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2020年SOx規制について

2019/07/01 第19-008号

背景

 

船舶汚染防止国際条約1997年議定書(MARPOL条約附属書VI)の2008年改正に基づくSOxの排出規制が、202011日から施行されます。今回のSOx排出規制の施行により船舶からの硫黄排出量の大幅な削減を確実にすることで、海運業界は環境上の義務を果たすことになります。

 

 

2020SOx規制

 

202011日以降、船舶の燃料油の硫黄分許容限度は、3.5% m/mから0.5% m/mに強化されます。MARPOL条約附属書VIの排出規制区域(ECA)で規定されている上限値の0.1% m/mや現地の規制は引き続き適用されます。

 

さらに、国際海事機関(IMO)の第73回海洋環境保護委員会(MEPC 73)にて、非適合燃料油の使用目的での保持禁止が採択され、2020年3月1日から施行されます(MARPOL 条約附属書VI第14規則)。

 

排ガス洗浄装置(スクラバー)を装備した船舶は、船舶のエンジンおよびボイラーの排ガスから硫黄酸化物を除去し、硫黄排出量を許容限度以下のレベルに低減するよう設計されていることから、引き続き0.5% m/mを超えた硫黄含有量の燃料油を保持できるとしています。ただし、オープンループ式スクラバーの使用またはスクラバーからの洗浄水の取り扱いに関する寄港地特有の何らかの禁止措置や追加要件が課されていないかを事前に確認する必要があります。

 

今般、IMOMEPC 74において、適合燃料油の調達が不可能な場合に作成する書類(FONAR)を含めた追加のガイドラインが策定されました。同ガイドラインは以下よりご覧いただけます。

http://www.imo.org/en/MediaCentre/PressBriefings/Pages/10-MEPC-74-sulphur-2020.aspx

 

船舶が適合燃料油を調達できなかった場合、MARPOL条約附属書VI18規則に基づき、組合員は適合燃料油が調達できなかった証拠および対応策等を記録したFONARを締約国に提出することができます。しかし、FONARは免除措置ではなく、締約国が条約違反の船舶に対して強制措置を検討する際に考慮する多くの書類の一つにすぎません。またIMOは、ポートステートコントロール(PSC)向けのガイドラインも発行しています。組合員は、PSC検査に基づく罰則等の措置に直面した場合には、条約を遵守するために努力を尽くしたことを書面で十分に立証しなければなりません。

 

2020年SOx規制の遵守に対する限られた例外として、船舶の安全の確保もしくは海上での人命救助のためにやむを得ず生じた排出、または船舶・機器が事故で損傷して生じた排出は、(一定の条件付きで)許容されます。

 

 

P&I保険のてん補

 

国際P&Iグループ(IG)は、2020SOx規制が海運業界にとって重要な課題であることを認識し、IMOにおける議論を注視しています。

 

2020SOx規制違反に対する罰則は、過怠金、拘留、そして極端な場合にはPSCによる入港禁止措置が可能性として考えられます。同規制の導入に伴うIG加盟クラブのルールの改定はなく、クラブは従前どおり、MARPOL条約違反は容認しません。ただし、偶発的に生じた排出規制違反に対する組合員の責任(過怠金を含む)は、クラブのルールに従って、P&I保険の対象となり得ます。これには組合員以外に課された過怠金に対する弁済義務も含まれます。

 

上述以外の過怠金、たとえば、MARPOL条約上の書類やその他の要求事項に対する違反(不正確または不適切な記録管理、非適合燃料油の保持または使用等)に関するてん補の可否は、各クラブの理事会の裁量によって判断されます。クラブが保証を提供する場合には、クラブが適当と認める保証(通常、現金か銀行保証状)が必要となります。このようなクラブの姿勢は、MARPOL条約違反に関するこれまでのIGの回報から変更はありません。

 

また、2020SOx規制違反によって、これまでには見られなかったようなP&Iクレームが発生する可能性があります。たとえば、承認されたスクラバーを使用したものの、相当な注意を尽くしても発見できないような機械的欠陥があり、それによって生じた排出規制違反や汚染洗浄水の排水違反が考えられます。一方、同規制の違反によって船舶が不堪航であるとみなされ、その結果、保険てん補に支障が生じる可能性も考えられます。個別案件の状況によりますが、規制違反が一概に不堪航とみなされるわけではなく、てん補が必ずしも受けられなくなるというわけではありません。

 

個別案件においてご不明な点がある場合は、当組合にご相談ください。

 

国際P&Iグループの全てのクラブが同様の内容の回章を発行しています。