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アテネ条約改定議定書について

2003/04/07 第03-001号
  • 外航
2002年10月21日から11月1日までの間ロンドンで開催された外交会議で、「1974年の旅客およびその手荷物の海上輸送に関するアテネ条約」(アテネ条約)の改定議定書(2002年改定議定書)が採択されました。


アテネ条約は国際運送における船客とその手荷物の損害に対する運送人の責任を規定する条約で、1974年12月13日に採択され1987年4月28日に発効しています。1990年3月20日に船主責任制限額の引上げを含む改定議定書(1990年改定議定書)が採択されましたが、これは未発効です。(アテネ条約締約国及び1990年改定議定書批准国については(注)1、2をご参照下さい。なお日本はアテネ条約及び関連改定議定書を批准していません。)


今回の改定は、国際海事機関(「IMO」)の法律委員会が1996年10月以降検討してきた船客の債権に対する金銭的保証提供の問題が、アテネ条約の改定という形で決着したものですが、乗客1人/1事故当り責任制限額の40万SDRへの引上げに加え、海難事故による旅客の死傷損害に対する厳格責任(無過失責任)、保険者への直接請求を伴う強制保険の導入等、全体として船主と保険者に対応困難な責任を課しており、実施上大きい問題が残りました。


国際P&IグループはIMOの法律委員会及び外交会議に対し、民間保険市場が対応できる範囲の現実的改定とすべきことを終始一貫具申しましたが、受入れられませんでした。


2002年改定議定書の発効の目処は未だ立っていないため、当面その影響はありませんが、将来発効の見込みが強まれば、客船に対するP&I保険のカバーの制限問題が再浮上する事態も予想されます。


ご参考までにアテネ条約と2002年改定議定書の要点新旧対比表を添付します。


(注)

1.アテネ条約締約国:
アルゼンチン、バハマ、バルバドス、ベルギー、中国、クロアチア、ドミニカ、エジプト、赤道ギニア、エストニア、グルジア、ギリシャ、ガイアナ、アイルランド、ヨルダン、ラトビア、リベリア、ルクセンブルグ、マラウイ、マーシャル諸島、ポーランド、ロシア、スペイン、スイス、トンガ、ウクライナ、イギリス、バヌアツ、イエメン、香港
2.1990年改定議定書(未発効)批准国:クロアチア、エジプト、スペイン

(添付)アテネ条約要点新旧対比表