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微粉鉄/鉄鉱石 – オーストラリア、ブラジルによる IMSBC Code新スケジュールの早期発効について

2014/02/06 第13-027号
  • 外航
概要
2013年9月に開催されたIMOでの第18回DSC(危険物・個体ばら積貨物・コンテナ)小委員会において、微粉鉄(Iron Ore Fine)の海上運送に関するIMSBC Codeの新スケジュール(“新スケジュール”)、及び鉄鉱石(Iron Ore)の運送に関する改訂スケジュールが、2015年の第95回IMO海上安全委員会にて最終承認を得られることを条件に採択されました。最近発行された新スケジュールに関するIMO回章DSC.1/Circ.71(添付)に従い、オーストラリア及びブラジル両国は新スケジュールを前倒しで発効させました。この結果、上記2か国から輸出される「微粉鉄」については、鉱物の性質によりグループA(液状化貨物、運送許容水分値(TML)を超える水分値で輸送されると液状化が懸念される貨物)として新たに再分類されております。本回章ではIMSBC Codeと荷送人に求められる証明・申告における、貨物分類の決定基準についてご案内致します。

はじめに
新スケジュールは前記小委員会にてブラジル・オーストラリア所管省庁から共同提案され、国際P&Iグループ率いる業界団体(※1)によって支持されております。この新スケジュールは、リオ・ティント、BHPビリトン並びにヴァーレが微粉鉄の海上輸送時の反応につき広範囲に及ぶ調査研究を行ったことによる成果です。この研究結果については、独立の調査機関であるロンドンのImperial College及びMinton, Treharne and Davies(MTD)により、新スケジュールの根拠が適切かつ公平な科学的分析に基づいていることが検証されております。

国際P&Iグループは上記荷主の調査結果につきImperial College及びMTDでの検証のため調整を行うとともに、この問題に関して船主団体を牽引してまいりました。新スケジュールは2017年1月1日より全てのSOLAS締約国で強制的に実施されると見込まれますが、IMO回章DSC.1/Circ.71は各国ができるだけ早期かつ自主的に新スケジュール及び新しい分析方法を採用することを推奨しております。

背景
今回のIMSBC Codeの改訂は、ある種類の微粉鉄をグループA(液状化貨物)に分類するとともに、これまでグループC(液状化も懸念されず有害な化学作用も有しない貨物)に分類されている鉄鉱石につき現行のスケジュールを変更するものです。 

微粉鉄の新たな試験法としては、修正プロクター・ファガベリ法(修正P/F法)を用いて微粉鉄の運送許容水分値(TML)を決定することが合意されております。この修正P/F法試験は微粉鉄のみに適用されます。しかしIMSBC Code附属書2記載の従前の試験法は依然としてその他の貨物及び微粉鉄についても有効のままです。

針鉄鉱含有量と粒径
鉄鉱石貨物が新スケジュールのもとでの「微粉鉄」の範疇に入るのか、もしくは「鉄鉱石」の改訂スケジュールの範疇に入るのかは粒径分布と針鉄鉱(水酸化物)の含有量に左右されます。研究によれば、針鉄鉱の含有量が30%またはそれを超える場合には液状化の懸念はないものの、含有量が25%の物質については液状化の懸念がないとは言えないとの結果が出ております。これを踏まえ、保守的な基準として、針鉄鉱の含有量が最低35%以上となる微粉鉄をグループCの貨物とすることで合意されました。

粒径分布に関しては、粒径1mm未満の貨物が10%以上または10mm未満の貨物が50%以上含まれる鉄鉱石は、質量35%以上の針鉄鉱含有量が認められない限り微粉鉄(グループA、液状化貨物)として分類されます。また、35%以上の針鉄鉱含有量がある場合においては、荷送人から船長への国際的・国内的に認可を受けた標準的な方法により針鉄鉱含有量が申告されることを条件に、現行の鉄鉱石のスケジュール(グループC)に従って輸送することができます。

この基準はさしあたりオーストラリア及びブラジルからの船積貨物に関して適用されております。国際P&Iグループは両国の採鉱業者及び所管省庁と緊密に連絡を取っており、この新スケジュールが前倒しで実施されていることが確認されています。

