動する物品に適用される。移送が理事会規則833/2014の第13条の範囲に含まれる限り、物品がEU向けであるかどうかは関係ない。これは、ロシアの経済基盤を大幅に弱め、その製品の重要な市場を奪い、戦争を行う能力を大幅に抑制するという制裁の目的を支援するものである。それ以外の解釈は、禁止の目的を大きく逸脱し、重大な抜け穴を作ることになる。

 

しかし、EUは、その制裁が世界中の第三国、特に発展途上国の食糧およびエネルギーの安全保障に影響を与えるのを回避することを約束する。理事会規則2022/1269の詳説11および12に明記されているこの方針に照らして、附属書XXIおよびXXIIに掲げる特定の物品の第三国への移送は、「世界の食糧・エネルギー不安を除去するため」および第三国における「そのために起こりうるマイナスの影響を避けるため」に、許可されるべきものである。これは、EUの事業者が行う、あるいはEU域内を経由(積み替えを含む)する以下の物品の第三国への移送、およびその移送に関連した資金調達や金融支援にも適用される。

  • 附属書XXIに掲げる、CNコード310420310520310560ex31059020およびex31059080に該当する肥料
  • 附属書XXIに掲げる、CNコード2303に該当する動物用飼料
  • 附属書XXIに掲げる、CNコードex2901および2902に該当する特定の炭化水素
  • 附属書XXIに掲げる、CNコード44(木材)、2523および6810(セメント製品)に該当する必需品
  • 附属書XXIIに掲げるすべての品目(石炭および関連製品)

 

  1. 理事会規則833/2014の第3g条、第3i条および第3j条における、附属書XVIIXXIまたはXXIIに掲げる物品・製品の第三国への輸送または移送に関連するサービス(例えば、仲介または保険を含む金融支援)の禁止範囲はどのようなものか。

 

最終更新日:2022919

附属書XVIIXXIXXIIに掲げる物品または製品の第三国への輸送または移送に対し、EU事業者が保険、仲介サービス、その他の融資または金融支援を提供することは禁止されている。これらの物品または製品の移送がEU事業者によって行われるか、非EU事業者によって行われるかにかかわらず、当該輸送に対する支援の提供者がEU事業者である場合、提供者は引き続きこの禁止措置に拘束される。

 

しかし、EUは、その制裁が世界中の第三国、特に発展途上国の食糧およびエネルギーの安全保障に影響を与えるのを回避することを約束する。理事会規則2022/1269の詳説11および12に明記されているこの方針に照らして、附属書XXIおよびXXIIに掲げる特定の物品の第三国への移送は、「世界の食糧・エネルギー不安を除去するため」および第三国における「そのために起こりうるマイナスの影響を避けるため」に、許可されるべきものである。これは、EUの事業者が行う、あるいはEU域内を経由する(積み替えを含む)以下の物品の第三国への移送、およびその移送に関連した資金調達や金融支援にも適用される。

  • 附属書XXIに掲げる、CNコード310420310520310560ex31059020およびex31059080に該当する肥料
  • 附属書XXIに掲げる、CNコード2303に該当する動物用飼料
  • 附属書XXIに掲げる、CNコードex2901および2902に該当する特定の炭化水素
  • 附属書XXIに掲げる、CNコード44(木材)、2523および6810(セメント製品)に該当する必需品
  • 附属書XXIIに掲げるすべての品目(石炭および関連製品)

 

 

815日に発行した特別回報(オリジナル)の内容は以下のとおりです。

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2022810日、欧州連合(EU)は、ロシアからの石炭やその他の固形化石燃料、一部の種類の肥料を含む特定の貨物の運送に関する規定の適用について明確化するため、新たなFAQを公表しました。本特別回報でご案内するとおり、今回の明確化は、EUの事業者による当該商品の運送のみならず、(居住地を問わず)あらゆる事業者による当該商品の運送に対する保険提供にも大きな影響を与えることになります。

 

202248日、EU理事会規則833/2014を改正し、以下の条項を含む規則2022/576を公表しました。

 

3i

  1. 附属書XXIに掲げる、ロシアに多大な利益をもたらし、ウクライナ情勢を不安定にする行為を可能にするような物品(ロシアを原産地とするかロシアから輸出されるもの)を、EUに向けて直接または間接的に購入、輸入または移送することを禁止する。

 

  1. 以下の行為を禁止する。

(a) 1項の禁止に関連し、第1項が対象とする商品および技術ならびに当該商品および技術の提供、製造、メンテナンス、使用に関する技術支援、仲介業務またはその他のサービスを直接または間接的に提供すること。

(b) 1項の禁止に関連し、第1項が対象とする商品および技術の購入、輸入、移送または関連する技術支援、仲介業務もしくはその他のサービスの提供に対し、直接または間接的に融資または金融支援を行うこと。

 

  1. 1項および第2項の禁止は、202249日以前に締結された契約または当該契約の履行に必要な付随契約の2022710日までの履行には適用されないものとする。

 

  1. 2022710日時点では、第1項および第2項の禁止事項は、以下のものの輸入、購入もしくは輸送またはEUへの輸入に必要な関連する技術支援もしくは金融支援には適用されない。

