北朝鮮制裁に関する最新報告
本回章は、2019年に公表した朝鮮民主主義人民共和国への制裁に関する回章を更新したものです。先日公表された2019/2020年国連の北朝鮮制裁に関する専門家パネル報告書(Report)を受けて更新されています。
背景
報告書は、北朝鮮が国連安全保障理事会の決議に違反して核開発を停止するための措置を講じていないことを指摘しています。そのため、厳しい制裁措置が継続されています。
専門家パネルは、北朝鮮が石油精製品の不法輸入と砂や石炭の輸出を通じて、弾道ミサイル計画のための収益を上げ続けていると報告しています。 海上貿易は、北朝鮮のこの収入源を強化する上で重要な役割を果たしていると強調されています。
国連と各国の執行機関からのメッセージは明確です。 船主は、国連加盟国の協力を得て制裁の監視や見張りが続けられており、このような違反があった場合には、より多くの証拠が収集され、報告されるようになっていることに注意するよう強く推奨します。
北朝鮮籍以外の船舶使用の証拠
報告書は、海上での違法な貨物の瀬取りに北朝鮮籍以外の船舶が継続使用されていることを指摘しています。
報告書はさらに、北朝鮮が発覚を免れるために取引方法を変更し、北朝鮮籍以外の船同士で国際水域での瀬取りを行い、その後Nampoへ直航し違法貨物を引き渡すことが行われていると伝えています。 このような船舶は、発覚する前に数回にわたって違法な貨物の瀬取りを行っています。こうした活動により、北朝鮮は国連安保理決議第2397号(2017年採択)第5項で定められた取引量の上限である50万バレルのおよそ3倍もの石油精製品を受け取っていたことになります。国連加盟国の支援を受け、制裁対象として14隻の船舶が指定されましたが、いずれも国際グループに加盟するP&Iクラブには加入しておりません。これらの活動を行っている船舶の所有者やその資本関係者の正体を隠蔽するため、船舶の登録所有者のほとんどが解散または会社登記から抹消されているか、虚偽の、あるいは詐称された船籍の下で活動していることが報告されています。
さらに専門家パネルは、規制当局や執行機関、海事産業が引き続き警戒を怠らず、適切かつ効果的なデューデリジェンスを維持する必要があると指摘しています。 特にタンカー運航者は、船に積まれた貨物の真の目的地を特定し、 確認するためにあらゆる努力をすべきです。こうした瀬取りは夜間にAIS装置が無効化された状態で行われ、その後の輸送はIMO番号のない小型船でよく行われています。
報告書は、北朝鮮がその活動を発見されないように継続的にやり方を変更し、対策を取っていると指摘しており、専門家パネルは最近の傾向として、従来の小型船の利用に代わり、スクラップ船市場から大型ばら積み船を調達し、これを石炭の輸送に利用していると報告しています。
契約締結には注意が必要
2019年5月3日、米国財務省外国資産管理局(以下「OFAC」)は、効果的な制裁コンプライアンスプログラムの必須要素に関するOFACの見解を示した「OFACコンプライアンス・コミットメントのためのフレームワーク」(以下「コンプライアンス・フレームワーク」)を公表しました。
国際P&Iグループの全クラブが、それぞれ共通回章を発行(2019年9月5日付特別回報第19-010号)し、船主、用船者、貿易業者が制裁違反のリスクを軽減するための措置を講じることの重要性を強調しました。
最新の国連報告書を受けて、当組合は、北朝鮮との関係を持つ活動を行うリスクを軽減するために、継続して最高レベルの注意義務を尽くすよう、すべての組合員に改めて助言いたします。 このような禁止行為を行った場合は、国連、OFAC、その他の執行機関による制裁対象者への指定、資産凍結、制裁対象者リストへの記載を含む厳しい罰則が科せられる可能性があります。
北朝鮮との結び付きのある取引は、船舶の動静、AIS、長距離識別追跡(LRIT)、衛星画像、その他の機器を用いた監視機関による見張りと精査の対象となります。 対北朝鮮制裁に違反した疑いのある船舶は、各国の当局によってリストアップされ、調査が実施される間、港での捜査や拘留の対象となる場合があります。
保険てん補への影響
制裁に違反している行為があると判断された場合、保険てん補を取り消すことになります。 仮に北朝鮮や北朝鮮関係者との合法的な取引であったとしても、組合員は、国際P&Iグループ加盟のクラブが北朝鮮の港に寄港する船舶を支援できる可能性は低く、クレームや諸費用の支払いや保証状の発行が遅れる、あるいは保険金の支払いや保証状発行が完全に禁止される可能性があることを考慮すべきです。
したがって、すべての組合員は、瀬取りやそれに限定されず、北朝鮮との取引を行うリスクを軽減し、北朝鮮関係者との禁止行為を意図して、あるいは不注意で行うことがないよう、可能な限りの注意義務を尽くすことが強く求められています。
国際P&Iグループのすべてのクラブが同様の内容の回章を発行しています。