中国の「船舶による海洋汚染防止及び管理規則」について
2009/12/07 第09-009号
- 外航
2009年9月9日、中華人民共和国(以下、中国)国務院は、「船舶による海洋汚染防止及び管理規則」(以下、本規則)を公布し、本規則は2010年3月1日に施行されます。本規則は、中国水域における油濁の防止、対応、及び清掃に関する包括的な法制度を確立する目的で制定されました。その内容につき、以下のとおりご案内申し上げます。
この回報では本規則の重要な条項をまとめております。国際P&Iグループ(IG)は中国海事局(MSA)が本規則の各条項を実施するための施行規則案を制定作業中であると理解しています。それらは、船主側に認可された油濁清掃業者との契約締結の義務及び油濁損害から生じる責任をカバーする保険もしくは金銭的保証の保持義務等を課しております。IGは、それらの点につき引き続きMSAと連絡をとり、必要に応じ追加の回報を発行する予定です。
概要
本規則は、油汚染物質の排出/受領、廃棄物の投棄/投棄の許可、油濁事故対応計画、油濁清掃作業の手配、汚染事故の報告/緊急対応、汚染事故の調査/補償、汚染危険貨物の積載/瀬取り/揚荷、本規則に違反したときの罰則等、広範囲にわたって規定しています。
本規則は更に全ての船舶(但し、油を貨物として積載しない1,000総トン以下の船舶は除かれます)に対して、油濁損害から生じる損害をカバーするための強制保険制度を中国法に導入するもので、バンカー条約(中国は2008年末に批准)及び92CLC条約(中国は1999年に批准)上の強制保険に関する規定を有効にするための必要な規定を定めています。また船舶による油濁損害を補償するための国内基金の創設についても規定し、中国向けに海上輸送された持続性油の受荷主(もしくはその代理人)が基金を拠出することを定めています。なお、中国は92 Fund条約の批准国ではありません。
MSAはこの規則を執行する当局として、船舶による海洋汚染の防止及び関連船舶の運航に関し、監督・管理を行うことになります。北京のMSAが総括的責任を負い、地方のMSAは各地方において、所定の権限を有することになります。
適用範囲
本規則は、中国の内水、領海、接続水域、排他的経済水域、大陸棚およびその他全ての中国の裁判管轄下の海域において汚染損害を引き起こす、もしくは引き起こす可能性のある、船舶からの汚染並びに船舶のオペレーションをその適用対象としています。
認可清掃業者との契約が要求されます
本規則は、汚染危険貨物をばら積で輸送する船舶と10,000総トンを超えるその他全ての船舶のオペレーターに、中国に入港する前にMSAが認可する油濁清掃業者と契約を結んでおくことを要求しています。オペレーターの定義が本規則にはなく、IGはこの点をMSAに確認中です。
IGの理解では、これらの清掃業者は事故の際にMSAの監督の下、清掃作業を実施する責任を負い、清掃業者のみでは対応できない場合にMSAが介入することになります。中国の各港にはそれぞれ1社以上の清掃業者がいるものと思われます。
MSAは現在、多くの港で清掃業者の承認作業を行っており、近い将来、さらに細目規定が発表される予定です。その細目規定で、オペレーターが結ぶべき清掃契約の内容とMSAが承認する清掃業者が規定されるものと思われます。IGはこの点に関しMSAと協議しており、詳細につき判明次第、追ってご案内申し上げます。
IGでは、清掃業者には流出量の規模や範囲により汚染対応の能力別に4つのレベルがあると理解しています。今後公表される追加の規則で、船種や本船の大きさによってオペレーターが契約しなければならない清掃業者がどのレベルであるかが明らかになると思われます。
MSAは清掃業者より承認の申請を受けた日から30営業日以内に審査を完了することになっていますが、オペレーターが契約締結を求められる2010年3月1日まで時間的余裕がありません。IGは本規則の規定する施行日が延期されるのではないかと考えていますが、もし延期されなかった場合、メンバーは2010年3月1日までに本規則を遵守するための手続きを行わなければならなくなります。
通常、本規則違反に対しては、一つの違反に対し10,000人民元から300,000人民元の罰金が課されます。
清掃費用
事故の際に発生した費用に対する補償について、本規則は政府により手配された対応の費用に優先権を与えています。 MSAの対応を要する事故を起こした船舶は、次の航海を始める前にMSAにその費用を支払うか、相当の金銭的保証状を差し入れる必要があります。差し入れるべき保証状の様式(例えば、IGクラブのL/Gか地元の保険者/中国の銀行の保証状など)は、いまのところ明らかではありません。本規則は更にMSAが事故に関する調査を行っている間、本船を拘留することができると規定しています。