(a) 塩化カリウム[CN 3104 20]710日を始点とし翌年の79日までの間に837,570トン)。

(b) 附属書XXIに記載されたその他の製品[CN 3105 203105 60および3105 90]710日を始点とし翌年の79日までの間に合計1,577,807トン)。

 

  1. 4項に定める輸入数量の割当は、欧州委員会施行規則(EU2015/2447(※)の第49~54条に規定する関税率割当の管理システムに従って、欧州委員会と加盟国によって管理されるものとする。

 

3j

  1. 附属書XXIIに掲げる石炭およびその他の固形化石燃料(ロシアを原産地とするかロシアから輸出されるもの)を、EUへ向けて直接または間接に購入、輸入または移送することを禁止する。

 

  1. 以下の行為を禁止する。

(a) 1項の禁止に関連し、第1項が対象とする商品および技術ならびに当該商品および技術の提供、製造、メンテナンス、使用に関する技術支援、仲介業務またはその他のサービスを直接または間接的に提供すること。

(b) 1項の禁止に関連し、第1項が対象とする商品および技術の購入、輸入、移送または関連する技術支援、仲介業務もしくはその他のサービスの提供に対し、直接または間接的に融資または金融支援を行うこと。

 

  1. 1項および第2項の禁止は、202249日以前に締結された契約または当該契約の履行に必要な付随契約の2022810日までの履行には適用されないものとする。

 

 

附属書XXIと附属書XXIIは、理事会規則2022/576に記載されています。

 

(ロシアが主要な生産国となっている)特定の種類の肥料は、ロシアに大きな収入をもたらすとされている商品として附属書XXIのリストに記載されており、第3i条の禁止規定の対象となることに留意する必要があります。

 

クラブとその弁護士は、第3i条と第3j条を普通に読めば、ロシアの肥料、石炭、その他の固形化石燃料の輸送に関する禁止事項は、EUへの輸入にのみ関係し、EU以外の目的地への輸送には関係ないことは明確であろうと考えていました。いずれにしても、これらの規定では、49日以前に締結された売買契約について、それぞれ2022710日までと2022810日までの事業縮小期間が認められていました。

 

EU417日と614日にFAQを公表しましたが、EU事業者によるこれらのロシア貨物の購入はEU域内向け・域外向けを問わず禁止されたものの、輸送については触れられていませんでした。

 

しかし、810日(石炭とその他の固形化石燃料貨物に関する事業縮小期間が終了した日)に、追加のFAQが公表され、業界がこれまで行ってきた第3i条・第3j条の文言の解釈に大きな疑問が投げかけられました。最新のFAQは、こちらからご覧いただけます。このFAQは、各条の禁止事項が、実際には当該貨物のEU域内への輸送だけでなく、ロシアから他の国への輸送にも影響を及ぼす可能性があることを示唆しているようです。

 

そのため、国際P&Iグループ(IG)は、最新のFAQの意味、EUの禁止事項の範囲、組合員の皆さまとクラブ双方への潜在的影響について、欧州委員会に早急な説明を求めました。

 

EUIGに対して、条文における「輸入」はEU域内への輸入に限定されている一方で、直接または間接的な移送に関するその他の制限は、EU域外を仕向地とする移送にも同様に適用されることを意図している旨を明らかにしました。したがって、仕向地(EU域内・域外)を問わず、EUの事業者がロシアの肥料、石炭、その他の固形化石燃料の輸送に関与することは、EU制裁に違反することになります。

 

さらに、欧州委員会はIGに対し、第3i(2)(b)および第3j(2)(b)にある「金融支援」の提供の禁止は、保険・再保険サービスを含むため、EUの管轄下にあるいかなる事業者も、仕向地にかかわらず、ロシアの肥料、石炭およびその他固形化石燃料の輸送に対し保険・再保険を提供できないことを明確にしました。

 

IGを構成するクラブの大半はEUの管轄下にあります。すべてのIGクラブ(EU域外に拠点を置くクラブを含む)は、EU域内に拠点を置く再保険者が多数参加する再保険プログラムを利用しています。これらの制裁措置により、IGクラブのいずれかがプールクレームの分担金の拠出を禁じられた場合、各クラブの制裁関連規定が定めるとおり、この不足分は組合員にご負担いただくことになります。この原則は、1億米ドル以上のクレームについて、IG再保険プログラムに参加しているEU再保険者が制裁措置により支払いを禁止された場合にも適用されます。

 

EUは、この最新のFAQの結果に対応できるよう、業界に対しさらなる事業縮小期間を認める意向を示していないため、禁止規定は、これらの貨物の輸送に従事する組合員の皆様へ即座に影響を及ぼすこととなります。疑問がある場合は、クラブへ照会することを強く推奨いたします。

 

EUの制裁措置は、EUの管轄外には適用されないことにご留意ください。EU規則の第13条は、規則の適用対象を以下のように規定しています。

 

  1. EU領域内
  2. EU加盟国の管轄下にある航空機または船舶上
  3. 所在地を問わず、EU加盟国の国民であるあらゆる個人
  4. 所在地を問わず、EU加盟国の法律に基づいて設立された法人、事業体または団体
  5. EU域内で全部または一部の事業を営む法人、事業体または団体

 

国際P&Iグループのすべてのクラブが同様の内容の回章を発行しています。