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鋼材貨物のベンチレーション – 錆クレームの防止

2005/07/06 No.524
  • 外航
アメリカ・New Orleansの法律事務所Murphy, Rogers, Sloss & Gambelを通じ、サーベイヤーTechnicalMaritime Associates, Inc.より、アメリカにおける鋼材貨物クレームの最近の傾向及び結露対策のためのベンチレーションの実施についての助言を受領しました。アメリカ合衆国では結露に伴う鋼材クレームの増加が問題となっているようです。当組合の試訳とともに、同事務所からのメッセージをご参考に供します。

<試 訳>

鋼材貨物クレーム/ベンチレーションの実施


輸送中の不適切なベンチレーションによって発生した結露による、鋼材貨物の損害が増加しております。ほとんどの船長及び一等航海士は航海中、貨物に通気することの重要性を承知していることでしょう。しかし、鋼材に適切な通気をするための特定の要件を知らない航海士が増えているようです。

多くの場合、船長/一等航海士は、鋼材貨物は天候が良ければできるだけベンチレーションすべきと考えています。この実務では、その時の湿気の状態、露点、および気温が考慮されておりません。このように露点や相対湿度への適切な配慮なくベンチレーションが行われると、多くの場合、貨物や船体に結露ができてしまい、それが重大な貨物クレームにつながります。

鋼材の結露に関するクレーム(特にアメリカ合衆国に輸送されたもの)は、防訴に相当の費用と時間を要します。アメリカにおいては、ここ2年間ほどは鋼材に対する中国における需要の影響と、内需拡大による国内価格の高騰により良好な損品市場が出現し、総じて高額な貨物クレームの発生はおさえられておりました。しかしながら現在、アメリカにおける鋼材の価格と需要は低下傾向にあります。鋼材の価格が下落するにつれ、需要の低下と損品市場の低迷により、高額な鋼材クレーム発生の可能性は増加します。

船舶所有者は、船長や一等航海士が鋼材貨物のベンチレーションが必要かどうか適切に判断する方法を認識しているかどうか確かめるべきでしょう。鋼材が積まれたカーゴホールドを換気するかどうかを判断するには、外気の露点とホールド内の露点とを比較すべきです。船舶所有者は湿度計(露点や相対湿度を測定するのに用いられる、湿球と乾球の温度計から成る器具)が船に装備されているのを確認してください。さらに、ホールド内の露点を測定するために、安価な携帯用の乾湿球計を各ホールド内に配備すべきです。また、ホールド内の露点を測定するには吊り下げ式乾湿球湿度計を利用するのも良いでしょう。

ベンチレーションに関する、露点についての基本的なルールは以下のとおりです。

・ホールド内の空気の露点が外気の露点より低い場合、換気を行ってはいけない。
・ホールド内の空気の露点が外気の露点より高ければ、換気を行うべきである。

特に貨物が冷地で積み込まれ、温暖な揚地に向かう時は、該貨の表面温度によく注意すべきです。航海中、鋼材の表面温度を正確に測定することは、高価な熱電対を使用せずには難しいことが多いのですが、鋼材の温度は当該航海中にゆっくり上昇することに注意してください。鋼材貨物が寒冷地域(バルティック海やロシア、ウクライナの港など)で積み込まれ、それより暖かい地域(米国メキシコ湾や南米など)へ向け輸送される場合は、ベンチレーションの必要はほとんどなく、暖かい外気がホールド内に入らないよう確実に対策を取るべきです。この暖気がホールド内に入ってしまうと、それと比較して冷たい鋼材の表面には結露ができてしまいます。

概して、寒いところで積み込まれ、それより暖かいところに輸送される貨物に通気すべきではありません。逆に、暖かいところで積み込まれて、より寒いところに輸送される貨物には通気すべきです。

ベンチレーション・ログの作成に当たっては、輸送している鋼材貨物の温度、露点、湿度、および当時の気象条件が常に明確にわかりやすく記録されることが不可欠です。また、結露によってビルジレベルがいかに増加したかを記録しておくため、適切なビルジ測定ログを整備しておくべきです。そのような記録の恩恵なくして、錆損害に関連する結露クレームに対し、船主の利益を守るのは困難です。

社船を鋼材輸送に使用する意向のある船舶所有者は、潜在的な結露によるクレームの可能性に留意して、航海中、船長と航海士が結露を防ぐ適切な方法を取れるよう対策すべきです。

Technical Marine Associates, Inc.
Brian S. Jones