本船上の緊急対応計画
船主、オペレーターもしくは船舶管理者は、海洋汚染の予防、管理のための緊急対応計画を保持しなければなりません。この点につきましては、MARPOL の油濁防止緊急措置手引書(SOPEP: ShipboardOil Pollution Emergency Plan)が要求を満たすと理解しています。
保険および賠償責任
中国は92CLCおよびバンカー条約の締約国です。本規則の責任に関する条項は、これらの条約の責任条項に概ね従ったものであり、持続性油の輸送により生じた汚染損害に対する船主注1の厳格責任(92CLC)および燃料油の流出により生じた汚染損害に対する船主注2の厳格責任(バンカー条約)を定めています。
注1本船の所有者として登録されている者又は、登録がない場合には、船舶を所有する者。
注2登録船主、裸用船者、船舶管理人、オペレーターを含む。
油以外の貨物を運ぶ1,000総トン以下の船舶を除き、中国領海内を航行する全ての船舶は中国海商法もしくは本船に適用される92CLCおよびバンカー条約の要求する保険カバーもしくはその他の金銭的保証を保持しなければなりません。
2007年以降行われている認可保険業者承認の手続きとほぼ同様の方法で、MSAは、要求される保険カバーを提供できる保険者のリストを作成して、公表することとなっています。
報告
中国の領海内あるいは領海外で中国の裁判管轄の及ぶ海域での事故により汚染損害が生じた/生じる可能性がある場合は、地元のMSAに報告しなければなりません。事故報告には以下の情報が含まれていなければなりません。
1、船名、船籍国、コールサイン/番号
2、船主、オペレーターもしくは船舶管理者の名称と住所
3、事故の時刻、場所、事故時の気象、海象
4、事故原因(報告時点の情報で)
5、本船に積載した汚染物質の種類、量、積付、場所
6、汚染の程度
7、汚染防止、採用したまたは採用すべき廃棄方法、さらに汚染管理の状況やサルベージの必要性
8、その他必要な情報
IGは、本規則の実施、本規則の各条項を実施するための施行規則の制定状況を引き続き監視し、MSAとの折衝を継続致します。組合員の皆様にも、必要に応じ適宜情報を提供致します。
国際P&Iグループの全てのクラブが同様の内容の回章を発行しています。
この回報では本規則の重要な条項をまとめております。国際P&Iグループ(IG)は中国海事局(MSA)が本規則の各条項を実施するための施行規則案を制定作業中であると理解しています。それらは、船主側に認可された油濁清掃業者との契約締結の義務及び油濁損害から生じる責任をカバーする保険もしくは金銭的保証の保持義務等を課しております。IGは、それらの点につき引き続きMSAと連絡をとり、必要に応じ追加の回報を発行する予定です。
概要
本規則は、油汚染物質の排出/受領、廃棄物の投棄/投棄の許可、油濁事故対応計画、油濁清掃作業の手配、汚染事故の報告/緊急対応、汚染事故の調査/補償、汚染危険貨物の積載/瀬取り/揚荷、本規則に違反したときの罰則等、広範囲にわたって規定しています。
本規則は更に全ての船舶(但し、油を貨物として積載しない1,000総トン以下の船舶は除かれます)に対して、油濁損害から生じる損害をカバーするための強制保険制度を中国法に導入するもので、バンカー条約(中国は2008年末に批准)及び92CLC条約(中国は1999年に批准)上の強制保険に関する規定を有効にするための必要な規定を定めています。また船舶による油濁損害を補償するための国内基金の創設についても規定し、中国向けに海上輸送された持続性油の受荷主(もしくはその代理人)が基金を拠出することを定めています。なお、中国は92 Fund条約の批准国ではありません。
MSAはこの規則を執行する当局として、船舶による海洋汚染の防止及び関連船舶の運航に関し、監督・管理を行うことになります。北京のMSAが総括的責任を負い、地方のMSAは各地方において、所定の権限を有することになります。
適用範囲
本規則は、中国の内水、領海、接続水域、排他的経済水域、大陸棚およびその他全ての中国の裁判管轄下の海域において汚染損害を引き起こす、もしくは引き起こす可能性のある、船舶からの汚染並びに船舶のオペレーションをその適用対象としています。
認可清掃業者との契約が要求されます
