改正2006年の海上の労働に関する条約(MLC)の発効についてー金銭上の保証要求
題記の件に関し、2016年6月24日付特別回報第16-009号をご参照下さい。
上記回報では、改正MLCが2017年1月18日に発効することをご案内致しました。同日以降、改正MLC対象船は、下記に関する責任について保険者あるいは他の金銭上の保証の提供者が発行した保険あるいは他の金銭上の保証が手配されていることを示す証書の本船内保持が要求されます。
- 改正MLC 第2.5規則、第A2.5.2基準及び第B2.5指針に従って、船員の未払賃金、送還費用及び付帯費用
- 改正MLC第4.2規則、第A4.2基準及び第B4.2指針に従って、船員の死亡あるいは長期の後遺障害に対する補償
国際P&Iグループ(IG)加盟全クラブの理事会は、クラブが必要な証書を提供すると決定しました。本回報の目的は、組合員が金銭上の保証要求を満たせるようクラブが講じている方策につき組合員に最新情報を提供することです。本回報では最重要事項をお知らせし、詳細は添付1の「よくある質問(FAQs)」でご案内致します。
MLC証書[1]を必要とする船舶
次の船舶にはMLC証書が必要です。
- 改正MLC締約国籍船舶、あるいは
- 改正MLC締約国に寄港する船舶
改正MLC締約国の詳細は国際労働機関(ILO)が提供するMLCデータベースで参照可能です。
改正MLC非締約国籍船で改正MLC締約国に寄港しない場合は、MLC証書は不要です。
改正MLC適用対象船舶の区分についての詳細情報は、「よくある質問(FAQs)」(添付1)をご参照下さい。
手続き
IG加盟全クラブはまもなく証書取得手続きについて組合員にご案内する予定です。証書は添付2及び3に記載の文言に基づいてPDFフォーマットでクラブから組合員に送付されます。組合員は同証書を印刷し、2017年1月18日までに船員が閲覧可能な船舶上の目立つ場所に確実に掲示しなければなりません。
証書が発行されると、クラブのウェブサイト上の船舶検索サイトに記録されます。
証書はクラブが発行するため、船籍国に証書の発行を申請する必要はありません。しかし、船籍国の中には記録用として証書のコピーを提出するよう同国船籍の船主に要求する国があるかもしれません。
現在加入しているクラブと契約更改しようとしている組合員は2018年2月20日まで有効な証書を取得することができるでしょう。
保険
証書の下で生じる責任のうち、現状のP&I保険の船員に対する通常カバーの範囲内になるものもあります。たとえば、クラブの保険契約規定は、通常、死亡あるいは長期後遺障害に対する補償をカバーしています。同様に海難に伴う送還費用及び賃金は通常カバーの一部になっています。しかし、その他の責任、特に改正MLC第2.5.2基準に述べられた遺棄規定から生じる送還費用及び賃金は、通常カバーの範囲外になります。
本回報の添付4にMLC特別条項(以下、特別条項)のサンプル文言を示しています。確定した文言(英文版及び和文版)はまもなくご案内する予定です。クラブは特別条項にしたがって証書を提供することが可能です。特別条項は、証書に述べられたMLC規則及び基準の範囲内となる船員が提起するクレームをクラブが支払う旨を規定しています。また、特別条項は、もしそのような支払がP&I保険の通常カバーの範囲外である場合は、組合員はクラブに弁済する義務がある旨を規定しています。
再保険
P&I保険の通常カバーの範囲外となるクレームは、IGプール及び現在IGで手配されている再保険の対象外となります。IGはMLC特別条項の下で発生しP&I保険の船員に対する通常カバーの範囲外となる責任について、別途、再保険を手配中です。再保険手配は進行中で、再保険のてん補限度額は、すべての組合員にとって十分なものとなる予定です。但し、船員数が非常に多いフリートは例外となる可能性があります。
全般
改正MLCの金銭上の保証要求は、船主、保険者、船籍国及び寄港国に多くの課題を生じさせています。IMO条約下での強制保険システムと類似している点もありますが、相違点がかなりあります。たとえば、改正MLCは証書の文言につき規定を定めていません。さらに、個々の締約国は、船籍国及び寄港国の双方の観点から、どのように改正MLCを施行していくのかに関して裁量があります。本回報発行時点で79ヶ国が本条約を批准しています。IGは18ヶ国で構成される非公式な連絡会の設立に助力し、同連絡会に相談したり、IG提案の方策についてコメントを得たりしました。その目的は、改正MLCの要求を満たし改正MLCが適用されるすべての国に受け容れられる保証システムを提供するためです。新たな最新情報を入手致しましたら、お知らせ致します。
国際P&Iグループのすべてのクラブが同様の内容の回報を発行しています。
[1]ここでいうMLC証書とは、船籍国が発行するMLC上の証書ではなく、改正MLC上で必要となる金銭上の保証が手配されていることを証明する証書を指します。