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タンカー船主のCLC条約 (油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約) 上の責任とテロリズムの関係について

2002/02/05 第01-014号
  • 外航
当組合理事会は2001年11月1日に保険契約規定を改定し、2002年2月 20日から開始する新保険年度からはテロリズムによる損害を当組合のてん補対象から除外することと致しました(2001年11月14日付P&I特別回報第01-008号ご参照)。これに関連し、CLC条約/油濁損害賠償保障法(以下両者まとめてCLCという)の対象となるタンカー船主の方々より、CLCに関連する当組合のてん補はどのようになるのかとのお問い合わせを頂戴致しました。以下にご説明申し上げます通り、当組合は諸規定を整備し、必要に応じ外航タンカーにおける船舶戦争保険(船主責任)と組み合わせることによって、2002年 2月20日以降もCLCに関連するてん補の取扱いについては実質上従来と変りなく対応可能ですのでこの旨ご案内申し上げます。


1.お問い合せの主旨:
1)テロリズムによりタンカー船主が第三者に与えたCLC上の損害・費用はてん補されるのか?
2)テロリズムによりタンカー船主が支出したCLC上の清掃費等はてん補されるのか?

   
2."CLC船主責任(テロリズム行為等)特別条項"の整備:
当組合は添付別紙の"CLC船主責任(テロリズム行為等)特別条項"(以下特別条項という)を用意致しております。上記1.のお問い合せに沿ってご説明申し上げると以下の通りです。

  
1)テロリズムにより船主が第三者に与えたCLC上の損害・費用について:
当組合はCLC対象タンカーに関し、その保障契約者として、被害を蒙った第三者から直接損害賠償請求を受ける立場にありますが、これにつきましては当組合は2002年2月20日以降も従来と同様にCLC上の賠償責任を負います。添付特別条項第1条は、当組合に当該賠償責任がある旨を定めております。
2)テロリズムによりタンカー船主が支出したCLC上の清掃費等について:
テロリズムによるCLC事故の場合にタンカー船主が負担した清掃費等のCLC上の費用は、添付特別条項第2条により従来と同様に当組合がてん補致します。ただし、外航タンカーの場合には、同条第1項に示すとおり、先ずタンカー船主が付保している若しくは付保すべきであった船舶戦争保険(船主責任)に求償願い、若しくは求償願ったものとし、それを超える金額につき最大2億ドルを限度として当組合がてん補致します。なお、従来同てん補額は最大1億ドルでしたが(2001年9月26日付特別回報第01-005号および2001年10 月16日付同第01-007号ご参照)、2002年2月20日以降は2億ドルが上限となります。

   
3.ご参考:
テロリズムによるCLC上の油濁事故については、多くの場合CLCの「敵対行為、内乱、暴動」若しくは「損害をもたらすことを意図した第三者の作為または不作為」等の免責事由に該当してタンカー船主の損害賠償義務は免除されるものと思われますが、過失責任を原則とする通常の不法行為と異なり、CLCはタンカー船主の無過失責任を原則としている関係上、船主の免責が認められない可能性も否定できません。テロリズムによるCLC上の油濁事故について万一タンカー船主の免責が認められなかった場合には、当組合がそのリスクを負担させて頂くことは上記2.のとおりです。

なおCLC事故に関するてん補問題とは離れて、今回の理事会決定について次のとおり補足させていただきます。従来から当組合は「戦争、内乱、革命、暴動、反乱、政治または社会騒じょう等」の事態による場合に加え、「戦争兵器使用による事故」により生じた責任および費用も不担保とさせて頂いておりました(保険契約規定第35条第1項第2号イおよびハ)。一般的に見てテロリズム行為の大半は「戦争兵器使用による事故」に該当すると想定できるとすると、この種のテロリズム行為による事故は従来から不担保とさせていただいていたこととなります。2001年11月1日に当組合理事会が新たに不担保としたのは「戦争兵器使用による事故」ではないテロリズム事故、即ち「戦争兵器を用いないテロリズム」事故ですが、これは2001年9月 11日米国同時多発テロが戦争兵器を用いず単にナイフと民間航空機のみを用いたテロであったこと、これを契機として世界の再保険分野の引受け体制が大きく変動したことを受けた措置であり、従来の不担保範囲を大きく拡大するものではありませんので、この旨宜しくご理解賜りますようお願い申し上げます。


[添付別紙]

CLC船主責任(テロリズム行為等)特別条項

第1条(保証者としての第三者に対する責任)
組合は、保険契約規定第35条第1項第2号イのテロリズム行為並びにロ及びハに定める除外事由がある場合において、油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約(以下「CLC」という。)又は油濁損害賠償保障法その他CLCを国内法化した各国の国内法(以下「CLC国内法」という。)に基づく第三者の直接請求に対しては、CLC又はCLC国内法が認める船舶所有者及び保証者の免責事由以外の抗弁をすることなく、保証者としての責任を履行する。

  
第2条(組合員が負担した責任及び費用)
前条の場合において、CLC又はCLC国内法に基づき組合員が負担した責任及び費用の取扱いについては、次の各号による。
(1)保険金額の定めのない保険契約を締結している加入船舶については、実際に船舶戦争保険が付保されているか否かにかかわらず、ロンドン保険業者協会制定の「協会戦争、ストライキ約款、船体−期間建」又はこれと同等以上のてん補範囲を有すると組合が認める船舶戦争保険(船主責任)の保険金額又は保険契約規定第35条第2項第2号に規定された当該船舶の適正な保険価額のいずれか高い金額を免責金額とし、同額を超える損害又は費用について、米貨2億ドル又は組合が都度別途定める金額を限度としててん補する。
当該船舶の価額が米貨1億ドルを上回る場合で、船舶戦争保険(船主責任)の保険金額が米貨1億ドル以下でしか手当できない場合には、米貨1億ドルを超える損害又は費用について、米貨2億ドル又は組合が都度別途定める金額を限度としててん補する。
(2)保険金額の定めのある保険契約を締結している加入船舶については、当該船舶の保険金額を限度にてん補する。