再修正版 「1976年の海事債権についての責任の制限に関する条約を改正する1996年の議定書」の発効について
2004/03/12 第03-021号
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この程、1976年の海事債権についての責任の制限に関する条約(76LLMC)を改正する1996年の議定書(96LLMC)が、マルタが去る2月13日付で同議定書に関する受諾書を寄託したため、その発効要件(10カ国が批准した日から90日後に発効)を満たし、本年5月13日に発効することとなりました。標記件に関する弊組合P&I特別回報第96-005号(1996年6月10日付)ご参照。
日本は同条約を未批准ですが、2004年5月13日議定書発効時の批准国は以下10カ国です。オーストラリア、デンマーク、フィンランド、ドイツ、マルタ、ノルウェー、ロシア、シエラレオネ、トンガ、イギリス。
96LLMCの主な目的は76LLMC責任制限額の大幅引き上げ(約2~2.4倍)でありますが、同条約における責任制限額は次のとおりになります。
また、条約等の迅速な改正・発効手続きを目的とする簡易手続方式(tacit acceptance方式)が導入された結果、責任制限額改正に関して、76LLMCでは責任制限額の実質価値に大きな変動がない限り認められなかった改正が、96LLMCでは国際海事機関(IMO)の法律委員会(Legal Committee)の採択があれば、締結国による改正批准手続きを経ずして必要に応じて責任制限額が増額修正できるようになりました。」(注:同修正実施には細かい必要条件があります。
96LLMC | 76LLMC |
(1)死亡、傷害に関する責任 |
(1)死亡、傷害に関する責任 |
a)2,000トン以下の船舶 : 200万SDR | a)500トン以下の船舶 : 333,000SDR |
b)2,000トン超の船舶 : 2,000トンを超える部分について次の方法で計算して得た額を200万SDRに加算した額 | b)500トン超の船舶 : 500トンを超える部分について次の方法で計算して得た額を333,000SDRに加算した額 |
・2,001~30,000トンの部分 : 1トン当たり 800SDR |
・501~3,000トンの部分 : 1トン当たり500SDR |
・30,001~70,000トンの部分: 1トン当たり 600SDR |
・3,001~30,000トンの部分: 1トン当たり 333SDR |
・70,000トンを超える部分: 1トン当たり 400SDR |
・30,001~70,000トンの部分: 1トン当たり 250SDR |
・70,000トンを超える部分: 1トン当たり 167SDR |
|
(2)(1)、(3)以外に関する責任 | (2)(1)、(3)以外に関する責任 |
a)2,000トン以下の船舶 : 100万SDR | a)500トン以下の船舶 : 167,000SDR |
b)2,000トン超の船舶 : 2,000トンを超える部分について次の方法で計算して得た額を100万SDRに加算した額 | b)500トン超の船舶 : 500トンを超える部分について次の方法で計算して得た額を167,000SDRに加算した額 |
・2,001~30,000トンの部分 : 1トン当たり 400SDR |
・501~30,000トンの部分 : 1トン当たり 167SDR |
・30,001~70,000トンの部分 : 1トン当たり 300SDR |
・30,001~70,000トンの部分 : 1トン当たり 125SDR |
・70,000トンを超える部分: 1トン当たり 200SDR |
・70,000トンを超える部分 : 1トン当たり 83SDR |
(3)船客の死亡、傷害に関する責任 船客の定員数 × 175,000SDR |
(3)船客の死亡、傷害に関する責任 船客の定員数 × 46,666SDR 但し、最高2,500万SDRまで。 |
注:(1)の責任制限額が(1)の債権を完済するのに不十分な場合、弁済されていない(1)の債権は(2)の責任制限額を(2)の債権と同一順位で弁済に充てることができる。
(参考: 2004年3月11日現在 1SDR≒ 162.13≒US$ 1.47)
まだ未発効ではありますが、「バンカー条約」や「HNS 条約」、「アテネ条約2002年議定書」などの船主の責任を大幅に加重する条約、議定書が次々と採択されております。
当組合ではそれらの今後の動きを逐次ご案内する予定ですが、船主の皆様におかれましても、このような条約、議定書の動向にご留意いただきますようお願い申し上げます。
添付 : グラフ 「76LLMC、96LLMCの責任制限額の比較」