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HNS条約改正議定書採択について

2010/08/02 第10-009号
  • 外航
首題に関し、1996年6月14日付P&I特別回報第96-006号「『HNS条約』について」をご参照願います。

2010年4月にロンドンの国際海事機関(IMO)本部において行われた外交国際会議にて、HNS 条約(*)を改正する議定書(以下、改正議定書)が採択されましたので、その主たる改正内容につき、以下のとおりご案内申し上げます。

(*)HNS条約: International Convention on Liability and Compensation for Damage in Connection with the Carriage of Hazardous and Noxious Substances by Sea, 1996 =1996年の危険物質及び有害物質の海上輸送に関連する損害についての責任並びに損害賠償及び補償に関する国際条約

1. 船主責任関連事項
(1) 梱包HNS貨物の船主責任限度額の引き上げ

コンテナ輸送等で運ばれる梱包HNS貨物の取扱いについて、当該物質の受取量等の情報収集及び報告が困難であるとの認識から、HNS基金への拠出貨物の対象から外すこととする一方、梱包貨物輸送の船主の責任限度額を、ばら積み輸送の限度額に比べ15%引き上げられることとなった。即ち、船主の責任限度額は以下のとおりとなる(添付グラフご参照)。


責任限度額
ばら積み貨物の場合
責任限度額
梱包貨物の場合
(ⅰ)2,000総トン以下の船舶
1,000万SDR
1,150万SDR
(ⅱ)2,000総トンを超える船舶
(2,000総トンを超える部分につき右の方法で計算して得た額を (i) の額に加算)
2,001−50,000総トンの部分
: トンあたり1,500 SDR、
50,000総トンを超える部分
: トンあたり 360 SDR
(但し限度額の上限は1億SDR)
2,001−50,000総トンの部分
:トンあたり1,725 SDR、
50,000総トンを超える部分
: トンあたり 414 SDR
(但し限度額の上限は1.15億SDR)

2. その他の事項
(1) LNG 会計への拠出者
LNG会計に係る拠出者について、HNS条約では、荷揚げ直前に貨物に対して権原を有する者としていたが、改正議定書では、他の拠出貨物と同様に「受取人」を原則とする、但し「受取人」と荷揚げ直前の権原者の間に合意が存在する場合は、「権原者」を拠出者とすることができることとなった。

(2) 拠出貨物量の未報告問題
条約に加盟していながら、拠出貨物量を報告しない国の被害(但し、人的損害を除く)については、補償を行わない制度が設けられた。

3. 発効要件
改正議定書は次の要件が満たされた日から18ヶ月後に発効する。
(a) 200 万トン以上の船舶を所有する国4ヶ国を含む12ヶ国以上の批准、かつ
(b) (a) の国の一般会計貨物(石油、LNG、LPG以外のHNS貨物)の受取量が1暦年で合計4,000万トンを超えた場合

添付: ・グラフ「HNS/96LLMC/92CLC/92FC/92FC追加基金の補償額」
・P&I特別回報第96-006号「『HNS』条約について」(写)