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P O E A 標 準 雇 用 契 約 条 項 改 定 の 件 (2)

2002/07/02 第02-006号
  • 外航
フィリピン海外雇用管理局 (POEA) 制定の標準雇用契約書条項の一部が2000年6月25日より改定された旨、2000年7月12日付弊組合PI特別回報第00-007号にてご案内致しました。今般、2002年6月5日付POEA発行の回報によりますと、同日付で同改定雇用契約書一部条項に関する一時的適用停止命令が解除され、全面的に実施される運びになりましたのでご案内致します。

同雇用契約書は2000年6月25日付で改定されたものの、労働組合及び一部のフィリピン人船員がその改定内容を不適正であるとし、フィリピン最高裁に対しその実行停止の申立てを行いました。その申立てを受け、2000年9月11日に最高裁は労働省長官とPOEA行政官に対し、最高裁での判断が下されるまでの間改定雇用契約書の一部の条項につき、その実施の一時的な適用停止命令を出しました。

その後も最高裁において改定雇用契約書停止を巡る訴訟は継続されましたが、2002年4月17日に最高裁は改定雇用契約書停止に関するすべての申立てを棄却し、それに対する再審議の申立ても最終的に棄却されるに至りました。これにより、先の停止命令によって保留となっていました改定雇用契約書の一部条項が有効となり、改定雇用契約書が全面的に実施されることとなりました。該当する条項は、第20章“災害補償と手当”であり、① 同章(A),(B),(D)項中の旧雇用契約書に適用されていた“雇用期間中”に代わり“職務上”の規定が適用され、また、② 一度は除外されていました(E),(G)項の船員による過去の病気や傷害についての隠匿や、不法行為または過失に基づく他国での損害賠償請求について、船主は責任を負わない旨規定した条項も復活しました。

特筆すべき事項として、上述第20章の船員の負傷、疾病、後遺障害及び死亡に対する補償を“職務上”に関するものに限定していることが挙げられます。つまり、この条項により、その原因が“職務上”でない限り、船主は船員に対する補償責任を負う義務はなくなりました。

しかしながら、最高裁判決は、申立ての内容そのものを棄却したわけではなく、申立ては下級裁判所にて審議されるべきであるとの判決を下したに過ぎないため、改定雇用契約書の妥当性を巡る問題の本質は解決されているわけではありません。また、今後、“職務上・外”の判断を巡る船員補償に関する問題が紛糾することも考えられます。