ニュース

オーストラリア改正油濁法について

2012/03/26 第11-028号
  • 外航

近年の油濁事故を受け、オーストラリアは既存の油濁法である「The Protection of the Sea (Prevention of Pollution from Ships) Act 1983」(以下1983 Act)及び「The Navigation Act 1912」(以下1912 Act)を改正し、新たに「The Maritime Legislation Amendment Act 2011」(以下2011 Act)を制定しました。2011 Actは油濁事故の際の既存の船主/船長の責任を強化することに加え、用船者にも責任を課す内容となっています。


1983 Actは、油濁事故について船主及び船長に対して厳格な刑事責任を課すものですが、今般の2011 Actでは船主及び船長に加え用船者の油濁事故に対する責任が導入されるとともに、違反の場合の罰金の上限額が500 penalty units(AU$55,000、約US$57,500)から20,000 penalty units(AU$2.2 million、約US$2.3 million)に大幅に増額されました。当該罰金は船主、船長、用船者それぞれに科されます(但し、実際には船主には用船者よりも高額の罰金が科されることになると思われます)。


一方、1912 Actは船舶の安全航行に関する規定を定めたものですが、2011 Actでは船長が沿岸及び排他的経済水域の海洋環境の損傷又は油濁を引き起こすような航行をした場合、及び沿岸及び排他的経済水域の海洋環境の損傷又は油濁を引き起こさないような航行に努めることを怠った場合の罰則が規定されました。違反の場合、船長は刑事罰と民事罰の両方を問われ、刑事罰では過失責任が、民事罰では厳格責任が問われることになります。また、刑事罰の罰金の上限は600 penalty units(AU$66,000、約US$70,000)で、民事罰の罰金の上限は6,000 penalty units (AU$660,000、約US$700,000)とされています。


さらに、2011 Actではグレートバリアリーフのように特に環境への影響が大きいエリアにおいて船長に対して通報義務を課しており、違反した場合には最大240 penalty units (AU$26,400、約US$28,000)の罰金が科されます。


上記の通り、2011 Actは油濁損害に対する用船者の責任を導入するとともに、既存の船主/船長の責任を強化する内容になっており、油濁事故の場合、事故対応/処理費用が発生することに加え高額の罰金が科せられる可能性があります。組合員の皆様におかれましては、上記ご留意の上、事故防止に万全の体制をお取り頂きますようお願い申し上げます。