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裁判所はPOEA契約条項を尊重し後遺障害等級を減じた

2005/10/27 No.525
  • 外航
(フィリピンのコレポンDel Rosario & Del Rosarioからの情報より)

船員クレームに関し、比国控訴審判決をご案内申し上げます。事故で頸椎間板を負傷し、会社指定医により後遺障害10級と認定された船員が、後遺障害1級の手当金を請求したケースで、労働関係委員会(NLRC)は船員の請求を認めましたが、控訴審はPOEA契約の条項が尊重されるべきとしてNLRCの裁決を破棄し、後遺障害10級の判決を下しました。フィリピンのコレスポンデンツDel Rosario & Del Rosarioからの原文を当組合による試訳とともに、ご参考に供します。

<試 訳>

裁判所はPOEA契約条項を尊重し後遺障害等級を減じた


船員(※訳者註:POEA契約のもと雇用された)は救命艇の訓練中に転落し、胸と背中を痛め、左鎖骨に腫れを生じた。その後、神経根症(※訳者註:脊髄神経根の疾病)を伴う第3、第4、第5、第6頸椎間板を負傷したとして、海上勤務不能と診断された。会社指定医は後遺障害10級(後遺障害手当US$12,090)と認定したが、船員はこれを不服として、後遺障害1級の手当US$60,000の支払を求めてLaborArbiter(訳者註:NLRC=National Labor Relations Commission−フィリピン労働関係委員会−に属する労働仲裁人)に申立てを提起した。当事者の合意により別の医師に意見を求めたところ、やはり後遺障害10級と認定された。

Labor Arbiterは、船員が生涯海上勤務できないとの理由で、後遺障害1級のUS$60,000の裁定を下した。上訴審であるNLRC(※訳者註:Labor Arbiterより上位のCommission level)は、船員の障害は一生のものであり、POEA契約の後遺障害等級表における後遺障害1級と同等であるとして、Labor Arbiterの裁定を支持した。

Court of Appeals(※訳者註:控訴審。NLRCの判断を不服とする当事者は、Court of Appealsに上訴できる)は、NLRCの裁定を破棄し、後遺障害10級に相当するUS$12,090の後遺障害手当の判決を下した。控訴審は次のように判断した。

1.船員は補償を受ける資格を有する。しかしながら、POEA契約では、会社指定医の認定と後遺障害等級表に従うべきことが明確に規定されている。会社指定医も、当事者間で合意された別の医師も、ともに後遺障害10級を認定している。

2.Labor ArbiterとNLRCは、医療の分野で専門知識を持たない。会社指定医は専門知識を持って最初から船員の治療にあたったのであり、その指定医の見解には根拠がある。

3.当事者間においては、契約が法である。本件で船員はPOEA契約に基づいて請求しており、従ってその契約条項が尊重されねばならない。

Amelita Tolentino裁判官の判示は次のとおりであった。

「いかにも、法律は当事者間の契約に優先する。法律は契約条項に含まれているものと解される。しかしながら、当事者間においては、契約こそが法である。とりわけ本件では、船員は契約のもとで請求しており、その契約の条項は少なくとも尊重されねばならない。そうされていないのならそのように改めねばならない。思うに、公的機関であるNLRCが会社指定医の見解を独自の見解に替えて、正当な理由なしにPOEA契約の条項を完全に無視したのは、明らかに裁量権の乱用である。契約は当事者間では法なのであるから、正当な理由なしにその条項を無視することはできない。」

Career Philippines Shipmanagement, Inc. et. al. vs. NLRC, et. al., CA-G.R. SP No. 79150,April 27, 2005 (Justice Amelita Tolentino, Special Ninth Division, Court of Appeals)