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豪州向け鋼材の輸送−運送人の堪航性保持義務

2006/10/13 No.536
  • 外航
オーストラリアのコレポン Holman Fenwick & Willanからの情報より

先日、日本積み豪州揚げ鋼材の発錆クレームにつき、豪州連邦裁判所の判決が下り ました。メルボルンのコレポン Holman Fenwick & Willan より、本件に関するレポートを受領しましたので抄訳とともに添付いたします。

本件は、日本積み豪州揚げ鋼材がホールド内の結露のため錆を生じたというもので、豪州連邦裁判所は運送人有責との判決を下しました。理由は、結露を防ぐために本船のホールド内に除湿装置を取り付けることが可能であったにもかかわらず運送人はそれをせず、本船の堪航(貨)性保持のための相当な注意を怠ったというものです。船主側は本判決を不服とし、控訴しております。続報を入手次第、ご連絡申し上げます。豪州向けの鋼材輸送におかれましては、本ニュースを参考に結露対策に一層ご留意されるようお勧め申し上げます。

<試訳>

堪航性と鋼材輸送−豪州判決は鋼材運送人の義務を加重


〔はじめに〕
日本積み豪州揚げ鋼材(コイル)が、ホールド内の結露のため錆を生じた件で、豪州連邦裁判所は運送人有責と判決を下した。裁判所の判断は、本船に除湿装置を取り付けることが可能であったにもかかわらず運送人はそれをせず、本船の堪航性保持のための相当な注意を怠り、ホールドを鋼材(コイル)の輸送と保護のために安全で適した状態に保たなかったというものである。

〔事故の背景〕
船橋で製造されたスチールコイルは、2隻の一般貨物船(シングルホールド、フォールディングタイプハッチカバー、ツインデッキ)にて豪州向けに輸送された。荷主側の船積み責任者は、過去にもこれら2隻を使って鋼材輸送を行ったことがあった。しかしながら、本件で船積みされたタイプのコイルを北半球が冬の時期に南半球に輸送するのは、初めてのことであった。

問題のコイルは亜鉛メッキを施されたものもあれば、Aluzincでコーティングされたものもあった。これらのコイルが水に濡れたり結露したりすると、白色の錆が現れる。錆の発生はクロム酸塩でコーティングすることにより防止できるが、受荷主側の意向により、コーティングはなされなかった。そのかわり軽油を塗布したが、これはごく短期間しか防錆に効果を発揮しない処置である。

船積みに先立って、コイルはプラスチック・フィルムで裏打ちされたクラフト紙で包装されたが、重なり合う部分は通常密封されない。コイルは包装された後、金属製の包装を施され周囲を金属性のベルトで固定された。さらに、コイルの包装には「水濡れ厳禁」「取扱い注意」の標準的な注意が記された。

積付けと輸送に関し、裁判所は以下の事実認定を行った。コイルは適切に包装されていたがクロム酸塩でコーティングされていないことはB/L等に記載されておらず、運送人側は不知であった。また、両船とも船積み時に雨が降っていて、第一船のコイルの多くは積込み前に濡れており、第二船のコイルは水濡れした他の貨物とともに積み込まれた。しかも両船のホールドは雨水で濡れ、ダンネージの水分により、航海前から水分が多かった。そしてその水分を取り除くには、モップで床を掃いたり、貨物を拭いたり、換気をするしか方法がなかった。このような状況では結露が生じる可能性は非常に高いが、ホールド内に除湿装置を設置する実務的慣習はない。そして、船積み後の航海中にホールド内で結露が生じた。コイルは湿気にさらされると錆やすいため、日本から豪州への輸送においてこのような状況は予見可能なリスクであった。

〔豪州法とヘーグ・ヴィスビールール〕
運送人と荷主の運送契約が、ヘーグ・ヴィスビールールに修正を加えた豪州COGSAによって律せられることは、双方とも承知していた。

荷主は、運送人が本船の堪航性保持につき相当の注意を尽くさなかったためホールドがコイル輸送に適しておらず、また、航海中に貨物の取扱いを適切に行わなかったとクレームした。一方、運送人はコイルの包装が水濡れ防止に充分ではなかったと主張した。裁判所は、水分が液体もしくは気体の状態でコイルに影響しないかどうかを、それぞれが予測し得たかどうかが本質的な問題であるとした。

裁判所は、荷主による包装が水蒸気の浸入防止に不十分であることを認めつつ、それを予見すべきは運送人であるとし、本船の貨物取扱いが不適切であったために錆が生じたと判断した。本船は、除湿システムも加熱装置も備えていなかったのである。裁判所は、運送人はホールド内に水が浸入しないような措置を講ずるべきであり、もしそれが可能でないならば、除湿装置を設置すべきであって、本船の堪航性保持のための相当な注意を怠り、ホールドをコイルの輸送と保護のために安全で適した状態に保たなかったと判断した。

〔結論〕
この判決は、特定貨物の輸送における運送人の堪航性保持に関する相当の注意義務の程度を拡大させている。荷主関係者、特に荷送人は、運送人よりも積荷に関する特性や取扱いについての知識を持っているにもかかわらず、裁判所は運送人を有責としたのである。したがって、今後豪州COGSAの下で鋼材輸送を行う場合、運送人の利益を守るためには、以下の点に注意することが求められる:

1.鋼材の梱包材料の性質について、荷送人に具体的な照会を行う
2.鋼材の的確な輸送上の要件について、荷送人に具体的な照会を行う
3.必要に応じ、たとえ荷送人から特別の要請がなくても、輸送上特有の要件を持つ鋼材に対応するため、高価な機材も設置する

なお、本件判決は現在控訴中です。控訴審判決が出され次第、ご連絡申し上げます。