ニュース

米国 EPA (環境保護庁)によるVessel General Permit(VGP)要求(2)

2008/12/26 第08-013号
  • 外航
首題に関し、2008年11月28日付P&I特別回報第08-011号「米国EPA(環境保護庁)によるVesselGeneral Permit(VGP)要求」をご参照願います。

上記特別回報において、2008年12月19日以降、米国領海3マイル以内(内水を含む)に入域する全長79フィート(24.08メートル)以上の全ての商船は、バラスト水排出に限らず、通常の船舶運航に伴う汚染物質の排出に関して、米国EPA(US Environmental Protection Agency:環境保護庁)が制定するVessel General Permit(VGP)の要件を満たすよう求められ、最終的には船舶毎にVGPの適用を受けるための通知が必要になる旨、ご案内致しました。

本回報では、本件に関する最新情報とVGP最終規則の主たる変更点を、前回報でご案内したVGP全般に関する情報を補完しながら、以下にお知らせするものです。


最新情報

2008年12月18日、Northern District of California 連邦地方裁判所は、関係者からの申立てに基づき、船舶の運航に伴う汚染物質の排出についてCWA(Clean Water Act:水質浄化法)上のプログラムから除外するという長年続いてきたEPAの規則を無効とする日を2009年2月6日まで延期するよう命令を発しました。これにより、同日まで現在の除外措置(40 CFR 122.3(a))が延長されることになります。

EPAは「VGPの施行日は12月19日のままとするが、2009年2月6日までは実際のところEPAの排出許可を求められることはなく、船主は最終的なVGP要求に従う必要はない」と案内しています。

しかしながら、EPAは公式ではないものの最終的なVGP要求を公表しており、米国へ寄港予定の船舶を運航する組合員各位におかれては、EPAの最終的なVGP要求に従うことを強くお勧め申し上げます。

EPAは、各州がCWA上の認証を行うのか、またはその権利を放棄するのか、その態度を確定するまで、当該州での排出許可を発行しません。アラスカ州及びハワイ州は、最終的なVGP要求が公表された時点では、CWA上の認証付与に関し態度を確定していないため、両州ではまだVGPの適用が受けられません。EPAはCWA上の認証付与の諾否につき両州から通知を受領次第、両州でのVGPの適用について案内する予定です。

VGP全般に関する情報

前回報でご案内のとおり、VGPの下で排出の承認を得るためには、登録トン数が300トン以上、若しくは8立方メートル(2,113ガロン)以上のバラスト水を保持・排出することのできる船舶の船主または運航者は、2009年6月19日以降、遅くとも2009年9月19日までの間に、Notice of Intent (NOI)を提出しなければなりません。

2009年9月19日までの間、前記船舶は、VGP公表と同時にVGPに則って排出することが自動的に許可されます。2009年9月19日以前に船主や運航者に引き渡された船舶については、EPAがNOIを受領した日からVGPの適用を受けることになります。2009年9月19日以降に引渡される船舶については、EPAがNOIを受け取った30日後からVGPの適用が受けられます。

登録トン数が300トン未満、若しくは8立方メートル未満のバラスト水しか保持・排出することができない船舶については、NOIを提出する必要はなく、自動的にVGPに則った排出が許可されます。

電子NOIシステムは2009年の春遅くには運用が始まる予定です。またEPAは、VGPの下での排出承認を取得した30ヶ月後から36ヶ月後の間に、船舶毎の追加情報を含めた一回限りの報告書の提出を要求しています。

VGPの要求に従わなかった場合は、法的義務違反となります。潜在的なVGP違反をEPA及びその他関係者が必要に応じて認識できるよう、VGPには報告義務が盛り込まれています。バラストタンクを備え米国水域を航行する全ての船舶は、米国沿岸警備隊(US Coast Guard)のバラスト水の管理と交換に関する基準に定められた報告義務(33 CFR 151.2041)及び記録保持義務(33 CFR 151.2045)を引き続き満たさなければなりません。VGPでは、「その他の流出及び不当な排出」の報告に関して、健康と環境を危険に晒す場合、排出に気付いてから24時間以内にEPAに報告しなければならないことなど詳細に規定しています。また、船主若しくは運航者は、VGP不適合(non-compliance with thepermit)について、VGPの下で少なくとも年に1度、EPAの関係地方事務所に報告しなければなりません。

VGP案からVGP最終規則への主な変更点

VGP最終規則では、船舶からの26種類の排出物を対象(添付別紙リストご参照)に、BestManagement Practices(BMPs)を含め、排出制限を設けたうえで、排出物の流れやその成分を管理することを目指しています。とりわけ、排出過程において規制対象となる物質の成分量を減らすことを目的とするBMPsをはじめ、各排出物に関しその成分に対応した排出制限を設けているのが特色です。

VGP最終規則は、いくつかの点でVGP案とは異なっています。主たる変更点は、i) 陸岸より1マイル以上沖合を航行することが出来ない現存の中型クルーズ船の生活雑排水に関する要求の修正、ii) クルーズ客船のプール用水/温泉(スパ)用水の排出に関する要求の追加、iii) テトラクロロエチレン洗浄剤の排出禁止、iv) トリブチル錫に関する排出禁止を全ての有機錫化合物に拡張、v) 特定のバイオサイド(殺生物剤)を排出するバラスト水処理システムを有する船舶に対する排水毒性検査要求の追加です。その他にも、3つの排出物カテゴリーを1つに統合したこと、大型フェリーに対する排出規制の修正、クルーズ客船からの排出に関する追加説明が挙げられます。

VGPは規制対象となる本船上の全ての区域の定期的な自己点検と監視も要求しています。定期的な自己点検は本船の航海日誌への記録が義務付けられ、特定の船種には分析的監視の実施が要求されます。

排出に関し他の船種とは異なる特有の性質を有する8つの船種(中型クルーズ客船、大型クルーズ客船、大型フェリー、バージ、油/石油タンカー、調査船、救助船、実験的バラスト処理システムを搭載する船舶)に対して、VGP最終規則は追加要求を課しています。

最終的なVGPを含め、VGP要求に関する情報は、EPAの以下のウェブサイトをご参照願います。

https://www.epa.gov/npdes/vessels-vgp