ニュース

米国の対ベネズエラ制裁

2021/02/09 第20-023号

本特別回報は、米国政府のベネズエラ海事局(Instituto Nacional de los Espacios Acuaticos、以下「INEA」)に対する最新の制裁措置についてご案内いたします。

 

INEAは、ベネズエラの石油部門において事業を行い、またベネズエラの国営石油会社であるPdVSAに対して支援を提供しているとして、米国の大統領令13850号に基づき、制裁対象者に指定されました。

 

この指定は、船舶所有者の間で、石油やその他の制裁対象分野とは無関係の航海であっても、ベネズエラの港でINEAが提供するサービスを利用したり、そのサービスに対して支払ったりすることにより、大統領令13850号の規定違反にさらされる可能性があるのではないかとの混乱をもたらしました。

 

INEAの指定による混乱に対処するために、OFACはその後、添付のGeneral License 30AGL 30A)を発行しています。

 

背景

 

INEAは、SDNに指定される前から、大統領令13884号に基づいて「ベネズエラ政府」の一つとして、経済封鎖されていました。これは、米国政府の認可がない場合、米国人は、大統領令13884号の発令以来、直接間接を問わず、INEAが関与するいかなる取引に従事することも禁止されることを意味しています。

 

General License 30GL 30)は、通常の港湾使用および経費に関連するINEAとの取引が許可されるように、取引が制裁対象でないことを条件に、通常の港費、例えばタグ、入港税などの支払いを認めていました。しかし、SDNリストにINEAが指定されたことで、GL 30の認可は依然として適用されるのかという混乱が生じました。というのも、GL 30は大統領令13850号によって禁止されている活動や取引については認可しないと規定しており、その大統領令13850号に基づいてINEASDNに指定されたからです。大統領令13850号はGL 30の認可の対象から除外されており、そして今般INEAが大統領令13850号に基づいてSDNに指定されたことにより、他の何らかの認可がない限り、米国人はINEAと取引を行うことができなくなりました。

 

非米国人は米国人と同様の規制には直面しませんが、大統領令13850号に基づいてSDNに指定された者に「重要な支援、商品またはサービス」を提供したと判断された場合には、制裁を科されるリスクがあります。

 

202123日現在の状況

 

上述のジレンマは、OFACGL 30Aを公表したことによって解消されました。GL 30Aは、大統領令13850号によって禁止されているINEA(またはINEA50%以上の持分を所有する事業者)が関与する取引や活動のうち、ベネズエラの港湾の運営または使用に通常付随して必要とされる取引や活動について認可を与えることで、INEAの制裁対象者への指定に対処しています。GL 30Aの認可には例外があり、例えば大統領令13850号によって禁止されている希釈剤に関連する取引やその他の活動については認可を与えていませんが、これはもともとのGL 30での取り扱いと同じです。

 

General LicenseGL)は米国人および米国と接点のある取引に適用されるものですが、米国人が行えばGLの認可対象となる行為を非米国人が行う場合には、制裁の対象とはならない旨をOFACが確認したものと理解しています。したがって、GL 30Aもその政策上、非米国人にも類推適用されるものと考えられます。

 

国際P&Iグループ(IG)は経験豊富な米国弁護士に関連する法律を包括的に検討してもらい、ベネズエラにおいてINEAが提供する通常の港湾サービスの利用とその費用の支払いについては、制裁対象の取引に関連するものでない限りにおいて、大統領令13850号または13884号に基づく制裁が科される可能性は低いと考えられるとの助言を得ています。

 

米ドル以外によるINEAへの支払い

 

GL 30Aによる認可は、INEAが提供する通常の港湾サービスに関連した支払いを処理する米国の銀行にも適用されます。しかし、米国または非米国の銀行は、GL 30Aが公表されているにもかかわらず、より厳格な内部手続を適用することができ、その結果として米ドルで送金が行われた場合、INEAへの支払いが遅延する可能性があります。したがって、GL 30Aは銀行にいくらかの安堵を与えるものではあるものの、銀行が支払いを拒否したり滞らせたりすることはないとの保証をP&Iクラブとして与えることはできません。INEAへの支払いを米ドル以外で行う場合には、そのような送金が可能か銀行または現地代理店に相談することをお勧めいたします。

 

今後また必要に応じて、さらなるガイダンスを公表いたします。

 

なお、これらの事項のガイダンスを、Freehill Hogan & Mahar LLPのニューヨーク事務所のGina Venezia弁護士にご提供頂いたことに感謝いたします。

 

IGのすべてのクラブが、同様の内容の回章を発行しています。