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ニュース

リチウムイオン蓄電池の海上輸送における貨物固縛の重要性について

2026/04/17 No.1368

米国国家運輸安全委員会(NTSB)は先般、貨物船で輸送中のリチウムイオン蓄電池システム(BESS)ユニットの火災事故に関する調査結果と「教訓(Lessons Learned)」を、同委員会ウェブサイトにて公表しました。

 

NTSBは、本船の火災の推定原因について、ラッシングベルトによる固定が不適切であったため、荒天時に貨物艙内でBESSユニットの固縛が外れ(breakaway)、同ユニット内部に構造的変形が生じて、内蔵されたリチウムイオン電池パックが熱暴走を起こしたことによると結論付けています。

 

リチウムイオン電池の火災は、熱暴走によって生じる温度が300℃(572℉)を超えることがあり、延焼のリスクが高いため、船上の従来の消火設備・方法で消火することは極めて困難です。これらのリスクは主に電気自動車(EV)の輸送に関連して指摘されてきましたが、近年ではBESSユニットの海上輸送も増加傾向にあります。

 

今回の事故に関与したBESSユニットは、電力網向けの陸上定置用電源装置として設計されたものでした。また、各ユニットは、国際海事機関(IMO)が採択した国際海上危険物規程(IMDGコード)に基づき、「UN3536」に分類されていました。

 

Lessons Learned

適切な貨物固縛の確保

  • 本船の貨物固縛マニュアル(CSM)に従い、承認された貨物積載および固縛プランを実行することに加え、乗組員は貨物の積載中および積載後に、全ての貨物固縛設備の綿密な点検を実施しなければならない。
  • このような点検は、固縛プランの実行において計画者が想定した前提を損なう恐れのある、不適切な取り付けや貨物固縛に関するその他の懸念事項を特定するために極めて重要である。
  • 貨物が適切に固縛されていることを確認できなければ、貨物の荷崩れ(固縛の外れ)につながる恐れがある。
  • 貨物を固定するために使用されるラッシングベルトのフック、ワイヤー、またはチェーンブロックなどの部品の適合性を確認し、それらがDリングやその他の固縛ポイントに適切に(完全に噛み合って)セットされていることを確認することには、特別な注意を払う必要がある。

(出典:NTSB investigation report MIR-25-41

 

予防策として、適切な固縛プランの策定を確実に行い、本船の貨物固縛マニュアル(CSM)およびIMOが採択した「貨物の積み付けおよび固定のための安全実施規則(CSSコード)」に従って、確実な貨物固縛の実施とその適切な状態の確認を厳格に行うことが推奨されます。さらに、貨物の移動を防ぐため、航海中も固縛設備の定期的な点検を実施し、特に荒天が予想される場合には必要に応じてラッシングの増し締めを行うことが推奨されます。

 

なお、NTSBが調査した事故は貨物艙内(甲板下)で発生したものですが、2026年1月1日のIMDGコード改訂により、UN3536(貨物輸送ユニットに内蔵されるリチウム電池)の積付は上甲板のみに制限されました。

 

CSSコードに基づく非標準化貨物の積付けおよび固縛について、より理解を深めていただくための参考資料として、組合員さま限定でP&Iロスプリベンションガイド(2026年1月発行:非標準化貨物の積付けおよび固縛パート1、2026年3月発行:非標準化貨物の積付けおよび固縛パート2)を発行しております。併せてご活用ください。

 

当組合は、今後も事故防止に向けて、専門的知見を元に最新情報を提供してまいります。