オーストラリア
オーストラリア海上安全局(AMSA)はIMO回章DSC.1/Circ.71で奨励されているように新スケジュールの自主的な実施を進めるべく除外証明書(Exemption Certificate)を近時発行しています。

この結果、オーストラリアから鉄鉱石及び微粉鉄を輸出する荷送人は、微粉鉄の新スケジュール、修正P/F法試験、改訂鉄鉱石スケジュールがすでに現行のIMSBC Codeに組み込まれているものとして採用することが可能です。微粉鉄については、オーストラリアのある荷送人がこの除外制度を利用すると予想されます。国際P&Iグループは、オーストラリアのある大手の微粉鉄荷送人が、新しくグループA(液状化貨物)に分類される貨物の運送許容水分値を決定するため、すでに修正P/F法による試験を採用していると認識しております。

ブラジル
ブラジルの海事当局は2013年12月23日に発行した回章NO.390/DPCにて、微粉鉄の新スケジュール、修正P/F法試験、鉄鉱石の改訂スケジュールが2013年12月27日より発効すると通知しております。

国際P&Iグループは、ヴァーレがカラジャスで採鉱された微粉鉄をグループA(液状化貨物)に分類しており、適宜修正P/F法試験を実施しているものと理解しております。

実務に関して
前倒しで微粉鉄の新スケジュール、修正P/F法試験を採用している国を含め、IMSBC CodeによってグループA(液状化貨物)に分類される貨物に関しては、船積み時の水分含有量(MC)及び運送許容水分値(TML)を証明する署名入りの検査証明書(※2)に加えて貨物申告書が船積前に荷送人から船長宛てに提出されなければなりません。運送許容水分値は、IMSBC Code上貨物の運送にあたり安全とされる最大水分含有量と定義されており、当該船舶がその貨物を積載するにあたり「特別な建造」や「特別な装置」が施されていない限り、運送許容水分値を超える水分含有量の貨物については船積みを許可すべきではありません。また荷送人による貨物の申告書に含まれる水分含有量の申告書には、荷送人が知っている限りの水分含有量の平均値を船長へ通知させるべきです。

もし微粉鉄が、針鉄鉱の含有量が質量35%以上であることを理由にグループCとして運送される場合には、荷送人は船積前に針鉄鉱含有量に関する申告書を船長に提出しなければなりません。

微粉鉄の新スケジュール及び修正P/F法試験を早期に実施しているのは、現時点でオーストラリアとブラジルの2か国のみであるようですが、IMSBC Codeの附属書2に記載されている現行の試験法は上記2か国において現在もなお有効とされております。

船長が荷送人から微粉鉄の新スケジュール及び修正P/F法試験に基づいて貨物の申告が行われた場合で、特に船積国の当局がまだIMO回章DSC.1/Circ.71に従った新スケジュールや修正P/F法試験を有効と認めていない場合には、船積前にP&Iクラブの助言を仰ぐべきです。

また、新スケジュール・修正P/F法試験、針鉄鉱の粒径・含有量、修正P/F法試験により決定された運送許容水分値に基づいた荷送人の申告に疑義がある場合もP&Iクラブの助言を仰ぐことをお勧めします。

結論
ある特定の地域からの微粉鉄の海上運送に関する国際P&Iグループの予てからの懸念に対して、IMSBC Codeへ微粉鉄の新スケジュール及び修正P/F法試験を取り入れるためのIMOの努力は成功をもたらしたといえます。国際P&Iグループは今後も各国所管省庁と連携し、他国がIMO回章DSC.1/Circ.71に従った新スケジュールを早期に実施するか否かにつき情報収集していく方針です。

なお、国際P&Iグループの全てのクラブが同様の回章を発行しております。

※1 国際P&Iグループ、Intercargo(国際乾貨物船主協会)、ICS(国際海運会議所)、IFAN(国際航行援助施設基金)並びにBIMCO(ボルチック国際海運協議会)
 
※2 改訂IMSBC Codeは、積地の関係当局が認可した者が発行する証明書を要求しております。 この改訂は2015年1月1日付で強制化される予定です。 各国はIMO MSC.1/Circ. 1441に従い、予めこの改訂を施行するよう推奨されております。