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外航船保険の成績指標の変更について

2021/11/17 第21-010号
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外航船保険の成績指標を変更し、2022保険年度から導入することといたしましたので、下記のとおりご案内申し上げます。変更内容の詳細につきましては、添付資料をご参照ください。

 

 

当組合は外航船保険の引受け基本方針を以下のとおりとしています。

 

  1. 組合員に持続可能な保険サービスを安定的に提供するために、公平で規律ある保険引受けを行う。
  2. 組合員には、相互保険の精神に基づき、加入船舶につき発生した保険金、再保険料および組合運営に必要な費用を応分に分担していただく。
  3. 保険料は、各組合員の過去の事故実績に基づく保険成績を基準とし、免責金額、再保険料、船種等を踏まえて加入船の引受保険リスクに見合った額を算出する。
  4. 新規契約の引受けに当たっては、組合員が期待される船舶運航の安全とリスク基準を満たしていることを確認する。

 

当組合は、この基本方針のうち3.に記載されている保険成績の指標を組合員の皆さまにより分かりやすく、透明性のある形で実践するために、2022年保険年度から以下のとおり変更します。



  1. 新しい保険成績指標の採用

 

当組合は、各組合員の保険リスクを算定するための指標として、長らくグロス・ロス・レシオを使用しておりました。この指標は各組合員のクレームの傾向は示しますが、保険引受けに際して直接・間接的に発生する各種費用が明示されておらず、これら費用を含んだ正味の保険成績を示すことができていませんでした。

 

そこで、より包括的で詳細な保険リスク指標として、近年多くの国際P&Iグループ(IG)加入クラブが採用している、ネット・ロス・レシオ方式を当組合の新たな保険成績指標として採用することとしました。この新方式により、各組合員のクレーム傾向だけでなく、再保険料等組合運営に必要な費用の負担状況をより明確な形でご理解いただけるようになります。

 

各保険年度のネット・ロス・レシオは以下の計算式で算出されます。

ネット・ロス・レシオ

 

 

 

 

(参考:従前の指標)

グロス・ロス・レシオ

 

 

 

 

正味保険料:当該保険年度において当組合にお支払いいただいた保険料で、ブローカー手数料は含まれません。また、休航返戻金、解約返戻金および保険料変更等が反映された金額となります。

 

保険金:保険金総額(支払い済み保険金+支払い見込み保険金)から、アベイトメント(後述2.参照)の対象となる保険金およびクラブ保有額(2021保険年度は10百万ドル)を超過する保険金がある場合は控除します。

 

IG再保険料IGでは偶発巨損事故に備えるためにプール・再保険制度を導入しています。10百万ドル~100百万ドルまではプールとして各クラブが保険金を分担し、100百万ドルを超える一定上限額(2021保険年度は31億ドル)までのクレームについては、超過額再保険を手配しています。最新年度のIG再保険プログラムについては、コーポレートサイト掲載のスキーム図(https://www.piclub.or.jp/about/ig)を参照願います。

IGが手配する再保険の船種毎の料率は毎年ウェブサイトhttps://www.igpandi.org/article/international-group-pooling-and-gxl-reinsurance-contract-structure-2021-have-now-been-finalisedに公表されており、この費用をご負担いただきます。

 

IGプール分担金IGプールでカバーされる費用はIG加盟クラブが分担しています。当組合では、組合員にご負担いただく各年度のIGプール分担金を、各年度の分担金額の乱高下を平準化するため、過年度の支払い実績を5か年の移動平均法を採用して計算します。算出された金額を、保険料と加入トン数に基づきそれぞれ50%ずつ割り当て、外航の全加入船に配賦します。なお、現行年度については、便宜的に直近に終了した保険年度と同値を予想値として使用し、翌年以降に実績値による置き換えを行います。

 

アベイトメント分担金:後述の「2.アベイトメントによるリスク共同負担制度の導入」の項をご参照ください。

 

ネット・ロス・レシオ方式による新保険成績については、「添付資料1. 新ロス・レコードのフォーマットおよび関連用語の定義と解説」をご参照ください。



  1. アベイトメントによるリスク共同負担制度の導入

 

アベイトメント(Abatement。直訳すると「軽減、緩和」)によるリスクの共同負担の仕組みを当組合の正式な運用ルールとして導入します。アベイトメントとは、偶発巨損事故に対して、当組合内で一定金額を設定し(「アベイトメント・レイヤー」と称します)、このレイヤーの対象となる保険金を、全外航組合員で共同して負担する、相互保険の精神に基づく制度です。これまでも、偶発巨損事故の保険金については全外航組合員でご負担いただいておりましたが、この負担額を透明化することを目的とするものであり、組合員に新たなご負担を生じさせるものではございません。

 

アベイトメント導入のメリットは、組合員が大型事故に遭遇した場合、組合全体でリスク負担を行うことにより、当該組合員の保険成績の急激な悪化を緩和し、事故の影響による保険料の増加額を抑制することができる点にあります。

 

アベイトメントは、一事故あたり3百万ドルを超過する全てのクレーム(ただし、免責金額適用後)に対して適用され、事故発生保険年度のクラブ保有額(現在は10百万ドル)に達するまでの金額がアベイトメント・レイヤーの対象となり、全加入船に配賦されます(配賦された金額を「アベイトメント・コスト」と称します)。

 

各組合員にご負担いただくアベイトメント・コストを、過年度においては支払い済み保険金および支払い見込み保険金に基づいて算出します。算出されたアベイトメント費用は、保険料と加入総トン数でそれぞれ50%ずつを割り当て、按分計算により全フリートに配賦します。現行年度については、直近に終了した過去5か年度の平均値を予想値として使用し、翌年以降に実績値による置き換えを行います。

 

アベイトメントの詳細は、「添付資料2. アベイトメントに関するQ&A」をご参照ください。



  1. 保険成績対象期間

 

これまで、保険成績を直近の5か年間および現行保険年度の半年分の通算5.5か年を対象期間としていました。これを直近の6か年を対象期間とし、現行保険年度は別枠で表示し、当該年度において保険成績の大きな変動があった場合には考慮します。

 

以上