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イラン制裁緩和期間の延長について

2014/07/28 第14-007号
  • 外航

本回報は、イランからの石油化学製品及びNDAA免除国 [1] へのイラン産原油の輸送並びに保険提供に関するEU及び米国制裁措置の一時緩和についてご案内した2014年1月20日付特別回報 第13-022号及び2014年1月29日付特別回報 第13-024号と併せてお読み下さい。また、2014年7月22日付Japan P&I News No.675もご参照下さい。


これまでの経緯として、2013年11月24日に中国、フランス、ドイツ、ロシア、英国、米国の所謂P5+1はイランの核プログラムについてイランと合意に至り、共同行動計画(JointPlan of Action、JPoA)を発表し、同計画に基づき2014年1月20日から6か月間特定の輸送及び保険提供禁止措置の一時停止を実施しました。


時期

6か月の一時緩和期間は2014年7月20日に期限を迎えましたが、共同行動計画関係国が一定の条件を満たすことを前提に、制裁措置の一時緩和期間を2014年11月24日まで延長することが合意されました。米国は国務省及び財務省海外資産管理局を通じて FAQsガイダンスを発行しています。一方、EUは2014年7月21日にEU理事会決議 2014/480/CFSPを発行しましたが、実施規則であるEU理事会規則 2014/42/EUの改定は行われていないので、現行の同EU理事会規則がそのまま2014年11月24日まで延長されて適用されます。なお、共同行動計画の約束事項をイランが遵守しなかった場合には、一時緩和措置は撤廃され即座に制裁措置が再発動する可能性があることご留意下さい。


注意事項

制裁措置の一時緩和期間の延長について、以下の2点に特にご注意下さい。


(i)一時緩和期間

制裁措置の一時緩和期間の延長は、2014年11月24日までの一定期間であることにご注意下さい。一時緩和期間を利用して輸送契約を締結する場合、遅くとも2014年11月24日までに契約を完全に完了しなければなりません。


(ii)制裁対象団体との取引

米国及びEUが指定している制裁対象団体との取引は引き続き禁止されます [2]


保険カバーに対する実際の効果

2014年11月24日までの期間中の保険カバーに関して、米国とEUとで扱いが異なります。


米国

従前の国際P&Iグループ(IG)との協議を受け、米国国務省は今般以下の通り表明しました。


「一時緩和期間中に生じた事故の損害に対する保険金の支払いは、当該取引/活動が制裁一時緩和措置で規定された条件を満たし現在発効しているその他の制裁措置を遵守したものである限りにおいて、2014年11月24日以降も支払うことができる。保険及び再保険会社は疑義があれば直接米国政府に照会すべきである。米国人及び米国所有/管理の外国企業は、海外資産管理局が特別に承認しない限り、イランもしくは制裁対象団体への保険もしくは再保険サービスの提供に関与することは引き続き禁止される。」


上記より、IGの再保険契約を引き受けている米国再保険者は、引き続き再保険金の支払いが禁止されます。


保険契約規定 [3] では、制裁措置により再保険から回収できない責任及び損害をてん補除外としており、そのため組合員は保険カバーに支障が生じるリスクを負うことになりますのでご注意下さい。


EU

現時点でEUは米国のような表明を行っておらず、引き続きEU関係の保険者は2014年11月24日以降の保険金の支払いは禁止される可能性があります。


IGは欧州委員会に対して、制裁一時緩和期間中に生じた責任に対し一時緩和期間後の支払いを容認する規定が欠如していることについて懸念を表明しています。IGではEUも米国と同様の対応を折るよう欧州委員会に働きかけており、進展あり次第ご案内致します。


しかしながら、当該問題についてEUから明確な表明がないために、クラブの立場は以前と同様になります。


そのため、IG加盟全クラブは引き続き、再保険から回収できないリスクや2014年11月24日以降保険金の支払いができないリスクにより一時緩和期間中に生じたクレームに対する保険カバーに支障が生じるリスクがあることをご案内せざるを得ません。


また、一時緩和期間中であっても、銀行等がイランが関係する取引に関与することに極めて慎重になっていることから、クラブはイランが関係する取引から生じた事故に対して保証の提供を含め限定的な対応しかできない可能性があることにご留意下さい。


国際P&Iグループの全てのクラブが同様の内容の回報を発行しています。



[1] 米国国防授権法(National Defence and Authorization Act)では、イラン産原油の輸入量を大幅に削減した国に対して米国当局より適用免除が与えられます。最新の免除国リストは、インド、中国、日本、韓国、台湾、トルコに限定されています。

[3] 第36条(9)