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EUの対ロシア制裁-第10次制裁パッケージ

2023/03/06 No.1212

2023年2月25日、EUはロシア制裁の第10次パッケージを採択しました。関連するEU規則と欧州理事会の決定はこちらからご覧いただけますが、組合員の皆さまにとって特に重要なのは、理事会規則(EU)833/2014を再改訂した理事会規則(EU)2023/427です。

 

制裁対象への指定
87名の個人と34の事業体が新たにEU制裁リストに追加されました。詳細はこちらからご覧いただけます。リストには以下の個人・事業体が含まれています。

 

  • Alfa銀行、Ros銀行、Tinkoff銀行、ロシア連邦国民福祉基金、ロシア国立再保険会社
  • SUN Ship Management (D) Ltd.(ロシア最大の海運会社であるPAO Sovcomflot(SCFグループ)の傘下にあるドバイの船舶管理会社)
  • ロシア連邦院の議員、政府高官、軍の幹部、ロシアの民間軍事会社ワグネルのメンバー
  • ロシア軍のために武器を製造する企業
  • ウクライナの非政府支配地域に設置されている「代理当局」
  • ウクライナで使用するドローンのロシアへの供給に関与したとされるイラン人

 

貿易制裁
海運に関連し、以下の措置が課されました(括弧内で言及している条項番号は、改訂EU規則833/2014のものです)。

 

  • ロシアの軍事・技術強化、または防衛・安全保障分野の発展に寄与する可能性のある制限品目のリスト(改訂2a条の附属書VIIに記載)が拡大され、ロシアの兵器システムで使用されている特定の電子部品、特定のレアアース材料、電子集積回路およびサーマルカメラが追加されました。

 

  • 瀝青、カーボン、合成ゴムなど、ロシアに大きな収益をもたらす物品(改訂3i条の附属書XXI Part Cに記載)のEUへの輸入に関し、さらなる制限が課されました。これらの物品について、2023年2月26日より前に締結された契約に関しては、2023年5月27日までの事業縮小期間が設けられています。CNコード2803(カーボン)および4002(合成ゴム)に該当する物品は、事業縮小期間の対象外ですが、代わりに2024年6月30日まで、カーボンについては752,475トン、合成ゴムについては562,973トンの輸入割当が適用されます。

 

  • 電子機器、特殊車両、機械部品、トラック・ジェットエンジンのスペアパーツ、アンテナ・フォークリフト・クレーンなどロシア軍の使用に転用できる建設分野の物品など、ロシアへの重要技術や工業製品改訂3k条の附属書XXIII Part Cに記載)の輸出に関し、さらなる禁止措置が課されました。これらの物品について、2023年2月26日より前に締結された契約については、2023年3月27日までの事業縮小期間が設けられています。

 

迂回への対策
EUは、デュアルユース商品および先端技術のロシア領を経由する輸送を禁止しました(改訂2条)。これにより、当該物品をEUから第三国へ輸出する際、ロシア領を経由することはできなくなりました。

 

水先案内人サービス
EUは、ロシア国営企業との取引禁止は、海上安全のために必要な船舶への水先案内人サービスの提供には適用されないことを明確にしました(改訂5aa条)。

 

EUのガス貯蔵
EU域内のガス貯蔵能力を、ロシア国民、居住者またはロシア法人に提供することは禁止されました(新5p条)。この禁止は、貯蔵に使用される液化天然ガス施設には適用されません。2023年2月26日より前に締結された契約に関し「厳密に必要な業務」については、2023年3月27日までに終了することを条件に事業縮小期間が設けられました。また、EU内の重大なエネルギー供給を確保するために必要な場合は、EU加盟国の管轄当局が貯蔵能力を提供する認可を与えることを認めています。

 

これらの制裁措置の詳細については、欧州委員会のプレスリリースおよびQ&Aをご覧ください。

 

EU制裁は、以下の状況において適用されます:
  • 領空を含むEU領域内
  • EU加盟国の管轄下にある航空機または船舶上
  • 所在地を問わずEU加盟国の国民であるあらゆる個人
  • 所在地を問わずEU加盟国の法律に基づいて設立された法人・事業体または団体
  • EU域内で全部または一部の事業を営む法人・事業体または団体