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トルコ-汚染に対する過怠金について(その2)

2016/01/19 No.794
  • 外航

題記に関し、特別回報(第15-007号)でトルコ水域での汚染物質排出に関する規則の概要とその遵守についてお知らせしました。

今回のJapan P&INewsでは、コレスポンデンツからの情報に基づき過怠金タリフの更新及び補足情報についてお知らせいたします。

 

1. 過怠金の決定方法

 

現地当局は汚染の事実を確定し、関連規則(Turkish Environment Code) (以下"Code"と略す)に基づき過怠金を課す権限を有しています。Codeではサンプルの採取や写真・動画記録が不可欠とされていますが、CodeのArticle10.5では本船が現場から離れ、上記のような証拠収集が現実的に不可能である場合、当局は「決定書(determination minute)」を発行することで過怠金を課すことができるとされています。このような例外規定が当局に広範な権限を与えることになり、行政裁判所へ過怠金賦課に対する異議を申し立てても良い結果が得られにくい理由となっています。

 

決定書の発行には船長による署名は不要とされています。船長が書類への署名や受領を拒否したとしても、当局は船舶の裁判手続を開始することができ、結果として、当該船舶は過怠金を支払うまで差し止められることになります。同様に、船長が受領を拒否した場合には、当局が採取したサンプルを船長に渡さなくてもよいとの例外規定があります。

 

2. 過怠金に対する不服申立

 

過怠金の通知があった日から30日以内に行政裁判所に対して不服申立を行うことができます。証拠はすべて当局により収集されたものであり、当局の決定書のみで過怠金が課されることが既成事実化しています。従って、船主は汚染を防ぐためのあらゆる手段を尽くしたことを証明する厳格責任から免れることはできません。そのため、良い結果を得ることはかなり困難となります。一方、過怠金に対する異議申立をもってしても、当局による執行を防ぐことはできません。

 

3. P&Iクラブの保証状

 

Code の関連規定では、P&Iクラブの保証状をもって本船の差押えを解除することができるとされています。しかしながら、特に汚染事故の大半が発生しているIstanbulにおいては、金融関連の規則に反するという理由から当局はP&Iクラブの保証状を受け入れず、現金の支払いを要求しています。他方で、当局がP&Iクラブの保証状を受け入れる場合でも、当局からの要求を受けてから短期間(例えば10日)のうちに現金を支払うとの条件を付されていることに留意しなければなりません。

(注:P&Iクラブは、通常このような支払い確約付きの保証状は発行しません。)

 

Turkish Code of Misdemenor(軽犯罪法)によると、不服申立期間(過怠金通知から30日以内)経過前に過怠金の支払いを行うことで、25%の減額が適用されることになっています。なお、この支払を行った場合でも、不服申立を行うことができます。

 

4. 2016年版過怠金タリフ

 

最新版の過怠金のタリフは以下の通りです。CodeのArticle 23では、汚染事故が3年以内に連続して発生した場合、2回目の過怠金は2倍、3回目以降は3倍となるとされています。

 

(1)タンカーによる石油及び石油製品の海上流出

a)1,000総トンまで: 1トン当たり81.78トルコリラ

b)1,000総トンから5,000総トンまで: 1トン当たり20.40トルコリラ

c)5,000総トン以上: 1トン当たり1.96トルコリラ

 

(2)タンカーによるダーティーバラストの海上流出

a)1,000総トンまで: 1トン当たり61.32トルコリラ

b)1,000総トンから5,000総トンまで: 1トン当たり12.23トルコリラ

c)5,000総トン以上: 1トン当たり1.96トルコリラ

 

(3)船舶及びその他の海上輸送手段による石油及び石油製品並びにダーティーバラストの海上流出

a)1,000総トンまで: 1トン当たり40.87トルコリラ

b)1,000総トンから5,000総トンまで: 1トン当たり8.14トルコリラ

c)5,000総トン以上: 1トン当たり1.96トルコリラ

 

(4)船舶及びその他の海上輸送手段による廃棄物及び排水の海上流出

a)1,000総トンまで: 1トン当たり20.40トルコリラ

b)1,000総トンから5,000総トンまで: 1トン当たり4.03トルコリラ

c)5,000総トン以上: 1トン当たり0.77トルコリラ