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中国-大気汚染物質排出規制エリア(ECA)について(その14)

2018/11/22 No.995
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中国の法律事務所HAI TONG & PARTNERSより上海ECAの続報を入手しましたので概要をご案内します。

 

概 要

上海MSAは排出規制海域(ECA)の監視・管理に関する改正ガイドラインを発行した。

 

  1. 適用範囲

同ガイドラインは上海MSA管轄水域にのみ適用され、上海の港湾に入出港する船舶(軍艦、プレジャーボート、漁船を除く)は、これに従わなければならない。同ガイドライン有効期間は2018年10月1日から2018年12月31日まで。同ガイドライン発行に伴い2016年発行のガイドラインは無効となる。

 

  1. 低硫黄燃料に切り替えを行う船舶に対する検査

予備調査

上海MSA管轄下の現地MSAは、臭気検知器を搭載したドローンなどで航行中の船舶排気を監視し、高硫黄燃料使用が疑われる船舶を捕捉する。

 

乗船検査

違反歴のある船舶や予備調査で違反嫌疑の船舶は、乗船検査の主要対象となる。

検査項目は以下のとおり。

  • 書類検査:IAPP証書(国際大気汚染防止証書)、燃料切替手順記録、エンジンログブック等(7条)
  • 油記録検査:エンジンログブック、油記録簿、補油関連書類
  • オイルパイプの機器および装置(9条)
  • 使用燃料量(10条)
  • 燃料油検査:サンプル採取による簡易テスト(11条)
  • 燃料油サンプル保管とラボ検査(12条)

 

代替措置

以下の代替措置が許可される。

  • 陸上電力:陸上電力を使用できる場合、船舶はターミナル停泊中は優先的に使用しなければならない。現地MSAは、手順書やターミナルから船舶に提供される安全運用ガイドの有無と、規則が厳格に遵守されているかを検査することがある。(14条)
  • クリーンエネルギー:クリーンエネルギーの種類、エンジンログブックの記録(15条)
  • 排ガス処理設備:IAPP証書(船級協会が発行)、エンジンログブック、処理残渣が海上排出されずまたは船上で焼却処理されず、陸上設備に回収され、たなどの記録がチェックされる。(16条)

 

  1. 適用免除

低硫黄燃料の使用が船舶に危険を及ぼす場合は、使用免除を受けられるが、そのためには、船主または代理店が上海MSAに申請書と以下の書類を事前に提出しなければならない。(17条)

  • 船級協会発行の証明書
  • 燃料油設備の製品仕様書または操作手引書
  • 船主による意見書と燃料油設備の交換計画書

 

また以下の場合は該当船舶が現地 MSAに適用免除申請ができる。(18条)

  • 適切な燃料切替手順が策定され、実施可能なあらゆる手段をとったにもかかわらず、上海入港前の燃料切替作業終了が不可能な状況となった場合。
  • 事故のため、予定時刻に上海を出港できなくなった場合。
  • 燃料供給業者による行為によって、不適合燃料を使用することになった場合。
  • 最善を尽くしたにもかかわらず、適合燃料が入手できなかった場合。
  • 緊急事態が発生し、船舶が適切燃料を使用できなかった場合。

 

免除は1回の航海にのみ有効。(19条)

 

  1. 処罰

現地MSAが代替措置や適用免除を認めなかった場合、船舶が直ちに是正を行わなければ、上海での運航または入港、出港、停泊が禁止される可能性がある。(23条)

違反に対する処罰は矯正と警告だが、重大な違反や度重なる違反には罰金を科す可能性もある。(24条)

  • 中国大気汚染防止法では、燃料供給に関する書類またはサンプルを保持していない船舶や供給業者にRMB10,000以上RMB100,000以下の罰金を科すことができる。
  • 上海市環境汚染防止条例では、基準を超える排出を行った船舶にRMB 1,000 以上RMB 10,000以下、重大な違反の場合はRMB 10,000 以上RMB 50,000以下を科すことができる。

 

サンプル検査の結果待ちによる運航の遅延防止のため、船舶は現地代理店に対し、違反に関する行政処分の解決権限を委任しなければならない。(25条)

 

5. 燃料油供給作業の管理

同ガイドラインは、上海MSA管内の現地 MSAに対し、各供給業者の燃料油品質検査報告の検査と保管を行い、簡易テスト、およびサンプル保管を要求している。(20条)