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中国-民法総則の施行

2017/12/04 No.933
  • 外航

題記の件に関し、中国(上海)のSloma & Co.法律事務所より以下の情報を入手しましたのでご参考に供します。


中国では2017年3月27日に全国人民代表大会で民法総則(以下、総則)が可決され、2017年10月1日に同総則が施行となりました。中国では民法通則(以下、通則)が1987年から施行されていますが、現状では不十分な内容となっていたため、新たに民法の総則を制定しました。


(注)中国では民法各編が個別の法律として存在していますが、これらを一つにまとめ民法典を作成することを目指しており、2020年までに民法の法体系を整備していく予定です。


ここでは新たに施行された総則中、海運や海上保険に影響があると思われる失踪と時効の規定につきご案内いたします。


I.失踪の起算日

失踪の起算日が、総則の第41条で、失踪者と音信不通となった日から起算することが明確に規定されました。


II.失踪者の失踪宣告

総則では、通則と同様に、危難失踪の場合には失踪期間が2年、普通失踪の場合には失踪期間が4年経過後に利害関係人が裁判所に対して失踪宣告の申立てができることを規定していますが、その第46条で失踪宣告の申立て期間を短縮できる以下の規定設けました。


第46条

『危難によって失踪となった場合に、当局が失踪者の生存可能性がないと認めたときには、利害関係者は2年の経過を待たずに失踪宣告の申し立てすることができる。』


船舶の衝突などの海難事故で船員と音信不通になった場合に、船員の相続人/親族は、危難の結果、失踪者の生存可能性はないとする当局の認定書があれば、即時に失踪宣告を申し立てられることになります。


しかしながら総則は、かかる認定書の発行権限がどの当局にあるのかを明示しておりません。中国司法の慣例では、一般的に、船員の住居地を管轄する警察がそうした場合の当局となります。ただし、海難の場合、調査に当たる機関(たとえばMSA)に認定書の発行権限が今後付与されるものと思われます。


III. 死亡日

総則の第48条で、失踪者の死亡日は、失踪者が音信不通となった危難日もしくは裁判所が認定した日となることが明確に規定されています。


IV. 時効

今回の総則で最も留意すべき点は、民事請求の時効が、その他特別法の強行規定がない限り(たとえば中国海事法)、3年に延長されたことです。通則では一般民事請求の時効は2年、負傷に関する請求は1年でした。

さらに、総則の188条では、民事請求の時効の起算日は、権利者が自らの権利侵害の事実と権利を侵害している侵害者を知った日、または知り得べき日から起算されることが明記されました。


同時に、これまで不文律であった次の2つの司法の慣習が総則で明文化されました。


第192条

『民事請求で時効が完成した場合、債務者は債務不存在確認訴訟を提起できる。』


第197条

『時効の期間、時効の期間計算方法、時効の中断事由は法律によって定められる。したがって、当事者間で時効利益を放棄したり、時効延長の合意をしたりすることはできない。』