中国-船舶バラスト水ならびに沈殿物の監視および管理規則
中国のコレスポンデンツ、Huatai Insurance Agency & Consultant Services Ltd.より情報を入手しましたのでご案内します。
要 訳
中国は2018年、船舶のバラスト水および沈殿物によって運ばれる有害水生生物や病原体による汚染や損害から同国海域の生態系、国民の健康、天然資源および財産を守るため、「2004年の船舶のバラスト水および沈殿物の規制および管理のための国際条約」(国際バラスト水条約)を批准しました。中国海事局(MSA)は、2019年1月22日に発効済みの同条約を施行するめに、「船舶バラスト水ならびに沈殿物の監視および管理規則」を公表しています。
船主や運航者が新しい規則を理解し遵守するため、本サーキュラーで同規則の主な内容を紹介します。
適用対象
中国管轄海域で航海、停泊、運航する外航船
一般規定
船舶は、以下の証明書を船上に保持する必要がある。
- 国際バラスト水管理証明書(所管官庁またはその認可を受けた船舶検査機関が発行したもの)
- バラスト水管理計画書(所管官庁またはその認可を受けた船舶検査機関が発行したもので、かつ船舶の実際の作業に適合したもの)
- バラスト水記録簿(少なくとも、バラスト水作業の実施時間、緯度・経度、内容は必要)
- バラスト水管理システムの型式証明書の写し(バラスト水管理システム搭載船舶が対象)
- その他関係書類・証明書
船舶のバラスト水および沈殿物の管理
条約の要件に従ってバラスト水の交換を必要とする船舶は、最寄りの陸地から少なくとも200海里、かつ少なくとも水深200メートルの海域でバラスト水交換を行う必要がある。航行距離が200海里未満の場合は、中国と関連する隣接国との間の代替合意がある場合を除き、最寄りの陸地から50海里以上、かつ水深200メートル以上の海域で交換を行うことができる。
条約に従ってバラスト水処理を義務付けられている船舶は、次の要件を満たす数と大きさの水生生物を含むバラスト水のみを排出できる。
- (1) 50ミクロン以上の水生生物はバラスト水1㎥あたり10個未満
- (2) 10ミクロン以上50ミクロン未満の水生生物はバラスト水1mlあたり10個未満
- コレラ菌はバラスト水100mlあたり1コロニー形成単位未満。大腸菌は100mlあたり250コロニー形成単位未満。腸球菌は100 mlあたり100コロニー形成単位未満
バラスト水および沈殿物管理責任者である上級船員がバラスト水記録簿を作成・署名し、そのうえで船長が各ページに署名する必要がある。バラスト水記録簿の記録は、本船の使用言語で記入すること。使用言語が英語、フランス語、スペイン語のいずれかでない場合、各記録はそのいずれかの言語に翻訳する必要がある。使用中のバラスト水記録簿は2年間船上で保管し、その後は所属会社が3年間保管する必要がある。
さらに、バラスト水を排出する船舶は、12時間前に現地MSAへの報告が求められる。着岸後、本船またはその代理人は、国際航行船の輸入港申告を行う際にバラスト水報告書を現地MSAに提出する。報告書はMSAの要件に応じて書面または電子データをアップロードする方法で提出できる。
バラスト水および沈殿物が処理されずに排出される場合、または基準に達していない場合、船舶はそのバラスト水および沈殿物を受入処理業者に引き渡す必要がある。
受入処理業者はバラスト水および沈殿物の受領書を本船に対して発行する。受領作業が完了し、船長が完了確認の署名を行った後、船舶は受領書をバラスト水記録簿と共に保管する。また、バラスト水および沈殿物の受入処理が、その海域の生態系に二次汚染を発生させないこと。
バラスト水および沈殿物の管理の免除
以下のいずれかの場合は、船舶またはその代理人は、バラスト水および沈殿物の管理の免除を現地MSAに申請できる。
- 中国と他国によって指定されたバラスト水管理を相互免除された海域内のみを航行する船舶
- 中国管轄海域および公海上のみを航行する船舶
- 飲料水のみをバラスト水として使用する船舶
- 無人バージ
- 船舶からの汚染物質の調査、回収および除去を行う特殊船
船舶またはその代理人がバラスト水および沈殿物の管理の免除を申請するには、次の書類の提出が必要。
- 船舶国籍証書および船舶登録証書の写し(外国船舶に適用)
- 条約に従ったバラスト水および沈殿物の管理をすることができない旨の陳述書
- 有害水生生物や病原体のバラスト水および沈殿物への混入を最小限に抑えるための対策案
- 免除された海域のみを航行するという船長の宣誓書
現地MSAは、免除要件を満たす船舶に対し免除証書を発行し、最長5年までの免除措置期間を許可することがあります。免除期間の2年目から3年目の間に、管轄のMSAはこれらの免除対象船舶に中間検査を実施します。
2019年1月22日より中国各港の現地MSAは、管轄海域を航行する船舶のバラスト水および沈殿物の管理を監視し検査を開始しますが、検査対象には証書だけでなく、バラスト水管理業務、バラスト水管理システムの操作、バラスト水および沈殿物の受入と処理等に関する船員の精通度も含まれます。
「船舶バラスト水および沈殿物の監視と管理のための規則」はMSAが公表した一般的なガイダンスです。現地MSAは、独自のバラスト水規制ガイドラインおよびサンプリングやテスト方法を決めることが可能なため、船主は、本船が中国入港前に現地代理店に同地の要求事項について最新情報を入手することをお勧めします。また、罰則や問題発生を回避するため、同規則および国際バラスト水条約の関連要件を確実に遵守するようお願いします。
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