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2019保険年度コンディションサーベイ実施報告

2020/05/12 第20-002号

2019保険年度(PY)に実施したコンディションサーベイ(CS)のまとめを以下のとおりご報告します。

 

目的

当組合では、加入船舶の船質を保つため、一定の船齢に達した新規加入船と既加入船に対し、第三者機関によるCSを実施しています。組合員の皆さまからお預かりしている保険料で事故の損害を補償するため、加入船舶が一定の船質、運航管理水準を有し、維持しているかを確認する必要があります。

本船の潜在的リスクの診査を行うために、CSの検査項目には船舶のコンディションだけではなく、運航水準と船上での管理水準も含まれます。

CS実施前後での打合せ風景
本船乗組員とのミーティング風景

 

実施状況:2019PY118

2019PYは、組合員のご協力により118隻の加入船に対しCSを実施いたしました。

2019PY実施状況円グラフ

 


2020PY
も引き続き全対象船舶に対しCSを実施することとしておりますので、組合員の皆さまには、ご協力をお願い申し上げます。

 

 

重大な指摘事項

CSの結果、指摘事項があった場合には、事故を未然に防ぐために速やかな恒久的是正措置をお願いしています。また、重大事故につながる可能性が高い欠陥に対しては、Defects Warrantyを付帯し、保険の「てん補制限」もありうると警告しています。

2019年度にDefects Warrantyを付帯した内容の一例を以下に、紹介します。

 

一般貨物船・撒積貨物船・チップ船において

  • ハッチカバーウルトラソニックテスト不合格(詳細は2016年7月13日付特別回報第16-011号参照
  • ハッチカバークリートの腐食・固着

 

その他(船種に関係なく)

  • 機関室内の複数台の機器からの漏油
  • 発電機排気ガス漏洩
  • 係船索損耗

重大な指摘事項の例

 

 

指摘事項の傾向
過去2年間の傾向と変わらず、ハッチカバー・コーミング、機関室設備の不備に指摘が集中しています。
過去3年間の指摘事項の傾向をグラフにまとめました。

2017PY-2019PY指摘事項の傾向

 

 

CSでの確認項目例

CSでは、2011年に中国海域で発生したコンテナ船座礁事故の判決で注目された「航海計画」についても確認しています。

以下に「航海計画」に関する指摘内容の一例をご紹介いたします。

 

  • 大洋航海(Open Sea)において難破船から1.1マイル沖を航行していた(SMS Manual違反)
  • ECDIS上にアボートライン、緊急避難錨地、パラレルインデックスがマークされていない
  • 航海計画に余裕水深(UKC)が考慮されていない
  • 航海計画に海図精度(CATZOC)が考慮されていない
  • 航海計画に前方予測監視アラート(Look Ahead, Safety Frame, X-Tracking)に関する設定距離及び範囲の記載がない。

ECDIS(電子海図表示システム)

適切な「航海計画」の立案と実行は、2020101日施行予定の船舶油濁損害賠償保障法の改正の要因となった座礁事故防止にもつながります。このようにCSでは欠陥箇所にかかわる最新のガイドラインが船上で遵守されているか、現場の運行実態を定期的に見直す好機となっています。

 

まとめ

本船のヒヤリハット報告から安全対策の傾向は明らかになりますが、組合員の皆さまの大切な財産である本船、乗組員を守るためには、第三者の視点で実際の本船の運航実態を確認することも肝要です。CSは、現場の整備が追い付いていない箇所を指摘事項として可視化するだけではなく、是正報告までが一連の流れとなっていますので、加入船舶の船質維持、および船質底上げの一助になると考えております。

また、CSの実施には組合員のご協力が不可欠です。CSの機会に過去クレームに基づき重点的に確認したい箇所があればどうぞ契約部担当者ヘご相談ください。2020PYCS実施にどうぞご協力をお願い申し上げます。