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国際海事局(IMB)海賊と武装強盗に関する2025年上半期報告書

2025/07/15 No.1317
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国際海事局海賊情報センター(IMB PRC:The IMB Piracy Reporting Centre)から2025年上半期の海賊と武装強盗に関する報告書を受領しましたので、IMBによる要約と共にご案内申し上げます。詳細は添付資料をご参照ください。

要約
2025年上半期において、合計90件の事件が報告されました。これは2024年上半期の60件、2023年上半期の65件と比較して大幅な増加であり、2020年上半期の98件に次ぐ件数でした。

内訳は、79隻が侵入、6隻が襲撃未遂、4隻がハイジャックされ、1隻が発砲されました。標的となった船舶の92%で侵入に成功しています。

船員への暴力も依然として深刻であり、2024年上半期の85人、2023年上半期の36人と比較して、2025年上半期は40人の船員が人質になりました。さらに、過去2年間の同時期にはそれぞれ11人、14人であったのに対し、2025年上半期は16人の船員が誘拐されました。脅迫された船員が5人、暴行を受けた者および負傷した者がそれぞれ3人おり、船員の安全は引き続き脅かされています。

報告された事件のうち、銃器および刃物が使用された割合は55%に上り、過去2年間の同時期の57%および40%と比較して、引き続き高水準で推移しています。全体の件数増加は、シンガポール海峡での事件増加にほぼ全面的に起因しており、上半期に報告された90件のうち57件を占めています。

事件の大半は船舶が航行中に報告されています。

Status when Attacked

Attempted

Boarded

Fired Upon

Hijacked

Grand Total

Anchored

2

13

15

Berthed

4

4

Steaming

4

62

1

4

71

Grand Total

6

79

1

4

90


事件が報告された地域は下表のとおりです。

Region

Attempted

Boarded

Fired Upon

Hijacked

Grand Total

Africa (Somalia)

1

1 3

5

Africa (Gulf of Guinea)

1

10

1

12

Americas

1

2

3

Indian Sub-Cont

5

5

East & SE Asia

4

61

 

 

65

Grand Total

6

79

1

4

90


シンガポール海峡
シンガポール海峡ではすでに2024年の年間発生件数を30%以上上回っており、上半期に報告された事件の95%で船舶への侵入に成功しています。この海域では2024年上半期15件の事件が報告されていました。2025年上半期に報告された57件の事件のうち、150,000 DWTを超えるばら積み貨物船およびタンカー14隻が標的とされ、そのうち13隻に侵入が成功しました。銃器や刃物が使用されたと報告された事件は35件に上り、これは過去2年間の同時期のそれぞれ10件および8件と比較して大幅な増加です。船員に対する暴力も増加しており、13人が事件中人質に取られ、5人が脅迫され、3人が負傷し、1人が暴行を受けました。これらは比較的軽微な事件と見なされていますが、この前年比の飛躍的な増加は懸念される状況です。

 

ギニア湾
報告された事件数は引き続き低い水準を維持しており、地域当局の取り組みが評価され、その継続が奨励されています。2025年上半期には12件の事件が報告され、これは過去2年間の同時期の10件、14件と比較して同程度の水準です。この傾向は目指すべきものですが、船員の安全とウェルビーイングはまだ確保されていません。2025年上半期に世界中で誘拐された船員の87%がこの地域で発生しています。IMBは引き続き、全ての船員に対し、この海域を航行する際には警戒を怠らず、最新版BMPで推奨されている慣行に従うよう奨励しています。

ソマリア
2025年4月以降、ソマリア沖での新たな事件は報告されていません。しかし、これらの海域では海賊行為の潜在的な脅威が引き続き存在しており、全ての船員は最新のBMPのガイドラインを遵守する必要があります。特に、今後数ヶ月で南西モンスーンが治まるにつれて、この脅威は高まる可能性があります。