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NLRCは糖尿病を職務外と裁定した

2005/02/03 No.517
  • 外航

(フィリピンのコレポンDel Rosario & Del Rosarioからの情報より)


船員クレームに関し、フィリピンのNLRC(the National Labor Relations Commission労働関係委員会)の裁定をご案内申し上げます。糖尿病のため送還された船員からの補償の要求について、病気は職務外であるため船員は補償を受ける権利がない旨裁定されたとのことです。コレスポンデンツからの情報の原文に当組合による試訳を添付し、ご参考に供します。



NLRCは糖尿病を職務外と裁定した


−概要−
船員はタイプIIの糖尿病のため送還された。NLRC(the National Labor Relations Commission 労働関係委員会)での争点は、この病気が船員に後遺障害手当の全額を受け取る権利を与えるような職務上の病気であるか否かという事であった。NLRCは、糖尿病は職務上のものではないと裁定した。糖尿病は、雇用とは関係なく生じる家族性すなわち遺伝性の病気である。家族性の病気であるため、船員は子供の頃からあるいは成人してから病気に悩まされていたかもしれないし、非常に高い確率で肉親の何名かが同様に同じ病気で苦しんでいる。糖尿病となるには、家族性体質、遺伝的特徴、生活様式、食生活その他職務とは無関係のいくつかの問題がある。更に、仕事場あるいは船員の職務において彼が糖尿病になるような要因はない。また、糖尿病は完全な身体障害ではなく、薬物治療や運動、食事療法を続けることによって抑止され得る慢性疾患である。

−事実関係−
船員は改正POEA契約の下で”ASIAN PEGASUS”号に機関長として雇用されていた。約5ヶ月後、彼は「糖尿病ケトアシドーシス」のためFujairah Port Clinicに入院した。彼は送還され、会社指定医師が彼の病気は職務外であると診断するまで本船費用でManilaにて治療を受けた。彼の傷病手当もまた、職務外との診断を受けるまで支払われた。

船員は後遺障害手当を求めてクレームを提起した。彼は、既往症があったと証明されない限り彼の病気は職務上であり、本船上で働くまでは糖尿病の徴候は全く見られなかったこと、また、彼はもはや海上勤務に戻ることはできないため病気による後遺障害手当US$60,000を補償されるべきと主張した。

本船は、船員は職務外との診断を受けるまで治療を受け傷病手当を受け取っており、更に、船員のタイプIIの糖尿病は会社指定医師によって診断されたように職務外であると反論した。

NLRCは、病気は職務外であるため船員は補償を受ける権利がないと裁定した。NLRCは次のように判示した:

    1. 本船は船員が職務上の病気に罹った場合にのみ有責である。

    2. タイプIIの糖尿病は職務外である。糖尿病は、雇用とは関係なく生じる家族性すなわち遺伝性の病気である。家族性の病気であるため、船員は子供の頃からあるいは成人してから病気に悩まされていたかもしれないし、非常に高い確率で肉親の何名かが同様に同じ病気で苦しんでいる。糖尿病となるには、家族性体、遺伝的特徴、生活様式、食生活その他職務とは無関係のいくつかの問題がある。

    3. 原告の仕事場あるいは彼の職務において彼が糖尿病になるような要因はない。彼は、彼の雇用によって影響されない彼自身の遺伝的、家族的、食生活上の、またその他の要因によって病気になった。言い換えれば、原告が被告に雇用されたか否かに拘らず、彼の総生理機能組成に存する何らかの原因により病気になった。

    4. 更に原告が罹った病気は完全な障害としては取り扱われないかもしれない。仮に 障害であったとしても、それは薬物治療や運動、食事療法を続けることによって抑止 され得る単なる慢性疾患である。病気は原告が補償を受けるべき障害ではない。というのは、彼の仕事場では糖尿病を患っていても要求される業務を十分に遂行し得るからである。

病気は雇用契約で認められるような職務上の病気や職業病ではなく船員は完全な障害を被っていないため、クレームは却下された。

Fernando vs. Sea Workforce Manila Corp., et. al., NLRC NCR OFW CN. 03-07-1747-00, CA No.040321-04, October 19, 2004