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ネズミの害も不堪航?

2002/05/21 No.430
  • 外航

−本船は堪貨性を有していたか、相当の注意義務は尽くされていたか−

(2002年4月11日付Fairplay International Shipping Weeklyより)



"RIVER NGADA"
Cadbury Schweppes and others vs Nigerian National Shipping Line

(London High Court 2001年1月付判決)


在来貨物船の乗組員はネズミの存在を警戒しなければならないか否かということが、船主が敗訴した訴訟での焦点となった。Cadbury Schweppes他対Nigerian National Shipping Line (River Ngada号)の本訴訟は、1991年にガーナのタコラジからダブリン向けに運送された200トンのココアバターの積荷の損害をめぐる訴訟案件であった。


到着時、本船1番船艙にネズミの糞が発見され、2番船艙のツインデッキにはネズミが大繁殖した証拠が見られた。


その翌日、船上に生きたネズミがいることが確認された。ダブリン保健当局はアイルランドへの貨物の陸揚げを禁止し、該貨は後にロッテルダムへ運送され格落ち売却された。


クレームが提起された2通の船荷証券はヘーグ・ウィスビー・ルールを摂取していた。裁判所は、もしコンテナ詰めされていない食料品の運送に係わる航海の開始時に本船が貨物艙への通路を遮断することなく、ネズミの繁殖基地を提供していたとしたら、同ルール第Ⅲ条1項(発航開始前の堪航性・堪貨性担保義務)の違反となるであろうと判示した。かかる状況では本船は堪貨性という意味において航海に堪えない状態であり、船艙はそのような貨物の運送に安全ではなかった。航海の前及び開始の時点で船上にネズミがいた旨を立証する責任はクレーマント側にあり、彼らは証拠をもってそれを立証した。


一方、船主であるNigerian National Shipping Lineは、同ルール第Ⅳ条に規定される不堪航に対する責任の免除を主張する権利があることを立証しようと試みた。同社は、本船の堪航性を保持し船艙を貨物に適した安全な状態におくことにつき相当の注意義務を尽くしたことを立証しなければならなかった。船主は3点の抗弁を試みたが、いずれに対しても原告の異議申立てで却下された。


  1. ネズミ駆除施行免除証明書は積荷から5日前の日付のものであった −−− これは船艙が点検されたということを示していない。更に、それはネズミの本船への侵入防止あるいは駆除の手段を講じたことを立証するものではなかった。
  2. 燻蒸 −−− これはネズミよりもむしろ昆虫への対策である。
  3. 積荷中/揚荷中には「すべての係船索にネズミ侵入防止装置を取り付ける」ことを要求する船内部門間メモ −−− これは港湾当局の要請にも拘らずダブリンでは取り付けられず、そもそも本船が実際にネズミ侵入防止装置を備品として保有していたかどうかも甚だ疑わしかった。メモはネズミの本船への侵入を防止したり、またネズミが防止装置をかいくぐって侵入した場合にそれを駆除したりするすべての適切な手段が取られたことを示す確かな証拠にはならなかった。

結果として、船主は相当の注意義務を尽くしたことを立証するのに失敗し、それゆえ責任を免れなかった。更に、船主は同ルール第Ⅲ条2項の義務(適切かつ慎重な貨物運送)及び貨物を船積み時と同一の良好な状態で引渡す義務に違反した。よってクレーマントの損害賠償請求は認められた。船主は控訴を断念した。