クリミア及びセバストーポリに関するEU制裁についてー2014年6月23日付Council Regulation (EU) No.692/2014
ロシアによるクリミア及びセバストーポリの編入に対し、 EU は 2014 年 6 月 23 日付で Regulation 692/2014 を発行し、クリミア又はセバストーポリ産物資の輸入及び当該物資の輸入に関連する保険 / 再保険提供を含む融資 / 金融支援の提供 ( 直接 / 間接を問わない ) を禁止する貿易制裁を科しました。
禁止事項
1) Regulation の Article2 は以下の行為を禁止しています。
● クリミアもしくはセバストーポリ産の物資を EU へ輸入すること。
● 直接 / 間接を問わず、クリミア又はセバストーポリ産物資の輸入に関連する保険 / 再保険を含む融資 / 金融支援を提供すること。
2) 同 Regulation において「クリミアもしくはセバストーポリ産物資」とは、 1992 年 10 月 12 日付 Regulation EEC 2913/92 の Article 23 及び 24 に従い、クリミアもしくはセバストーポリで完全に生産された (wholly obtained) か、同地で実質的に最終製造された (undergone their last substantial transformation) ものとされています。なお、 Regulation2913/92 の Article 23 は、「その国で産出される物資」とは当該国で完全に生産 / 産出されるものと規定しており、「当該国で完全に生産された物資」とは以下を意味するとして います。
(a) 当該国内で産出される鉱物性産品
(b) 当該国内で収穫された植物性産物
(c) 当該国で生まれ飼育された生動物
(d) 当該国で飼育された生動物から生産された製品
(e) 当該国で狩猟 / 漁獲されたもの
(f) 当該国に登録されその国を船籍とする船舶による領海外での漁獲物
(g) 上記 (f) に規定する漁獲物を当該国に登録されその国を船籍とする工船上で加工した物
(h) 当該国が海底 / 底土資源を開発する排他的権利を有している領海外の海底 / 底土から採掘された産物
(i) 再度原料に戻す目的で当該国内で回収された中古品及び製造作業から発生するゴミ及びスクラップ
(j) 上記 (a) から (i) の物資もしくは製造過程の全段階を通じてその派生物からのみ製造される物資
3) Regulation EEC2913/92 の Article 24 は、 1 か国以上で製造された物資は、新たな製品の製造もしくは製造の重要な工程を行うことを目的とし、その目的のための設備を備えた事業において最終的、実質的、経済的な作業もしくは工程が行われた国で産出されたものとみなすと規定しています。
4) 新 Regulation はクリミア及びセバストーポリから EU への貿易活動を包括的に制限しており、規制の適用対象となる組合員 ( 下段の 7 、 8 及び 9 をご 参照 ) はクリミア及びセバストーポリの航海を締結する前にクラブに相談すべきです。保険並びに再保険の提供が禁止されることから、国際 P&I グ ループ (IG) 加盟各クラブは現行の保険契約規定に規定される保険カバー除外 / 解約規定に依拠することになり、クラブは制裁活動に対して保険もしくは再保険を提供することが出来ず、また、クラブは制裁規定に違反する可能性のある活動に意図的に加わることは出来ません。
5) Regulation の Article 6 は、 Regulation で禁止される契約や取引に関するクレームの支払い ( 保証状の発行やクレームハンドリングを含む ) に関し、当該クレームが 2014 年 3 月 17 日付 Council Regulation 269/2013 にリストされる制裁対象者や当該制裁対象者の代理人、 Regulation 692/2014 の禁止事項に違反していることが EU 当局により確認された者により提起されたものである場合、当該クレームの支払いを禁止しています。
除外規定
6) Regulation の Article3 は、以下の場合には禁止規定は適用されないとしています。
(a) 2014 年 6 月 25 日までに締結された契約、もしくはその実行のために必要な付随契約で、 2014 年 9 月 26 日まで実施されるもの。但し、当該契約を実施しようとする者は遅くとも実施の 10 日以上前に EU 各国当局に事前通知を提出すること。
(b) Regulation (EU) No978/2012 、 Regulation(EU) No.374/2014 、 EU/ ウクライナ間協定に従って、産出証明が発行されていて「特恵関税」の対象となりウクライナ当局が利用可能なクリミアもしく はセバストーポリ産物資
適用範囲
7) Regulation の Article 10 は、 EU 領域内、 EU 加盟国の管轄下にある船舶上、 EU 加盟国の全国民 ( 所在地を問わない ) 、 EU 加盟国法下で設立された EU 内外に所在する法人等、に対して同 Regulation が適用されると規定しています。
8) また、 Regulation は EU 内で行われるあらゆるビジネスに関して全法人に適用されます。
9) 上記広範な適用範囲により、 EU 国民、 EU 管轄下の組合員、 EU 加盟国を旗国とする船舶が禁止された貿易取引を行うことは違法となります。さらに、保険及 び再保険の提供禁止により、 EU の管轄下にあるクラブは禁止される貿易活動に従事する組合員に対して船籍や国籍を問わず保険提供が出来ません。また、禁止 活動に対する制裁は、禁止活動及びその保険が EU に関係する限り、非 EU 管轄下の組合員やクラブにも適用されます。 IG 加盟全クラブの保険契約規定は、制 裁を理由として保険提供が違法となる活動や取引に関して保険カバーを除外する規定を設けています。
10) Regulation は 2014 年 6 月 25 日に発効しました。
国際 P&I グループの全てのクラブが同様の内容の回報を発行しています。
以上