会社指定医師の診断に基づく障害等級についてのNLRCの3件の裁定
2004/07/01 No.502
- 外航
(フィリピンManilaの弁護士事務所Del Rosario & Del Rosarioよりの情報)
1.専門医の見解は一般開業医である会社指定医師の見解より優先する
心臓病による船員の障害等級についての2つの対立する意見が、NLRC(the National Labor Relations Commission 労働関係委員会)の下で論争となっている。一般開業医である会社指定医師は、心臓専門医に相談し、閉塞が再発する可能性があるためペースメーカーは取り外すべきではないと述べたその心臓専門医の報告に基づいて、第12級の障害等級とした。第12級は次の通りである:「腹部5.腹部臓器機能に軽度の障害が残り、栄養摂取に支障が生じ、軽度の過敏症もしくは便秘、下痢を伴う場合」。船員が独自に診察を受けた医師は心臓専門医であり、第1級の障害等級とした。第1級は次の通りである:「腹部3.腹部臓器の機能に重度の障害を残し、常に介護を要し終生就労不能の場合」。
NLRCは専門医の見解が優先されなければならないと裁定した。それは、医学においてはいろいろな専門があり、一般開業医はありとあらゆる種類の病気を診断するには十分ではないとする裁判所による確知によるものである。注目すべきことは、会社指定医師が相談した専門医師ではなく、会社指定医師が障害等級を認定したということである。船員が独自に診察を受けた医師が心臓専門医であったのに対して、会社指定医師は一般開業医である。更に、船員は、ペースメーカーを必要とする状態のために、明らかに就労することができない。また、会社指定医師が相談した専門医師は、閉塞が再発する可能性があるためペースメーカーは取り外すべきではないとの見解である。このことは、この船員が引き受けるどのような仕事においても常に危険に晒されているということを意味する。したがって、船員は第1級の障害手当US$60,000を与えられなければならない。
NLRC NCRCA No.l 033751-02 (NLRC NCR OFW Case No. (M) 00-04-0651-00), March 31, 2004
2.会社指定医師の障害等級診断が優先されなければならない
船員は金属ハンドルで左腕を骨折した。彼は会社指定医師の下で1年間治療を受けた。彼は第11級(US$7,465)の障害等級と診断された。船員はこれに満足せず、別の医師の診察を受け、診察当日に第1級(US$60,000)の障害等級を認定された。
NLRCは会社指定医師の見解が優先されなければならないと裁定した。
最高裁判所は、船員の障害を認定しなければならないのは会社指定医師であるとの判決を下している(German Marine Agencies Inc. 対 NLRC, G.R. No.142049, 2001年1月30日)。会社指定医師の医学的見解は船員を1年以上治療した後に出されたものである。船員を1年間診察してきて、会社指定医師は船員の状態についてより正確な評価をすることができる立場にある。他の医師は船員を診察したその当日に診断書を発行した。
NLRCは、US$7,465(第11級)を認定した。
NLRC NCR CA No. 033274-02, NLRC-NCR-OFW-M-01-06-1217-00, April 20, 2004
3.背中の痛みについて船員が独自に診察を受けた医師の見解が支持された;終身の障害ではなく部分的障害が認められた
船員は重い箱を持ち上げる際、背中を痛めたと主張した。彼は送還され、「L3-L4, L4-L5及びL5-S1の椎間板ヘルニア狭窄症」として会社指定医師の治療を受けた。約4ヶ月の治療の後、彼は「就労可能」と診断されたが、なお軽度の狭窄症の診断が付されていた。船員は背中の痛みのためにまだ就労できないと主張し、1年以上経過した後、独自に別の医師の診察を受け、同一の背中の痛みと診断され、第8級(US$16,795)の障害等級とされた。船員は終身障害手当US$60,000を求めてクレームを提起した。労働仲裁人は、船員は既に就労不能となっており、彼の逸失所得について補償されなければならないとして、US$60,000の裁定を下した。
再考申立ての結果、NLRC委員会は認定を第1級(US$60,000)から第8級(US$16,795)に減じた。
NLRCは、終身後遺障害手当の認定は筋道が立たないと裁定した。契約書の第20章B5は、あらゆる傷病についての補償額の算出について規定している。第30章は「脊髄損傷のため、歩行不可能の場合」を第1級の障害と規定している。この船員の事案においては、負傷は「体幹の伸張/屈曲に中程度の障害」を生じる軽度の狭窄症であり、契約書第30章の下では障害等級は第8級であり第1級ではない。したがって、契約書に基づき、船員は終身にわたる障害ではなく部分的障害の第8級のみしか受ける権利がないとされた。会社指定医師は「就労可能」と診断したが、その診断書には船員は依然として軽度の狭窄症を患っていると記載している。
