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欧州連合(EU)−海事クレームに対する船主の保険に関する指令 (Insurance Directive)

2010/01/13 第09-012号
  • 外航

首題に関し、2009年7月17日付P&I特別回報第09−004号「欧州連合(EU)−海上安全政策(Third Maritime Safety Package)について」をご参照下さい。同回報においてご案内致しましたとおり、Third Maritime Safety Package(通称エリカ・パッケージIII、以下、パッケージIII)は2009年6月7日に施行され、Directive (指令)として合意されたものについては加盟国で国内法化されてから、Regulation (規則)として合意されたものについては決められた適用日から効力を生じることになります。


Insurance Directive(以下、本Directive)はパッケージIIIを構成する8つのRegulation及びDirectiveのうちの一つで、国際P&Iグループ(以下、IG)に直接影響のあるものです。本Directiveは300総トン以上の船舶の所有者に対し、「1976年の海事債権についての責任の制限に関する条約を改正する1996年の議定書」(96LLMC)が対象とする海事債権に関し、96LLMCに定める船主責任限度額までカバーする保険を保持するよう義務付けています。本Directiveでは、EU内の各港に入港する船舶、もしくはEU加盟国に船籍を持つ船舶は、保険証書によってこの保険が付保されていることを証明しなければなりません。


IGが本件に関し、EU加盟国と打ち合わせたところ、当初より多くの国は、ポートステートコントロールを通じて本Directiveを執行し、300総トン以上の船舶に備え置かれた標準的なP&I保険の保険契約承諾証(certificate of entry)を、本Directiveが要求する保険の証明として認めることを表明しています。IGは他のEU加盟各国も同様の措置をとりEU域内で統一的にDirectiveが実施されるよう、各国政府と協議を続けています。


本Directiveは、保険者が発行する付保証明となる証書に以下の事項を記載しなければならないとしています。


(a)  船名、IMO 番号及び船籍港
(b) 船主の名称及びその主たる営業所の所在地
(c) 保険の種類と期間
(d) 保険者の名称及びその主たる営業所の所在地、または必要に応じ、保険契約が成立した場所

即ち、IG加盟の各P&Iクラブが発行する保険契約承諾証は、本Directive に適合すべく上述の事項が記載されるよう変更する必要があります。なお、上記の記載事項(b)に関連し、本Directive上、「船主」は「外航船舶の登録船主もしくは裸用船者等の本船の運航に責任を負う者」と定義されています。バンカー条約に基づき発行するBlueCardとの整合性を保つため、IG加盟の各P&Iクラブは、バンカー条約Blue Cardに記載している登録船主とその登録住所を保険契約承諾証に記載することに致しました。


EU加盟各国は、2012年1月1日までに、本Directiveを施行するのに必要な国内法、規則、手続規定を制定しなければなりません。IGはいくつかの加盟国が2010保険年度中に本Directiveを施行すると理解しています。この点を踏まえ、IG加盟各クラブは、本DirectiveのEU加盟国での施行日に間に合うよう、保険契約承諾証への必要な変更を早急に実施することとなります。当組合も、2010保険年度更改時より上記に基づき、外航船保険の全契約に関して保険契約承諾証に「船籍港」「船主の主たる営業所の所在地」を追加致します。


IGはEU加盟各国の正確な施行時期を把握するため、引き続き当局との連絡を続けます。


なお、国際P&Iグループの各クラブから同じ趣旨の回報が発行されています。