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フィリピン海外労働者法−共和国法第10022による改正(その2)

2010/09/29 第10-013号
  • 外航

2010年3月8日付で成立したフィリピン海外労働者法の改正(the Amended Migrant Workers Act - 以下AMWA)に関する、2010年6月発行の特別回報第10-005号をご参照下さい。


法律の改正後、関連政府機関によりOmnibus Implementing Rules and Regulations (IRR)が施行され、また、同法の強制保険条項の適用に関するInsurance Commission “Guidelines” (ICG)が制定されました。しかし、船員の雇用に関するICGの適用は、10月下旬頃と見込まれているPOEA(Philippine Overseas Employment Administration)による決議、通達がなされた後に実施されることとなります。


組合員への影響


前回の回報でもお知らせしたとおり、国際P&Iグループとしては、AMWAの強制保険条項に係わる問題点、組合のカバー範囲がAMWAの要求する保険の最低要件を満たさない点、また組合は各船員に対して直接保険を提供するものではない点を懸念しています。


例えば、policy deductiblesに係わる問題があり、AMWAでは被雇用者から提起される“moneyclaims”に関し保険手配を義務付けていますが、その様なクレームにはP&I保険の対象とはならない賃金未支払に関する紛争を含む可能性があります。同様に、保険手配の義務において、P&I保険がカバー対象外とするテロや戦争による責任も除外していません。また、AMWAにより組合員が求められる、最低ひと月US$100(最大6ヶ月分まで)の“特別手当”についても、P&I保険のカバー対象にはそぐわないものです。


国際P&Iグループでは、IRR及びICGの策定に直接関与する機関に対して、これらの懸念事項を強調してきました。交渉の間は、関係する国際/国内の船主団体とは特に綿密に意思疎通を図りつつ、Joint Manning Group (JMG)に対して、これらの懸念事項につき随時申し入れを行なってきました。


このような粘り強い訴えにも係わらず、海上労働分野における現在の実務に沿うようにICGが修正されることはありませんでした。


AMWAでは、船員の海外での労働に必要なPOEAによる海外雇用証明(Overseas EmploymentCertificate - OEC)発行のため、マンニング/人材派遣会社が、船員のために保険手配を行うか、若しくは当該保険が手配されていることを証明することが義務付けられています。補償の証明は、AMWAの最低要件を満たすことを条件として、フィリピン保険委員会に登録された民間保険会社が発行する保険証券、または、船員が外国保険会社に付保している場合は、マンニング/人材派遣会社による補償の証明書などに依ってなされるとしています。


上記に係わらず、POEAは補償の証明書(Certificate of Cover - CoC 添付資料をご参照)がマンニング会社からPOEAの正式なレターヘッドにより提供された場合、これは適切な補償の証明と看做し得ると述べています。POEA及びJMGは添付のCoCが国際P&Iグループの承認を受けたものではなく、また組合のカバー範囲に影響を与えるものではないことも承知しています。


組合員は今後マンニング会社と綿密に連絡をとり、AMWAが要求する保険手配の検討を進める必要があります。


国際P&Iグループは、AMWAにより船主業界に課される不必要な費用や義務を抑制し、また今後のAMWAの改定において船主業界に悪影響を及ぼす可能性を排除するべく、引き続き国際/国内船主団体と綿密な連携をとり、法律改定を働きかけていく予定です。


なお、Tripartite Working GroupによるPOEAの標準雇用契約(SEC)の見直しが間も無く終了する見込みであり、POEA SECの改定版が近々発表される予定です。国際P&Iグループは引き続きPOEA SECの見直しを監視し、進展を組合員へお知らせします。


なお、国際P&Iグループの全てのクラブが同様の回章を発行しています。