1992FC(国際基金条約)に対する追加基金制度創設の件
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3rd Tier成立後、被害者が受ける最大の補償額(140,000トンを超える船型の場合)
1992CLC 最大 89.77 百万SDR(2003年11月1日以降)下記添付1.a)ご参照
1992FC 最大 203.00 〃〃 〃〃 下記添付1.b)ご参照
追加基金 最大 547.00 〃〃
計 最大 750.00 〃〃 (約1,200億円、@1SDR=165円)
この追加補償基金は、1992FCでは十分な補償を受けられない油濁事故の被害者に対し、補償を行います。上記のとおり、追加基金による補償額は、1992CLC/1992FCに基づき支払われた金額と合わせ750百万SDRを超えない額となります。
※1992CLC(油による汚染被害についての民事責任に関する条約)、1992FC(油による汚染
被害の補償のための国際基金設立に関する条約) -
基金分担金に対する上限額(Capping)
経過措置により一締約国による合計各年拠出金の上限は、各拠出金総額の20%以内となります。ただし同経過措置は、全締約国の総拠出油量が1,000百万トンに達するか、又は本議定書発行後10年間の何れか早い時点をもって終了します。 -
発効要件
1992FC批准国のうちの8ヶ国以上が批准し、かつ年間合計拠出油量が450百万トンに達してから3ヶ月後に発効します。なお、1992FCの締約国のみが本議定書の締約国になることができます。 - 本議定書採択の背景と今後の批准の見通しについて
1)CLC/FC補償制度拡充への動き
1969CLC/1971FCを発展継承する形で1996年に発効した1992CLC/FCは、その後1997年の“Nakhodka”号事故、1999年の“Erika”号事故を契機に、さらに充実した補償内容が望まれるようになりました。その結果、2000年10月開催の第82回IMO(国際海事機関)法律委員会において、1992CLC/FCの責任制限額/補償限度額の約50%引き上げが決定し、一連の手続きを経て2003年11月1日より発効することとなりました(詳細添付別紙1.ご参照)。しかし、欧州諸国を中心として同50%の引き上げではなお不十分とする声が強く、この度の3rd Tier創設に至ったものです。
2)3rd Tier条約発効の見通し
今般の議定書採択に際しては、補償額の上限については、OPA90(Oil Pollution ACT of 1990:1990年米国油濁法)の1,000百万ドル(約1,200億円)並みとなる一方、一部の国が過大な拠出金負担を強いられる事態を回避できるいわゆる“Capping”(上記2.ご参照)の導入も認められたことから、批准手続きが順調に進むことも考えられます。事実一部には、3rd Tierの発効は早ければ来年にも実現するとの見方をする向きもあります。
3)今後の影響
2002年10月にスペイン沖で発生した“Prestige”号の油濁事故被害総額は、1,000百万Euro (ほぼ820百万SDR)を超えると予想されますが、今回の3rdTierを含む新補償体制下では、 このような大規模油濁事故が発生した場合には、荷主等の拠出額が船主の負担する責任限度額を大幅に上回ることになります。一定期間内にこの不均衡を是正するため、国際P&Iグループは、3rd Tier発効と同時に、全世界のタンカーの約4分の3を占める約30,000G/T未満の小型タンカーに関し、CLC上の責任制限額を自発的に一事故当り20百万SDRまで引き上げる自主協定を導入することを提案しており(当組合は2002年6月理事会において本自主協定を原則支持する旨を決議している)、3rd Tier発効は独り荷主の潜在的負担を増大させるだけでなく、タンカー船主の負担をも増大させることが予想されます。
またCLC/FCに止まらず、船主の損害賠償責任を一段と加重する1996LLMC条約(1976年の 海事債権についての責任の制限に関する条約を改正する1996年の議定書)、HNS条約(危険及び有害物質の船舶による海上輸送に伴う損害についての責任並びに賠償及び補償に関する国際条約)、Bunker条約(燃料油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約)、アテネ条約(1974年の旅客及び手荷物の海上輸送に関するアテネ条約の1990年改定議定書及び2002年改定議定書)等の諸条約が成立しており、将来的に船主は一段と厳しい環境に晒されるものと思われますが、当組合は国際P&Iグループの一員として船主の利益を適切に確保すべく努めてまいりたいと存じます。
資料添付: 1.2002年12月31日時点拠出油量上位10ヶ国・1992CLC及び1992FCによる補償額の増額
2.最大補償額グラフ
3.2003年追加基金補償条約抄訳