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下船の後に死亡した船員死亡給付金

2001/05/30 No.365
  • 外航

(5月7日付フィリピン法務代理人よりの情報)


 POEA標準契約により乗船し、満期下船後“心筋梗塞”で死亡した船員の死亡給付金について、NLRC(労働関係委員会)は、当該船員の下船理由は病気下船によるものでなく、また乗船中に発病したと申し立てられた疾病と船員の死亡原因との間に関連性が認められないとし、給付を認めない旨の判決を下した。


 下船の2ヶ月後に病死した船員の法定相続人が、死亡は雇用契約中にかかった病気が原因であると主張して、船主側を相手取り、死亡給付金の支払を求める訴えをNLRCに起こした。
 船員側の起訴状によれば、乗船前の船員の健康状態は良好であったが乗船後上官のいじめ等により心労が重なり体調不良を訴えるようになったこと、1997年12月26日に契約した12ヶ月間の雇用契約期間満了前の1998年12月8日に本人の意志ではなく下船させられたこと、乗船中及び下船の後も必要と思われる医師の診察及び治療の 要請を正当ではない理由で拒絶されるなど不当な扱いを受けていたこと、それらが 諸原因となって彼の病状は悪化し、結果船員は死亡した、と主張した。


 裁判の争点となったのは、船員の下船が満期下船によるものか病気下船によるものかという点及び乗船中の病気と死亡原因たる病気との因果関係という点であった


 NLRCは、POEA標準雇用契約第19条B項には、船主はほぼ雇用期間満了を迎える船員を船主にとり都合がいい港で下船、送還させても良いことが定められており、今回の下船は満期下船に該当するとし、また船員は下船時に自分の意志によって満期下船を選択して下船しており、それは決して病気によるものではないとし、さらに死因である病気と乗船中に発病したという病気との間の因果関係を立証する証拠が薄弱であるとして、船員側の訴えを棄却した。
 なお、船員の下船時に本船側で取り付けていた“Disembarkation Form”は、船員が自分の健康状態を記入するものではないものの、船員の自由意志によって下船理由(finished contract; sickness;disciplinary action)を選択しチェックを入れるようになっており、当該船員はそこで“finishedcontract=満期下船“とチェックしていたため、この事が下船理由が病気でないとする有力な根拠ともなった。