本規則は、汚染危険貨物をばら積で輸送する船舶と10,000総トンを超えるその他全ての船舶のオペレーターに、中国に入港する前にMSAが認可する油濁清掃業者と契約を結んでおくことを要求しています。オペレーターの定義が本規則にはなく、IGはこの点をMSAに確認中です。
IGの理解では、これらの清掃業者は事故の際にMSAの監督の下、清掃作業を実施する責任を負い、清掃業者のみでは対応できない場合にMSAが介入することになります。中国の各港にはそれぞれ1社以上の清掃業者がいるものと思われます。
MSAは現在、多くの港で清掃業者の承認作業を行っており、近い将来、さらに細目規定が発表される予定です。その細目規定で、オペレーターが結ぶべき清掃契約の内容とMSAが承認する清掃業者が規定されるものと思われます。IGはこの点に関しMSAと協議しており、詳細につき判明次第、追ってご案内申し上げます。
IGでは、清掃業者には流出量の規模や範囲により汚染対応の能力別に4つのレベルがあると理解しています。今後公表される追加の規則で、船種や本船の大きさによってオペレーターが契約しなければならない清掃業者がどのレベルであるかが明らかになると思われます。
MSAは清掃業者より承認の申請を受けた日から30営業日以内に審査を完了することになっていますが、オペレーターが契約締結を求められる2010年3月1日まで時間的余裕がありません。IGは本規則の規定する施行日が延期されるのではないかと考えていますが、もし延期されなかった場合、メンバーは2010年3月1日までに本規則を遵守するための手続きを行わなければならなくなります。
通常、本規則違反に対しては、一つの違反に対し10,000人民元から300,000人民元の罰金が課されます。
清掃費用
事故の際に発生した費用に対する補償について、本規則は政府により手配された対応の費用に優先権を与えています。 MSAの対応を要する事故を起こした船舶は、次の航海を始める前にMSAにその費用を支払うか、相当の金銭的保証状を差し入れる必要があります。差し入れるべき保証状の様式(例えば、IGクラブのL/Gか地元の保険者/中国の銀行の保証状など)は、いまのところ明らかではありません。本規則は更にMSAが事故に関する調査を行っている間、本船を拘留することができると規定しています。
本船上の緊急対応計画
船主、オペレーターもしくは船舶管理者は、海洋汚染の予防、管理のための緊急対応計画を保持しなければなりません。この点につきましては、MARPOL の油濁防止緊急措置手引書(SOPEP: ShipboardOil Pollution Emergency Plan)が要求を満たすと理解しています。
保険および賠償責任
中国は92CLCおよびバンカー条約の締約国です。本規則の責任に関する条項は、これらの条約の責任条項に概ね従ったものであり、持続性油の輸送により生じた汚染損害に対する船主注1の厳格責任(92CLC)および燃料油の流出により生じた汚染損害に対する船主注2の厳格責任(バンカー条約)を定めています。
注1本船の所有者として登録されている者又は、登録がない場合には、船舶を所有する者。
注2登録船主、裸用船者、船舶管理人、オペレーターを含む。
油以外の貨物を運ぶ1,000総トン以下の船舶を除き、中国領海内を航行する全ての船舶は中国海商法もしくは本船に適用される92CLCおよびバンカー条約の要求する保険カバーもしくはその他の金銭的保証を保持しなければなりません。
2007年以降行われている認可保険業者承認の手続きとほぼ同様の方法で、MSAは、要求される保険カバーを提供できる保険者のリストを作成して、公表することとなっています。
報告
中国の領海内あるいは領海外で中国の裁判管轄の及ぶ海域での事故により汚染損害が生じた/生じる可能性がある場合は、地元のMSAに報告しなければなりません。事故報告には以下の情報が含まれていなければなりません。
1、船名、船籍国、コールサイン/番号
2、船主、オペレーターもしくは船舶管理者の名称と住所
3、事故の時刻、場所、事故時の気象、海象
4、事故原因(報告時点の情報で)
5、本船に積載した汚染物質の種類、量、積付、場所
6、汚染の程度
7、汚染防止、採用したまたは採用すべき廃棄方法、さらに汚染管理の状況やサルベージの必要性
8、その他必要な情報
IGは、本規則の実施、本規則の各条項を実施するための施行規則の制定状況を引き続き監視し、MSAとの折衝を継続致します。組合員の皆様にも、必要に応じ適宜情報を提供致します。
国際P&Iグループの全てのクラブが同様の内容の回章を発行しています。