国際P&Iグループ Annual Review 2017/18
国際P&Iグループ(IG)のAnnual Review 2017/18が発行されました。
同Annual Reviewで紹介されている2017/18保険年度におけるIGをとりまく動向(KEY FACTS)とIG小委員会と作業部会の活動報告から制裁小委員会および自動運航船作業部会を抜粋して、以下のとおりご案内します。
- KEY FACTS
- IG加盟クラブの加入船舶の1隻あたりの平均トン数は、2014年以降19%増加、現在21,000 GT弱
- IG加盟クラブの現在の加入総トン数は、12億900万GT以上
- 世界の船舶数は、94,600隻超で、総計13億2200万 GT
- 西アフリカの海賊襲撃数は最多レベルを継続し、2018年に報告された事件の42%が同海域で発生
- 日本船主は、世界の造船発注トン数において最大シェアとなる18%を占める
- 海難残骸物の除去に関するナイロビ条約を7カ国が新たに批准、締約国は41カ国
- 2018年5月8日に米国はイランとのJCPOAからの一方的な離脱を表明
- 2008年から2018年までの全クレーム額の46%は、船骸撤去関連
- IG再保険プログラムには、世界のトップクラスの再保険会社25社中21社が参加
- 制裁小委員会
制裁措置の増加(特にイラン関連措置)は、IGクラブの保険カバーの提供に大きく影響し、また国際条約の補償機能をも揺るがしている。
IGは近年、英国、欧州、米国の規制当局に対し数々のロビー活動を行い、P&I保険の意義を説明しつつ、政府や規制当局によるクラブの保険カバー提供への干渉が、結果として被害者救済を阻害する要因となっていることを訴えてきた。
イラン制裁の結果として、合法的な航海であったにもかかわらず、クラブとその再保険者が十分にてん補できない大型クレームが2015年以来イラン海域と東シナ海で1件ずつ発生している。2018年5月に米国が包括的共同作業計画(JCPOA)からの一方的離脱宣言をしたことにより、クラブのてん補能力にさらなる悪影響が出る可能性があり、状況はEUのJCPOA維持努力と相まって非常に複雑化している。IGクラブの法令遵守はいうまでもないが、ある国の課す制裁措置を遵守することで別の規則違反を問われるような事態はIGとして容認できない。
イランに対する制裁措置が注目されているが、IGとしては北朝鮮、シリア、キューバに対する制裁措置を看過しているわけではない。たとえば、東シナ海での違法なship to ship transferに関する報告に注意を払っている。
IGは船主の賠償能力確保や被害者救済への影響が最小限になるよう政府や規制当局への働きかけを継続していく。
- 自動運航船作業部会
2020年はじめに、初の自動運航商業貨物船“Yara Birkeland”が進水予定。ノルウェーの国内で運航し、2022年までに徐々に完全自動運航に移行する計画である。海運関係者の多くは遠洋航海船の自動運航の実現性は中期的には低いと見ている。高度なシステム、センサー、人工知能を使用しなければならないからである。中短期的には海底地形調査等特定の目的、または“Yara Birkeland”のような限られた海域内での運航のために設計された小型船が自動運航すると見られる。
自動運航船作業部会は、自動運航船が現在のIG再保険プール協定の「船舶」の定義に含まれると結論付け、運航から生じる通常の責任および費用は、できるだけカバーの対象とする方向で検討している。なお、船級協会は独自またはIACS(国際船級協会連合)をとおして遠隔操作船や自動運航船の船級付与を検討しており、IMOも自動運航船の規制範囲に関する検討を開始した。
作業部会は、陸上から操船すること、陸上で行う商業上の運用、P&I保険の観点から広く船舶運航の関係などを区別するため「管理」「運航者」「運航」などの用語定義に関してプール協定を修正する必要性、また船員クレームに関連し陸上から操船する者と乗船する船員の区別を定義づける必要性についても認識している。さらに、人為的ミスによる従来の事故リスクが軽減する可能性がある一方で、船舶へのサイバー攻撃に対する脆弱性、海賊や貨物盗難の増加などの新たなリスク、それらの犯罪対策の難しさにも注目している。作業部会代表者はCMI(万国海法会)やIMOのMSC(海上安全委員会)およびLEG(法律委員会)とも協働して、自動運航船が円滑に導入されるよう、活動を行っている。
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