ニュース

2006年海事労働条約(MLC)の発効

2013/03/06 第12-030号
  • 外航

背景


国際労働機関(ILO)は2006年2月23日にMLCを採択しました(http://www.ilo.org/global/standards/maritime-labour-convention/WCMS_090250/lang--en/index.htm)。
2012年8月20日に30か国目が批准したことで、MLCは2013年8月20日に発効することになります。2013年2月27日時点で35か国がMLCを批准しています。MLC批准国のリストは以下のウェブサイトでご覧頂けます。

http://www.ilo.org/dyn/normlex/en/f?p=1000:11300:0::NO::P11300_INSTRUMENT_ID:312331

MLCは船舶で働く船員のための包括的な権利保護を規定し、船上労働環境の最低基準を確立することを目的として、労働時間、健康/安全、居住設備、福祉及び契約手続きを含む広範囲にわたる事項を扱っています。MLCに規定される新たな労働基準は、過去80年の間に採択された海事分野に関する68以上の国際労働基準を統合し更新します。

MLCは条約締約国である旗国にDMLC(Declaration of Maritime LabourCompliance)を提出することを船主に義務付けています。旗国はDMLC受領後にMLC証書を発行し、MLC証書は船員がアクセスできる船上の目立つ場所に置いておく必要があります。

船員の送還及び死亡/後遺障害に関する金銭的保証


MLCでは、締約国に自国籍船の船員(註1)に対して以下の権利を確保することを義務付けています。


(a) 船主の破産(事実上の遺棄)の場合を含む送還及びそれに対する金銭的保証の手配
(b)国内法、船員の雇用契約、団体交渉協約に規定する職業上の負傷、疾病、障害による死亡もしくは後遺障害の補償及びそれに対する金銭的保証の手配

MLC締約国を旗国とする船舶は、上記(a)及び(b)の遵守のための金銭的保証が手配されていることの証書が必要となります。


さらに、MLCでは、船舶の滅失又は沈没による失業に対し、失業中の日数に応じ失業補償を船員に確保することを規定していますが、これに対する金銭的保証の手配は要求されていません。当該失業補償は2か月分の賃金を上限としています。


負傷/疾病の際の送還費用及び上記(b)のクレームは、船主破産の場合の送還費用を除き、基本的に既存の標準的なP&Iカバーの対象となっています。船主が上記金銭的保証要求を遵守できるよう、国際P&Iグループ(IG)加盟の全13クラブは、船員がMLCの下で送還される権利を有する船主破産の場合及びその他のMLCに規定される状況(MLCガイドラインB2.5.1に規定される状況)における送還費用をカバーすべく標準カバーの範囲を拡大することを決定しました。


クラブカバーの拡大に関する保険契約規定の変更は、2013年8月20日のMLC発効までになされます。


金銭的保証の証明


MLCには「金銭的保証」の形式について規定がありません。


MLCは、1992 CLC条約や2001 Bunker条約で求められているような「ブルーカード」を規定しておらず、金銭的保証の提供者に対する直接請求権も規定していません。しかしながら、各国はMLC実施に際して国内法で金銭的保証の形式を定めることができ、上記(a)及び(b)のクレームに対する金銭的保証要件を満たすための何らかの証書(例えば、適切な保険が付保されていることの証書)が要求される可能性があります。


IGはMLC締約各国とコンタクトし、船員に関する責任及び費用のカバーが付保されている場合、MLCの金銭的保証規定を遵守していることの証明として2013保険年度の更改に際して既に発行されている形式でのIGクラブ発行の保険契約承諾証を各国が受け入れるかどうか確認を始めています。


これまでコンタクトした国々は、船員に関する責任及び費用のカバーが付保されている場合にはMLC遵守の証明としてIGクラブ発行の保険契約承諾証で十分であるとしています。


IGはMLC締約各国との協議を続けており、MLC発効が近づきましたら進展をご案内致します。


国際P&Iグループのすべてのクラブが同様の内容の回章を発行しています。


1MLCにおける「船員」の定義は幅広く、「本条約が適用される船舶上に雇用され、何らかの作業に従事する者」とされている。