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欧州連合(EU)− 海事クレームに対する船主の保険に関する指令(“Insurance Directive”)(その2)

2011/12/15 第11-017号
  • 外航
題記の件に関し、2010年1月13日付特別回報第09-012号「欧州連合(EU)−海事クレームに対する船主の保険に関する指令(Insurance Directive)」をご参照下さい。

前回までの特別回報にて、EU加盟国は2012年1月1日までにInsurance Directive(以下、本Directive)を施行するのに必要な国内法、規則、手続規定を制定しなければならないことをご案内してきました。

本Directiveは、総トン数300トン以上の船舶の所有者に対し、「1976年の海事債権についての責任の制限に関する条約を改正する1996年議定書」(以下、96LLMC)が対象とする海事債権に関し、96LLMCに定める船主責任制限額までカバーする保険の付保を義務付けています。また、本Directiveの下、EU域内の港に入港する船舶、もしくはEU加盟国を旗国とする船舶は、この保険付保を保険証書によって証明しなければなりません。

本Directiveで言う「保険」は、「免責の有無を問わず、例えば国際P&Iグループ(以下、IG)加盟のP&Iクラブが現在提供している賠償責任保険、また、その他の効果的な形態の保険(証明された自家保険を含む)、また、同様の保険条件を提供する金銭的保証」と定義されています。

IGは、EU加盟各国と連絡を取り合い、寄港国及び旗国という二つの立場で、IGクラブが発行する保険契約承諾証(certificate of entry)を、本Directive遵守の証明として受け入れるかどうか確認作業を続けています。

本Directiveは、保険者が発行する付保証明となる証書に以下の情報を記載しなければならないとしています。
(a) 船名、IMO番号及び船籍港
(b) 船舶所有者の名称とその主たる営業所の所在地
(c) 保険の種類と保険期間
(d) 保険者の名称及びその主たる営業所の所在地、または必要に応じ、保険契約が成立した場所

上記の情報は、全てのIGクラブが発行する保険契約承諾証に既に記載されています。

大多数のEU加盟国は、総トン数300トン以上の船舶に備え置かれるIGクラブ発行の標準的な保険契約承諾証を、本Directiveで義務付けられる保険付保の証明として受け入れることを表明しています。従って、IGクラブ発行の保険契約承諾証の受け入れを表明しているEU加盟国に寄港するIGクラブに加入する船舶は、本Directive遵守のための金銭的保証の追加証明は必要ありません。

いくつかのEU加盟国は、本Directiveの施行期限である2012年1月1日までに、本Directiveに沿った国内法や関係諸規則の整備が間に合わず、その為に同年1月1日に本Directiveを施行させることが出来ないだろうとIGは理解しています。IGは、これらのEU加盟国と継続して協議を行い、当該国が期限内に自国の法整備を行なった他のEU加盟国と同様の措置を取り、全EU域内で統一的に本Directiveが実施されるように努めています。

なお、本Directive上、「船主」は「外航船舶の登録船主もしくは裸用船者等の本船の運航に責任を負う者」と定義されています。「2001年の燃料油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約」(以下、バンカー条約)に基づいて発行されるBlue Cardsとの整合性を保つため、IGクラブは、バンカー条約Blue Cardに記載されている登録船主とその登録住所を保険契約承諾証に記載することに致しました。

IGは、2012年1月1日の期限までに自国の法整備が間に合わないことが見込まれるEU加盟国と継続して連絡を取り、当該国が本Directiveを施行する正確な日程の確認を続ける予定です。

なお、国際P&Iグループのすべてのクラブが同様の内容の回章を発行しています。