NLRC NCR CA N0. 036943-03 (NLRC OFW Case No. (M) 01-09-1835-00), April 19, 2004
1.専門医の見解は一般開業医である会社指定医師の見解より優先する
心臓病による船員の障害等級についての2つの対立する意見が、NLRC(the National Labor Relations Commission 労働関係委員会)の下で論争となっている。一般開業医である会社指定医師は、心臓専門医に相談し、閉塞が再発する可能性があるためペースメーカーは取り外すべきではないと述べたその心臓専門医の報告に基づいて、第12級の障害等級とした。第12級は次の通りである:「腹部5.腹部臓器機能に軽度の障害が残り、栄養摂取に支障が生じ、軽度の過敏症もしくは便秘、下痢を伴う場合」。船員が独自に診察を受けた医師は心臓専門医であり、第1級の障害等級とした。第1級は次の通りである:「腹部3.腹部臓器の機能に重度の障害を残し、常に介護を要し終生就労不能の場合」。
NLRCは専門医の見解が優先されなければならないと裁定した。それは、医学においてはいろいろな専門があり、一般開業医はありとあらゆる種類の病気を診断するには十分ではないとする裁判所による確知によるものである。注目すべきことは、会社指定医師が相談した専門医師ではなく、会社指定医師が障害等級を認定したということである。船員が独自に診察を受けた医師が心臓専門医であったのに対して、会社指定医師は一般開業医である。更に、船員は、ペースメーカーを必要とする状態のために、明らかに就労することができない。また、会社指定医師が相談した専門医師は、閉塞が再発する可能性があるためペースメーカーは取り外すべきではないとの見解である。このことは、この船員が引き受けるどのような仕事においても常に危険に晒されているということを意味する。したがって、船員は第1級の障害手当US$60,000を与えられなければならない。
NLRC NCRCA No.l 033751-02 (NLRC NCR OFW Case No. (M) 00-04-0651-00), March 31, 2004
2.会社指定医師の障害等級診断が優先されなければならない
船員は金属ハンドルで左腕を骨折した。彼は会社指定医師の下で1年間治療を受けた。彼は第11級(US$7,465)の障害等級と診断された。船員はこれに満足せず、別の医師の診察を受け、診察当日に第1級(US$60,000)の障害等級を認定された。
NLRCは会社指定医師の見解が優先されなければならないと裁定した。
最高裁判所は、船員の障害を認定しなければならないのは会社指定医師であるとの判決を下している(German Marine Agencies Inc. 対 NLRC, G.R. No.142049, 2001年1月30日)。会社指定医師の医学的見解は船員を1年以上治療した後に出されたものである。船員を1年間診察してきて、会社指定医師は船員の状態についてより正確な評価をすることができる立場にある。他の医師は船員を診察したその当日に診断書を発行した。
NLRCは、US$7,465(第11級)を認定した。
NLRC NCR CA No. 033274-02, NLRC-NCR-OFW-M-01-06-1217-00, April 20, 2004
3.背中の痛みについて船員が独自に診察を受けた医師の見解が支持された;終身の障害ではなく部分的障害が認められた
船員は重い箱を持ち上げる際、背中を痛めたと主張した。彼は送還され、「L3-L4, L4-L5及びL5-S1の椎間板ヘルニア狭窄症」として会社指定医師の治療を受けた。約4ヶ月の治療の後、彼は「就労可能」と診断されたが、なお軽度の狭窄症の診断が付されていた。船員は背中の痛みのためにまだ就労できないと主張し、1年以上経過した後、独自に別の医師の診察を受け、同一の背中の痛みと診断され、第8級(US$16,795)の障害等級とされた。船員は終身障害手当US$60,000を求めてクレームを提起した。労働仲裁人は、船員は既に就労不能となっており、彼の逸失所得について補償されなければならないとして、US$60,000の裁定を下した。
再考申立ての結果、NLRC委員会は認定を第1級(US$60,000)から第8級(US$16,795)に減じた。
NLRCは、終身後遺障害手当の認定は筋道が立たないと裁定した。契約書の第20章B5は、あらゆる傷病についての補償額の算出について規定している。第30章は「脊髄損傷のため、歩行不可能の場合」を第1級の障害と規定している。この船員の事案においては、負傷は「体幹の伸張/屈曲に中程度の障害」を生じる軽度の狭窄症であり、契約書第30章の下では障害等級は第8級であり第1級ではない。したがって、契約書に基づき、船員は終身にわたる障害ではなく部分的障害の第8級のみしか受ける権利がないとされた。会社指定医師は「就労可能」と診断したが、その診断書には船員は依然として軽度の狭窄症を患っていると記載している。
NLRC NCR CA N0. 036943-03 (NLRC OFW Case No. (M) 01-09-1835-00), April 19, 2004